バレバレ
翌日――。
山之内は学校に来なかった。いや、まだ分からないが、とりあえず朝のホームルームには姿を現さなかった。
補習の一週間、言い換えれば五日間、五回は補習を受けなければならない筈だ。休んでも逃げられないので来週に持ち越されるだけである。
まぁ遅刻して午後から来るなんてのも山之内には良くある話しなので、最悪補習の時間だけでも来るかも知れない。何なら体調不良を押してでもそこだけが来るんじゃないかと言う予感がある。
さぁて、山之内も居ないし、今日はゆっくり俺のペースでラコとの距離を詰められれば良いなぁ……っと!
「撫山……くん」
ラコから来てくれる事は想定外だった……!
「おおお、おはよぉ!」
まさか俺の方が挙動不審になってしまうとは。不意打ち止めて。
「山之内の奴、寝坊かな!」
昨日の様子を見るにそうじゃなそうだが、ラコに隠したい山之内の気持ちを汲んでそう言ってやる。するとラコは悲しそうに首を振った。
「何か、連絡あったの?」
またラコが首を振る。
「あの……えと……今日、よよ良かったらおひおひおひ……」
「お昼一緒に食う?」
すまん大輔、緊急事態だ。分かってくれるよな。
それにしてもまさかラコからお昼の誘いが来るとは驚いた。でも山之内が来たらその約束に山之内も含まれるだろう。
まぁ、良いか。
その展開も覚悟していたが山之内は昼休みになっても現れなかった。
「桐生さーん、お昼こっち入る~?」
ラコの所に違うグループの女子がそう言って話し掛けて来た。
「ううん、今日は大丈夫、ありがとう」
ラコはそう言って誘いを断ると俺を振り返る。悪いな、俺が先約なのだよ。
「リンネがね……」
俺がちょっとした優越感に浸っているとラコが言う。
「リンネが、自分が休みの時は私に声掛けてあげてって、彼女たちに頼んでるみたいなの」
「ああ、それで……」
山之内が居なければ、ラコは一人で昼休みを過ごす事になる。女子は独りぼっちってのを嫌う生き物だからな。
それにしても、自分が休んだ時の事まで考えてるのかよ。俺は今日大輔がどう昼休みを過ごすのかなど知らん。一限目が始まる前に事情を説明したら大いに驚き、応援してくれたがな。
「過保護だよね」
「まぁそれもそうだし、自分が休む事を想定内にしてるのが何だかな。ちゃんと来いや」
「……」
「どこ行く? 購買寄る?」
いつになくラコは落ち着いている。落ち着いてると言うか……元気がないと言った方が正しい。
しかし、俺としては都合が良いと言えなくもない。ラコの事、色々聞けるかもだし。
俺達は購買でゲットしたパンを抱え屋上へ向かった。うちの学校は屋上解放されてるよって進路が分かれた幼馴染に言ったらすごく羨ましがられたが、常に解放されていれば別に特別感もないわけで……。
紫外線の多いこの時期に屋上で昼休みを過ごすのは、まだ屋上を有難がっている一部の一年生だけである。冷静に考えたら椅子も机もないんだから食べるのに適した場所ではない。ラコが屋上が良いって言うから来たけど、眩し過ぎるし校舎内で食べたかったな。
「やっぱり気持ち良いね、屋上」
「そうだね」
思ってないのに言っちゃった。好きな人に合わせちゃう可愛い一面を持つ俺。
「フルーツ持って来てるの。嫌いじゃなかったら一緒に食べよう? 一応リンネの分まで持って来ちゃったから」
「嫌いじゃないよ、ありがとう」
思ってないのに言っちゃった。好きな人に合わせ……以下略。
さて、せっかくのラコとの二人きりの時間だ。大事に使わなくちゃ。とりあえず何が好きなのかとかを聞き出そうかな。本来、応援の立場に居る山之内がこの辺の情報は寄越してくれてても良いんだがアイツ使えないからな。
「ラコってさ、普段……」
「昨日リンネ、どんな様子だった?」
おっと、ちょっとタイミングが合わなかったな。先に質問されてしまった。
「いや? 別に普通にしてたけど。それよりラコは……」
「私が言ってたって言わないで欲しいんだけどね、あの……」
「あ、うん? 何?」
「最近、撫山くんとリンネ仲良いから……」
ちょちょちょ……これは今すぐ誤解を解きたい。
「いや……」
「だから撫山くんには知っておいて欲しいの」
あああ、ちょっとさっきからタイミングが合わない。どうしよう、もう入れない。と言うか否定してこんなに何か伝えようとしているラコの話の腰を折りたくないし。
「うん」
「リンネ、病気なの」
「……うん?」
「夏休み使って、入院するって」
「入院……」
「……うん、検査と治療の為に、最低でも二週間はって……」
昨日聞いた話だ。何だよアイツ。全然隠せてないじゃないか。だいぶ具体的にバレてるぞ。




