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親友の恋路を応援したいギャルのアシストが下手過ぎる  作者: 焼肉一番


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知恵熱

 そして放課後、俺たちは机を向き合わせ、お互いの顔が見える様に座った。

 山之内はげんなりしている。ラコはどこか落ち着かない様子だが楽しそうに見える。俺はポーカーフェイスだが内心嬉しい。


「じゃ、じゃあ、課題見せて? 一緒にやって行こう?」


「うん~。ねぇ~ラコぉ~、最初から超難問なんだけどぉ~」


「ここで点数稼げないでどうするんだ、お前本当にバカだな」


「似た様な点数の奴に言われたくないわよ!」


「二十点台と十点台は大きく違う」


「まっ、まぁまぁ、一緒に頑張ろう?」


 ラコがしょうもない俺達を宥める。 

 そうだ、こんな事でいちいち小競り合いをしている場合ではないな。それこそ、昨日山之内が言った様にこの時間を大事にしようと思う。この状況は一週間だけと分かっているんだし。


「ラコは数学が得意なのか?」


 ただ教えてもらうだけじゃ勿体ないのでラコに関する知識も吸収する。


「は? 誰に言ってんの?」


「お前に聞くわけないだろう」


「そう言う意味じゃない! ラコはね、全科目! 学年一位! なーの!」


「えっ!」


 何故か山之内が偉そうにふんぞり返るが……それにしても驚いた。

 一応成績上位三十名までが廊下に貼り出されるのは知っていたが、人の成績なんてとんと興味がなかったので見た事もなかったのだ。

 それにしてもマズいぞ? 俺はイケメンだからバカでも良いだろうと思ってたのに、ラコが学年一位ではその理屈が通用しなくなってしまうではないか。


「俺、勉強頑張るわ」


「当然でしょ、ラコが教えてくれるんだから」


 ラコに教えられても再追試不合格だった奴が何か言ってる。でも可哀相過ぎるから突っ込まないでやろう。

 俺はちゃんと集中する事にした。

 ラコの声は心地良く、教え方も分かりやすい。理解が深いのだろう。

 いつもこんな風に、しかもマンツーマンで教えてもらってどうして山之内は再追試で十点台が取れるんだろう。

 不思議に思って山之内の様子を見ると、うんうんと熱心に聞いている様な声で頷きながらうっとりとラコの横顔を見ている。ラコの方はノートを見ているのでそれに気付いていない。なるほど、これじゃ成績が上がる筈もない。


「出来た。ラコ、一人で解いてみたんだけど合ってるかな」


 俺が割り込むと山之内はあからさまに不機嫌そうな顔をしてこちらを睨んだ。お前俺とラコをくっ付けたいんじゃないのかよ? その前に今勉強教えてもらってるんじゃないのかよ?


「うん! そうそう! そう言う事! 凄いね、こっちで使った公式で解いたのね」


 ラコが嬉しそうに俺を褒めてくれた。ふふん、俺も嬉しい。どうだ山之内、ちゃんと集中して勉強すればラコ先生の授業はとても為になるぞ。

 分かりやすく見下した顔をしてやると、山之内も分かりやすく悔しそうな顔をした。気持ちイイ~。


「でもね、この問題ならもっと便利な公式があるからそれを覚えちゃったら良いよ」


「そうなのか! 教えてくれ!」


「もちろん! えっとね、こっちの参考書の方が分かりやすいんだけど……」


 ラコがわざわざ自前の参考書で俺に教えてくれる。


「あっ……あたしも……!」


 慌てた様子で山之内もそこに参加したが、最初から躓ている分際で分かる筈もない。案の定、その眉はどんどん下がって行った。


「リンネはこっちの課題からやってみた方が良いかな、はい、ここの三問目をやってみて」


 出来の違う教え子に対し、ラコは面倒がる事もなくそれぞれに丁寧に対応してくれた。授業よりもよっぼど為になる時間だ。

 気付けば出された課題も終わり、時間もとっくに一時間以上経ってたが俺達はまだ勉強を続けていた。山之内がどれだけ集中出来ていたかは知らないが、うっとりラコに見とれている様な瞬間はなくなった。俺と言うライバルの登場で少しは本気で勉強しようと言う気持ちになったのかも知れない。分かりやすい奴だ。


「凄いよ二人とも! どうして補習なんか受けてるのってくらい一気に問題解ける様になったんじゃない?」


「ラコのお陰だよ」


 お世辞でもなんでもなく俺はそう言った。まぁ、勉強なんて本人のやる気次第なわけで、やる気を出させてくれた事に感謝だ。教師には絶対に出来ない。


「ちょっと……頑張り過ぎちゃった……」


 途中から俺以上のやる気を見せていた山之内が持っていたシャーペンを力なく放し、コロリと机の上を転がった。


「大丈夫?」


 ラコが少し深刻な顔をして山之内の肩に手を置いた。


「急に張り切り過ぎて知恵熱でも出たんじゃないかぁ?」 


 少し顔が紅潮している。


「う……うん、ははっ、そうかも」


 バカにするなと怒り出すかと思ったのに、山之内は肯定して弱々しく笑った。調子狂うな。


「ごめん、急に詰め込み過ぎたね、帰ろう」


「そうだね~」


 ラコに対して山之内が過剰に気を遣う場面は多々見ているが、今はラコの方がずいぶんと山之内の体調を気にしている様だ。ただの知恵熱だろうに。何だろう、ラコのこの緊迫した空気は。

 手早く机の上を片付け、山之内の分までしまってやり、山之内を先に歩かせる。

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