ギャルなだけ
そして週明け月曜日、再追試の答案用紙が返って来た。なんと二十三点だった。あと七点くらいだったらちょっと頑張れば良かったなと思ったけど、まぁ覚悟していた事だ。
「見せろ」
後ろの席の山之内から答案用紙を素早く掠め取る。今までだったら絶対にこんな事していないだろうけど何だかコイツに遠慮は無用な気がしてたのでやってやった。
「あっ……! バカ! 返せっ!」
またすぐに取り返されたがバッチリ見えた。山之内の点数は十二点。フッ、勝った。
ま、どっちも補習圏内の点数なんだがな。
ふとラコの視線に気付く。山之内がちょっと大きめの声を出したのでこちらを振り向いたのだ。再追試の答案用紙を持って暗い顔をしていたら事情は分かっただろう。俺はポーカーフェイスなので悟られていないだろうけど、どうせすぐバレるか。
「点数が足りなかった二名は今日から一週間の補習、場所はB組を使わせてもらう事になってるからちゃんと参加する事。えーじゃ次~、金曜日に委員会の……」
はぁ、補習はB組か。ふぅん。
……ん? 今二名って言った? 再追試でもダメだった奴……、俺と山之内だけだった……って事?
「はぁぁ~……」
ポーカーフェイスの俺でもさすがに溜息が出た。
朝のホームルームが終わると、珍しくラコの方から俺の方へ近付いて来る。俺の後ろの席の山之内を目指しているのだろうが。
「ううっ……ごめっ……ごめんラコ……」
まるで怯える様な山之内の声が聞こえる。
「やっぱり、補習なんだね。先週の用事って再追試だったんだ」
「うっうっうっ……だって……ラコに教えてもらってたから、言えなかったんだもん……」
「んもー、仕方ないよ」
そうそう仕方ないよ。人には向き不向きってもんがある。俺はイケメンだけど勉強は出来ない。両方完璧だったらおかしいだろう? 山之内もまぁ、顔が悪いとは言わないのでその分だと思えば良いじゃないか。
「あのっ……ももももしかしてだけど、ななな撫山くんも補習、だったり、する?」
ラコから話し掛けられた!!
「うん! そう!」
嬉しくて元気良く答えてしまった。胸を張って言う事じゃなかったな。
「じゃぁ、二人だけでB組に……」
「ごめん! ごめんラコぉ……! なんであたしこんなにウツケでタワケでタワワなんだろうぅぅ~」
そう言う変な言葉を使ってるからだろうな。その分脳のキャパ取られてんだよ。あとタワワなのは良いだろ。たぶん。
「だっ、大丈夫だよ、私……付き合うから!」
俺はパチクリと山之内を視線を合わせた。
「付き合うって、補習にか?」
「う、うん! 補習って課題をやるだけの時間だって聞いたよ。別に先生が居るわけじゃないし、課題さえ埋めちゃえばさっさと帰る事も出来るって。持ち帰ってもやらないから強制的に学校でやらせる時間を作ってるってわけ。だから私が教えながら課題進めたら二人の為にもなるんじゃないかなって……」
「うわはぁぁぁん……! ラコぉぉぉ~~!」
山之内は椅子に座ったままラコの腰回りにしがみ付いた。
山之内は余分だけどラコに勉強をみてもらえるとは……。ああ! 俺バカで良かったじゃん!
「ありがとうラコ! 俺は頑張る!」
「俺はって何よ! あたしだって超頑張るし! ジャンバルジャンだし!」
「桐生先生~、山之内さんがふざけてます~」
「ギャルなだけ!」
補習を喰らったのに逆にテンションの高くなった俺たちを見て、ラコはフッと口元に手を添えて笑った。素敵だ。補習期間中にもっともっとこんな自然な笑顔を見られたら良いな。




