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花と華  作者: 露(つゆ)
4/5

第4話 ~サッカーと仲間~

「(早く着いてもしょうがないのになぁ)」

 華枝は駄菓子屋のベンチで花を待っていた。例の如く楽しみで早く来てしまった。

 華枝は今日は動きやすい服で来ていた。もちろんズボンだ。なんせサッカーをするのだから。

「華枝~」

「あ、花ちゃん」

 花の声がしてそちらを向くと……。

「……花ちゃん、今日サッカーするんだよね?」

「せやで」

 花の服装は肩を出した白いフリルの付いたワンショルダー。しかも……。

「スカート……」

「ああ、これな」

 と言うと花はスカートをめくりあげる。

「は、花ちゃん何してるの!?」

 花の突然の奇行に華枝は驚く。が、スカートの中は……。

「あれ……? ズボン……?」

「スカートに見えるズボンや。スカパンってやつやな」

「へぇ~」

 そういえばそんな物があるのを聞いた事がある。

「じゃあ行こか」

 花はいつもの様に華枝と手を繋ぐ。

「う、うん」

 華枝も、いつもの様にドキドキした。


 学校までの道中、華枝は花に聞く。

「流石に靴はスニーカーなんだね」

 花は白いスニーカーを履いていた。

「スニーカーも合わせ様によっては可愛ぇから花様的には合格」

「花ちゃんは可愛い服が好きなの?」

 華枝は単純な疑問を口にした。

「可愛ぇ服も好きやし、可愛ぇもんやったらなんでも好きや。可愛ぇ自分も」

「そうなんだ」

「でも、あいつらとアホやるのもはしゃぐのも遊び回るんも好き。どっちも好きなんや。やから可愛ぇ格好で遊び回る」

 それを聞いて華枝は微笑む。

「花ちゃんは自分を持ってるんだね」

 華枝は羨ましかった。花がキラキラ輝いて見えて。

「華枝もそうやろ?」

「え?」

 華枝は花の言葉に心当たりがなかった。

「前にも言うたやん。真面目で、素直で、頑張り屋さんのええ子。そんで……」

 花は満面の笑みで言う。

「とびきり可愛ぇ子!」

 花の言葉に華枝は心臓が跳ねた。

 花は可愛いものが好きなら……そう言ってくれる自分の事も……なんて、期待してしまった。

 この胸の高鳴りは……気のせいになんてしておけなかった。


 そんなこんなで校庭に着き、昨日のメンバーが集まっていた。

「ボール取ってきといたからな~」

「サンキュー」

 サッカーボールを持っている男子に花は礼を言う。

「サッカーって十一人×二でやるんやけどそんなに集まらんから一チーム三人でやるで。ゴールキーパーと、後の二人」

「う、うん」

 華枝は緊張してきた。責任重大だ。

 そんな華枝の背中を花はぽんぽんと叩く。

「そんな気ぃ張らんでもええて。楽しく遊べればええんやから」

「そう……?」

「遊びが楽しくなくてどうするんや」

 花がそう言うのだから、そうで良いのだろう。華枝は心が軽くなった。

「ええ顔なったで」

 花はにこにこした。

「花ちゃんのおかげ」

「俺は何もやってへんて」

 おどける花に華枝は笑った。


 そうしてサッカーが始まる。

 華枝はボールに触れず走り回って終わるだろうと思っていたが、同じチームの花が適度にボールを渡してくれた。

 ボールを蹴るのは難しかったが、楽しかった。

「(みんなと遊ぶのって楽しいんだ)」

 華枝はここに来てから、花と出会ってから少しずつ変わった。嬉しい事、楽しい事、ドキドキする事……全部花に教えてもらった。

「華枝! ゴール決めぇ!」

 花からパスが回ってくる。ゴールを決めるのは、緊張したが、花の言葉を思い出す。

「(楽しく、遊ぶ!)」

 華枝は渾身のシュートを出した。ボールは変な方向に行ったが、そのおかげでゴールキーパーの隙をつけて……ゴールポストに入った。

「やっ……」

 た、とガッツポーズをしようとする前に花が飛んできて華枝に抱きつく。

「華枝~! やるやん~!」

 華枝は興奮と花に対してのドキドキが混ざり合って、なんだか変な気分だった。


 その後、華枝が疲れはてるまでサッカーは続いた。

 皆が華枝の下に集まる。

「なんやお前、やるやん」

「あんたと遊ぶんも楽しかったで」

 男子達が口々に華枝を褒める。照れくさかったが、嬉しかった。

「お前、俺らの仲間にしたる!」

 男子の一人がそう宣言する。

「仲間……?」

 華枝はきょとんとした。

「一緒に遊んだり、冒険したりする仲間や!」

「ええなあ!」

 男子達はわいわいと盛り上がる。

 仲間……仲間……。いじめられて、ひとりぼっちだった自分に……。

「か、華枝!? どないしたん!?」

 花が驚いたのは、華枝の目から涙が零れていたからだろう。

「いらんかった!?」

 華枝は首を振って泣きながら笑った。

「とっても嬉しい」

 華枝の大切なものが、また増えたのだった。


 華枝が落ち着くまでみんなは待っててくれた。そして、明日の遊ぶ予定を早速立て始めた。

「明日どこで遊ぼか?」

「明日雨やで」

「マジか」

「じゃあ家でゲーム?」

「モン狩りやる?」

「華枝はモン狩り持っとんの?」

 皆の視線が華枝に集まる。華枝はどぎまぎしながら答えた。

「も、持ってるよ……」

 「おお~」という歓声の中に「女がモン狩り……」という声が聞こえたが、駄菓子屋で出会った男の子が「男でも女でも何やってようがええやろ」と言った。華枝がその子の事を見ると、気恥ずかしそうに顔を反らされた。華枝は嬉しくて、くすりと笑った。

「それやったらモン狩りで決定やな。誰の家でやる?」

「あっ、あのっ!」

 華枝は勇気を出して声をあげる。

「どしたん?」

「うっ、うちでやらない……?」

 花からもらった勇気。いろんなもの。華枝はそれに応えたかった。祖父母に、自分にこんなに友達ができたと紹介したかった。

 男子達は目を見合わせてから言う。

「ええで!」

「華枝ん家どんなんやろ」

「変な事したらあかんで」

 花が男子達を睨む。

「はいはい、花の華枝には手ぇ出さんて」

 華枝はそう述べられて顔を赤くする。

「華枝ん家ってどこや?」

「俺が知っとるから案内したるわ」

 男子達に花は告げる。

「えー! もう家まで行った仲なん!?」

「玄関までや!」

 からかう男子達に花の顔が赤かったのは気のせいだろうか。


 家に帰って華枝は真っ先に祖母の所へ行った。

「ねえ! 明日友達お家に連れてきて良い?」

「花ちゃん?」

 祖母は夕飯作りの手を止め、華枝を見る。

「花ちゃんと、あと四人!」

 祖母は目を丸くした。そして笑う。

「みんなお友達?」

「うん! みんな友達だよ!」

 祖母は優しい笑みで言う。

「ええよ。お菓子とジュース用意しとくわな」

「ありがとう!」


「それでね! 私、シュート決めたの! 凄いでしょ!」

 夕飯時、華枝は祖父母に楽しそうに今日の出来事を話す。

「凄いなぁ。今度じーちゃんともやるか?」

「おじいちゃんもできるの?」

「もちろんや」

「やる!」

 華枝は元気に応えた。

「華枝、最近明るなったなぁ」

 祖母はご飯をよそいながら言う。

「花ちゃんと……みんなのおかげ」

 華枝は頬を染めながら喋る。

「ここに引っ越すか? お友達おるんやったら学校もここ通ってええよ」

 祖母の提案に華枝は箸を止める。

「どうや?」

「……考えとく」

「ゆっくりでええからね」

「うん……」


 風呂の後、華枝は自分の部屋で仰向けになる。

「学校……花ちゃんと……みんなと……」

 そう言って目をつむった。

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