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09 パーティー結束しました、尚蚊帳の外です


 世界を救う旅の準備が整ったらしい。

 ゲームではこの後、レグルス王子、アルヘナ君、イクリール君と主人公ちゃんの四人で旅を続け、そこに時折他の人が同行してくれる感じだったんだけど、どうなるんだろう。

 少なくとも私は幼女に長旅は無理だと思っている。

 子供ちゃんってすぐ体調崩すし。社員からパートになった同僚の姉さんもいつも大変そうだった。休む度にごめんねって謝られるのもちょっと心苦しかったんだよね。


 だからまぁ。休み休みになるわけだが、そうするにしても休むための拠点の用意が大変だと思うんだよね。

 だって王子様が二人も中、長期滞在するのよ? 警備とかどうするの。何かあった時に責任を取る人の負担が大きすぎるじゃない。

 ……こういうことを考え出す辺り、ファンタジーを楽しめない大人になって来たんだなぁと実感する。このゲームやってた時は微塵も考えなかったのにね。


 とにかくだ。神殿、改め星の神子が活性化させなきゃいけない魔法石は全部で十三。

 ゲーム内ではお使いイベントや戦闘みたいなのもあったが、基本は世界を周って神殿で魔法石に触れるだけでいい。幼女優先で行くなら危険を避けて、寄り道も可能な限り省くだろう。


 私に簡単な方針を伝えた後、レグルス王子がせいらちゃんの前に屈み込んで視線を合わせる。

 まだちょっとご機嫌斜めだが一応顔を出したので、話は聞いてくれるらしい。


「神子様。これから旅をするのですが、一緒に来てもらえますか?」


 じっとレグルス王子の顔を見つめ、数拍置いてせいらちゃんが口を開いた。


「いいよ」

「ありがとうございます」


 ちょっと忖度したなこの子。

 でもまぁ幼女とイケメンの絡みはいいな。心が洗われる思いだ。世の中こういう綺麗な物と可愛いものだけで構成されていればいいのに。……いや、そうなったら真っ先に私が消えてなくなりそうな気がするのでやめておこう。


「一先ず、国内にある二カ所の神殿を周ります」

「あれ、この国にある神殿は三カ所だって……」

「ええ。もう一カ所の神殿は少し離れているので、神子様の体調を鑑みて一度城に戻ってもらいます」


 なるほど?

 ちゃんとシュルマさんの授業聞いていてよかった。遥か彼方のゲーム知識だけだと不安だったんだよね。


 この国にある神殿は四つ、うち一つはお城の裏にあって既に活性化済み。だから恐らく今回行くのは城から比較的近い位置にある交易の街と郊外の町にある神殿だろう。と、なると最後に残したのは鉱山の街にある神殿か。

 うん、国内にある神殿を回るのもゲーム通りではある。でも問題が一つ。

 私、国内の神殿を回り切るまでのところまでしか、ゲームやってない。


 いやもう本当になんで私だったんだろうね。

 丁度国内編が終わった辺りでほぼ全敗だったが何とか今の会社に就職して、ひいひい言いながら働いて、スマホが壊れてこのゲームとはそれっきりだった。

 故、国内回り切るまでは何とかついて行けるかもしれないが、それ以降の残り九個の神殿については何にもわからない。


 この世界に来るのはずっとこのゲームやってて、シナリオ追い続けている子の方が絶対よかったと思うのよ。

 その後新しくキャラが追加されたり、色々あって盛り上がっていたはずなんだが、その頃には全くこの「星の箱舟-スター・レガシー-」というゲームの話題について行けなくなっていた。

 そんな私がここで何ができる? 幼女とイケメンを眺めるぐらいしか出来ないわけですよ。


「言っておきますが、城に帰ったら貴方も健康診断を受けるんですよ」

「え、あ。はい、わかりました」


 シュルマさんに指摘されて頷いておく。

 私からせいらちゃんに病気移したら元も子もないので、その辺りに異論はない。


「先日も話していた通り、ナナさんには神子様の精神的なケアをお願いします」

「お願いされました」


 ケアって言っても専門じゃないのでそこまで込み入ったことは出来ないけど、可能な限り努めよう。大人として、幼女に少しの安心を与えてあげられるならそれでいいじゃないか。

 ここ数日一緒に過ごしたが、両親を恋しがらないのが少し心配なぐらいだ。不安などないと安心しきってくれているのならいいのだが、ふとした拍子にホームシックになるかもしれない。

 注意深く、それでいてもう少し色々とわかってくるようになるまでは、でろでろに甘やかしてもいいんじゃないだろうか。


「あの、その旅って僕も行っていいですか」

「イクリール? それは、構わないけど。珍しいね」

「うん、ちょっと。ねぇ、星の神子様」


 私が思考をどこかに飛ばしている横でイクリール君がせいらちゃんに声をかけた。

 十歳かそこらだっけ。頭一つ分せいらちゃんよりも高い身長で、ちょっと悪戯っぽく笑って手を差し伸べている。


「ううん、セイラ。僕も一緒に行っていいかな?」

「……うん」


 レグルス王子に対して同様、未だ顔をぐりぐりと私の腰に押し付けながらの返事だが、一応手を取っているので忖度込みでも嫌ではない様だ。

 幼女の意志とは関係のないところで雑に旅のパーティが結成してしまったわけですが。何とも強引な子たちだなぁ。せいらちゃんとレグルス王子がいいのなら私は何も問題ないんだけど。

 ただシュルマさんが呆れてる。主人公ちゃんが幼女になってもこの人はお仕事に負われる定めなのね。


「お二人の旅の準備はこちらでやっておくので、くれぐれも。体調管理をお願いしますね」


 なんとなく申し訳ないくて私くらいはシュルマさんの言うこと素直に聞いて大人しくしていよう。

 子供なんて簡単に熱出すので、出来るだけ厚着させたり細目に汗拭いたりぐらいはしておきます。

 それにしても。幼女の体調、精神面を配慮しつつ世界を周るのか。これはゲームの旅よりも長くなりそうだなぁ。


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