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54 物語なんて外野で野次るくらいが丁度いい

 ずらりと見知った顔ぶれが並ぶ一室に自分が場違いなんじゃないかとそわそわする。

 次の神殿がある場所について説明があるので来てくれと言われたのだが、改めて周りを見れば王子様とその従者、他国の少年の王子、文官に騎士団長と、お国の中心にいる人たちばかり。

 おまけに私の手を握ったまま隣で機嫌よく待機しているのは世界を救う役目を担ったお嬢さんだ。二十六歳一般事務の私には肩身が狭い空間だな。


 難しい話はよくわからないのでほぼ空気に徹しながら、目の前で議論される砂漠の歩き方に耳を傾ける。

 次に向かう国、ノーモンは国土のほとんどが砂漠の国だ。首都の傍を流れる大河を中心に栄えた国で、どうやっても砂漠の横断は避けられない。

 そのために移動手段を途中で馬からラクダに替えなければならないらしい。こっちにもラクダっているんだな。


「ノーモンの神殿は砂漠の遺跡にあるのだが、神殿へ入るには砂漠の横断が必要になってきます」

「遺跡の詳しい位置についてはラスペルバ殿に伺うとして、問題は魔物と慣れない環境にセイラが耐えられるか否かですね」


 レグルス王子の言葉に一同の視線がせいらちゃんに向いた。

 まぁそうなる。他の同行メンバーは未確定としてもせいらちゃんだけは絶対に行かなくてはならない。果たして五歳の女の子は砂漠の環境に耐えられるのか。魔物に対してどういう反応を示すのか。


「セイラとナナさんの世界の気候は安定しているんでしたよね?」

「はい。季節によって暑い時期寒い時期はあるけど、雨季と乾季があるほど気候の変化はないです」


 雨季というか梅雨はあるけど、そこまでずっと雨が降っているわけではないし。せいらちゃんがどのあたりに住んでいたのかはわからないが、北陸とか南の端とかじゃなければ大体どこも夏は暑いし冬は寒いでしょう。

 後、基本的に島国だし砂漠の乾燥には慣れてないと思う。そういう意味ではこまめに水分や塩分補給させて日よけに徹する? あ、砂漠だし照り返しもあるのか。


「魔物は護衛を増やすとして、子供の体力でどこまで持つかだな」

「また僕だけ置いてきぼりとかは無しですよ」


 ふむと頷いたブラキウムさんの横でイクリール君が主張する。ディアデムの件が尾を引いてるなぁ。

 イクリール君曰く、ノーモンは故郷が懇意にしていた国らしい。織物が名産で、他国のものよりも品質が良いと有名だったそうだ。世話になっている国だからこそ自分も何かをしたいのだと。

 子供に砂漠のような環境は、とも思うが、それを言い出したら必須メンバーのせいらちゃんについて言及せざるを得ないので何とも言えない。


「せいらげんきだよ?」

「うんうん。また旅に出るから、それまでお熱出ない様に手洗いうがい毎日しようね」

「はーい」


 砂漠に行くための注意点を話しているブラキウムさんやシュルマさんの会話を横目にせいらちゃんと小声で話す。

 そろそろ飽きてきたのか、繋いだままの私の手ぷらぷらと振って遊んでいる。ただ機嫌はいいようなのでもうしばらくはこのまま大人しくしてくれているだろう。

 魔物かぁ。どんなのがいるんだろう。砂地の生き物とか? ヘビとか蠍のイメージしかない。毒を持ってる魔物もいるんだろうか。その辺りはブラキウムさんたちが考えてくれるか。


 こうしていると、本当に私って蚊帳の外だなぁ。

 せいらちゃんが懐いているからここにいるだけで、この子が他の人に心を開けば必要なくなる存在。エルナトが前世でせいらちゃんと縁があったので、この世界に一緒に来たのだと言っていたけど、それだって前世の話で、今世は何もわからないわけですし。

 うん。絶妙な疎外感。まぁいいんだけどね。何にも出来ないし、せめて邪魔にならない様にしていよう。


 相変わらず目の前ではお国の中心に位置する人々があれやこれやと今後の方針について話している。砂漠の渡り方や、そこに住む魔物について。それからノーモンの環境や向こうでの注意点なんかを話している。

 二度手間にならないようにしっかり聞いておく。無意識に力が入っていたのか、せいらちゃんにぺちぺちと腕を叩かれた。ごめんね、痛かったね。


 さて。私はどうするべきなんだろうね。このまませいらちゃんの保護者を名乗り続けるべきなのか。それとも、他の誰かに代わってもらうのか。

 私自身、この子の保護者であり続けられるとも思えないし。早いうちにレグルス王子たちに慣れて貰って、私の手を離れて貰うのがいいのだろうか。でもそうなるとこの子の生活のフォローをすると言った約束を違えることになりそうだし……。


 小さくため息を吐くと、聞こえてしまったのか不思議そうな顔をしたせいらちゃんが私を見上げた。なんでもないと言う風に笑いかければぱっと笑って、私に抱きついてくる。

 心が二つあるんだよなぁ。

 この子を守るために何かしたい気持ちと、身の程を知れと言いたくなるような無力さと。まぁ、なんにせよだ。もうちょっと、身の振り方も考えなきゃだなぁ。



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