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36 今思えば初期装備が消耗品ってどうなのよ


 さして大きくもない問題に直面している。

 いや、最初は死活問題かなと思いもしたんだがよく考えたら別に問題がなかった。


 この世界は私が短大に通っていたころに少しだけ触っていたスマホゲーム「星の箱舟-スター・レガシー-」の世界だ。

 カードを集める系のコレクターゲームで、本編シナリオの他にイベントなんかもやっていた。他にもスマホゲームならでは要素や、他のゲームと差を付けるための迷走した機能なんかもあった気がする。

 気がする、というのはアレだ。正直もうほとんど覚えていないということだ。


 だって、もう七年前の話だ。

 このタイトルをやっていた。こういうキャラがいてこういう感じの話の流れだった、程度は覚えているが、事細かに何がどうなるとかはもう記憶の彼方だ。


 つまり何が言いたいかっていうと。次の神殿の話までしかゲームをプレイしていないのでこの先に何が起こるのかわからないと言う問題に直面したが、そもそもゲームの内容自体をあまり覚えてなかったから今までと何も変わらないというオチである。

 おぼろげな記憶すら上手く扱えていないし、もうなんとなく記憶にあるゲームと似てるだけの世界と割り切った方がいいまである。

 何なら主人公ちゃんの年齢すら変わってるし。


 本当になんで私だったんだろうなぁ。もっとこのゲームの好きな人で今もプレイしている人とかいたじゃん。そういう人の方が適任だったって。

 後私はもうほとんど見る気力がなかったのでふんわりとしか知らないけど、最近は不思議な世界に呼ばれたら不思議な力がもらえるのがセオリーらしいじゃん? 私何も貰ってないし、何なら初期装備は自分で買ったピザとビールだけだったよ? あれでどうしろと?


 と、まぁ。何にもならない慟哭は置いておいて。とうとう、この国最後の神殿に行く準備をしている。

 準備と、言っても私がするようなことは特になく。シュルマから神殿のある町に付いて説明を受けたり、せいらちゃんの体調の変化がないか様子を見たりする程度。

 シュルマさん曰く、次に向かうのは鉱山の町、ディアデムらしい。商人や職人が集う街を周って来たのだから順当と言えば順当だが、鉱山系の街って普通ゲームとかじゃもっと中盤に出てこない? いや、ゲームのシナリオでは三章の話だった気もするし充分中盤なのか?


「こーざんってなに?」

「鉄とか、剣の元になるものが取れる場所」

「けんはしってる!」

「この前いっぱい見たもんねー」

「ねー」


 今日もせいらちゃんはご機嫌である。

 帰って来てから熱を出したものの、せいらちゃんはあの旅に不満はなかったようだ。まぁ、嫌な思いをしなかったならいいか。

 引き続きシュルマが、神殿のある街について説明してくれる。鉱山の麓にある街で鉄鉱石や魔法石もいくらか取れるが、町での加工はしていないらしい。


「坑夫ばかりの街ですよ」

「よくご存じなんですね」

「ええまぁ。故郷、ですね」


 シュルマさんが、呆れたように言った。

 え、あ。出身地なんだ。シュルマさんってすらっとしていてそういうイメージないな。坑夫ってなんて言うかブラキウムさんみたいに分厚い感じの人が多いイメージ。


「こきょうって?」

「生まれたところですよ」


 じっとせいらちゃんを見つめながらシュルマさんが返事をする。シュルマさんが何を考えているのかなんとなくわかる気がするけど、せいらちゃんは「ふーん」と答えただけだった。

 本当に帰りたがらないんだよなぁ。お母さんが亡くなってるのは聞いたけど、お父さんの話は全く出てこないし。弟君のことは大切なようだが、あれっきり話を聞かない。我慢は、してるんだろうな。


「じゃあせんせー、おうちかえれるね」

「あまり気乗りしませんがね」

「きー?」

「居心地が悪いんですよね」


 ため息を一つ溢しながら、せいらちゃん手のひらにチョコを握らせる。これ以上聞くなということだろうか、チョコに目を輝かせたせいらちゃんはシュルマさんの思惑通りにすっかり気を逸らされている。

 せいらちゃんと同じように私もチョコを渡してくるのは、口封じなのか。それとも幼女と同じ扱いをされているだけか。

 別に言い触らしたりはしない。大人だし色々あるんだろうし、聞かれたくないのならそれ以上を聞くつもりもない。考えれば考えるほど無駄だしね。


「前回より長い旅になるのでしっかり休んでおいてくださいね」


 そう言って、シュルマさんはせいらちゃんの頭を撫でる。うん、この人結構子供好きなんだよね。毎回飴だのチョコだのをせいらちゃんにあげているし。

 お陰で幼女はにっこにこだし、甘いものがもらえるとわかっているから長めの説明も大人しく話を聞くし、ご褒美を用意するのって本当に効果があるんだな。


「ああ、今回は私も一緒に行くので」


 そういったシュルマさんに少しチョコで口を一杯にしながら顔を上げる。

 おお、おめめきらっきらだな。必死に口の中の物を呑み込んでいるのを眺めながら、なんとなく何を考えているのかを理解する。


「せんせーもいっしょ!?」


 さては君、シュルマさんのことも大好きだな。




お口の中の物は、ちゃんと飲み込んでから話せる幼女。

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