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31 夢の話

Side星の神子


 夢の中でだけ会えるおともだちがいる。

 そのおともだちはいつもまっくろな場所にいて、まっくろな姿をしている。前に一人で寂しくないのって聞いたら「一人じゃない」って言われた。おにいちゃんも夢の外におともだちがいるらしい。


 めれふくんは会う度に膝に乗せてくれて話を聞いてくれる。何度も夢で会って、たくさん話をした。

 病院にいるママのこと、おじいちゃんとおばあちゃんの家にいること、お休みの日にパパと一緒にママに会いに行くこと。おとうとのようくんのお世話をしたり、ようちえんのおともだちの話もした。


 たくさん遊んで、いい子にしている。いい子にしていればママの病気は治るって、皆言ってた。だからせいらはいい子にしていた。

 ママに会えないのも、お休みの日にしかパパが帰って来ないのも我慢した。

 おじいちゃんとおばあちゃんと、ようくんがいる。寂しくないよって言ったらママはいつもせいらをぎゅってしてくれる。お姉ちゃんだし我慢しなくちゃいけないのに、まだちっちゃいようくんに譲ってあげなきゃいけないのに。


 もっともっとぎゅってしてほしかった。

 でも、ママはいなくなった。パパがもうママには会えないんだって言ってた。おいしゃさんが、ママをたすけてくれなかった。せいらがいい子じゃなかったから。


 「おそうしき」でみんな泣いてた。

 ママに会えないのは寂しいけど、いい子でいてねって、困っている人がいたら助けてあげようねって、ママが言ってた。せいらも泣きたかったけどお姉ちゃんだから我慢した。


 そう言ったらめれふくんが「会えないのは寂しいな」って。

 ママとも、パパとも違う手でなでてくれるのがうれしくて、ちょっとだけ泣いちゃった。

 夢の中だしいいよね? 起きたら泣かないもん。


 やさしいめれふくんは、いつもまっくろな夢の中にいる。地面もお空もない場所で座っている。

 めれふくんの夢を見るのは久しぶりだ。ななちゃんに会ってからは夢を見なかった。


「めれふくんだ」

「ああ、久しぶりだな」


 近付けば大きなおててで抱き上げてお膝に乗せてくれる。

 ななちゃんとは違うけど、めれふくんも大きくて大好きだ。いつもなでなでしてくれるしだっこもしてくれる。


 めれふくんとたくさん話したい。

 ななちゃんと仲良くなったこと、れぐるすくんに会ったこと。世界をたすけるおてつだいをしていること。

 パパとようくんに会えないのは寂しいけど、ママが助けてあげてねって言っていた。れぐるすくんたちが困ってるから、ななちゃんと一緒におてつだいするの。


「時に、お前に付いているその加護は何だ?」

「かご?」

「わからないのならいい、気にするな。それより、ナナというのは?」

「ななちゃんはね、せいらと一緒にいてくれるおねえちゃんなの」


 ななちゃんは大好き。

 せいらがさみしいなって思ってたらなでなでしてくれるし、ぎゅってしてくれる。何も言わなくてもいっぱい優しくしてくれるし、いっしょにいてくれるって言ってた。


 れぐるすくんも優しいよ。

 いっぱい教えてくれるし、色んなところに連れて行ってくれる。かっこよくて、ちょっと恥ずかしいけど、大好きだよ。


「でもね。れぐるすくん、せいらの名前呼んでくれないの」


 なんでかな。


「何故?」

「わかんない。いつもほしのみこさまっていうの」

「嫌か?」

「さみしい」

「そうか」


 れぐるすくん、せいらの名前忘れちゃったかな。

 名前で呼んでほしいな。


「その人間は、お前の言葉を無視する人間なのか?」

「ちがう」

「なら言葉にしてみると良い」


 いいのかな。わがままじゃない? 嫌いになったり、いなくなっちゃったりしない?

 ママみたいに、会えなくならない?


「そら、時間が来たぞ」


 めれふくんがお膝から下ろしてくれる。

 まっくらだった場所が、遠くの方でピカピカし出した。あのピカピカが始まったら夢が覚める時間だ。


「またあえる?」

「お前が望むなら」


 めれふくんにバイバイする。

 ピカピカが眩しくなって目を閉じた。あったかくて、なでなでしてもらってる感じがする。

 目を開けると、ななちゃんはいなくて、でもそのかわりに悲しい顔をしたれぐるすくんがいて。


「目が覚めましたか?」


 おへやだ。

 ベッドでちゃんとお布団を着ていて。でもななちゃんがいない。


「ナナさんは今昼食に行っていて、すぐに戻ってきますよ」


 じっとれぐるすくんを見る。

 言えるかな。言ったら、名前で呼んでくれるかな。


「あの、神子様?」

「やだ」


 困った顔をしている。

 わがままを言ってごめんなさい。いい子にします。だからお願い。


「みこ、ちがう」


 ぽろぽろと涙がこぼれる。れぐるすくんの顔がぼやけて、もっと見えなくなる。泣いちゃダメだ。困らせちゃだめだ。いい子でいなくちゃいけないのに。

 嫌いにならないで。傍にいて。いなくならないで。さみしい。こわい。全部、全部言えない。言葉にしたら困らせちゃう。いい子にしていなくちゃいけない。ママと約束したのに。


「せいらだもん」


 せめて名前を呼んでほしい。


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