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72話 極悪非道!青龍会桃華組

第72話 極悪非道!青龍会桃華組


 夜更けの東京を、シルバーのセドリックが密やかに駆け抜けていく。

 運転する霜田の額に、くっきりと青痣が浮かび上がっているのを見て、助手席の嵐が口を挟んだ。

「ねえ、パパ。運転代わろっか?」

「パパと呼ぶんじゃありません!全く、お前ごときに心配されるようじゃ、白虎組の名が廃れるというものです」

 子飼いである朽木から殴り倒されたというのに、霜田は相変わらず居丈高である。後部座席の冬枝は、密かに感心していた。

 ――なんだかんだで霜田さんも、懐がでけえよな。俺だったら、朽木みてえなのはとっくに見限ってるってのに。

 ふと、彩北にいる弟分たちの顔が浮かんだ。高根も土井も気が小さいから、朽木のような反抗的な真似に出ることはまずないが。

 会話の流れに背中を押されたのか、それまで黙っていた朽木が、ぼそりと口を開いた。

「すみません、霜田さん」

「はあ?聞こえませんよ、朽木!喋るならもっと大きな声で話しなさい!」

 そう霜田ががなったのは、いつものお小言なのか、それとも憔悴した弟分への気遣いだったのか。

 いずれにせよ、隣に半畳を入れる男がいる以上、粋なムードなど生まれようがない。その名は嵐。

「そうだそうだ!パパはもう年なんだから、でかい声でしゃべらないと聞こえないんだぞ!」

「違うっ、そういう意味ではありませんっ!」

 霜田と嵐のやり取りに、後部座席のミノルが「ふふ…」と噴き出した。

「良いですね、白虎組も。僕たち秋津一家は地縁と血縁で強く結ばれた組であり、それを誇りにしています。ですから、君たち白虎組のことは、街のチンピラの寄せ集め程度に思っていたんですが……なかなかどうして、仲の良いことで」

「嫌味か」

 冬枝が突っ込むと、ミノルは「とんでもない」と笑った。

「もう古い言葉かもしれませんが、僕らの世界は義理と人情が大事だってことですよ。それを失ったらどうなるかは、青龍会を見ていればわかるでしょう?」

「…確かにな」

 飽くことのない勢力拡大、膨らみ続ける欲望と憎悪。青龍会は東京で多額の金を稼ぐのと同時に、多くの鬼畜と犠牲者を生み出した。

 だが冬枝には、ミノルの言う「義理と人情」もまた、風が吹けば飛ぶ程度の薄っぺらいものにしか思えなかった。

 ――所詮、極道なんてそんなもんだろうよ。

 これから向かう桃華組組長・秋津ユタカだって同じだ。父・秋津イサオの命令で宿敵・青龍会に潜り込んだというが、ゾンビ取りが何とやらで、結局自分も欲望の権化に成り下がってしまったのではないか。

 ユタカ率いる桃華組が彩北の少女たちを拉致したことも、ユタカが源清司を使ってしつこくさやかを狙ったことも、冬枝は忘れていなかった。

 ――そんな奴とさやかを会わせるなんて、俺は気が進まねえんだが…。

 ちらりと、隣のさやかを見る。というか、後部座席に4人も詰まっているせいで、さやかはほとんど冬枝の膝の上に乗っかるような格好になってしまっているのだが。

 その状態で、さやかはほかほかと温もりを発する静かなかたまりになっていた。

「すー…すー……」

「って、寝てんのかよ…」

 これから青龍会四天王のところに殴り込みに行くというのに、なんて呑気な。そう思いかけたが、冬枝は考え直した。

 ――そうだな。俺もお前のツラ見たら、ちょっと気が抜けちまった。

 さやか、それに嵐や朽木、ミノルという、彩北でよく見たメンツが揃ったのだ。それだけで安心してしまう自分が、少々情けない。

 このまま、寝ているさやかと一緒に眠ってしまいたい。冬枝のそんな思いとは裏腹に、セドリックはやがて都心のタワーマンションに到着した。

「ここが、ユタカのいるマンションです。桃華組事務所は、最上階にあります」

 ミノルに説明され、冬枝が頷く。

「僕はこのまま、霜田補佐と一緒に5代目の元へ向かいます。君たちの無事を願っています」

「モッチー!絶対に鳴子を取り返すぜ!」

 嵐が親指を立てると、ミノルも同じようにして応じた。

 冬枝、さやか、朽木、嵐の4人を降ろして、セドリックはその場を後にした。

 2人きりになった車内は、急に静かになった。

 東京の夜には、闇と呼べる闇がない。どこを走っていても、車窓の向こうは人工の灯りで白濁している。

「霜田補佐には隅々までのお心配り、感謝しています。朽木君の非礼の数々を思えば、非常に寛大なご処置だと思います」

 ミノルが大仰な物言いに含めたところを、霜田は敏感に察したようだ。

 先刻までの高慢な態度が嘘のように、眼鏡の奥の瞳が曇る。

「…このまま東京にいたほうが、逃げ場の一つも見つかるでしょう。彩北にはもう時間がありません」

「ええ。僕も、手をこまねいてはいられません」

 青龍会四天王による彩北襲撃――その気配は、既にこの男たちには伝わっていた。

 だからこそ、霜田は朽木を罰さず、目的を遂げさせてやることを選んだ。さやかと冬枝にもまた、彩北に戻すよりも、自由を与えてやることにしたのだ。

 霜田の親心に感心しながら、ミノルは自身のことも振り返った。

 彩北襲撃を冬枝たちに教えなかったのは、フェアじゃなかったかもしれない。それでも今、彼らが彩北どころじゃないことも事実だ。

 ――導火線には、もう火がつけられてしまった。あとは走り抜けるしかありませんよ、冬枝君、さやかさん、嵐君……。



 深夜のエントランスホールは、照明ばかりが無駄に明るいだけで、人の姿はなかった。

 エレベーターに乗り込むと、嵐がふと思い出したように言った。

「なあ、さやか。モモカちゃん…秋津ユタカに会って、お前、どうするつもりだ?向こうはお前のこと、パパの仇!でぃやああああー!!って、襲い掛かってくるかもしれないんだぞ?」

 嵐の言は、冬枝がずっと思っていたことでもあった。

 ――奴は秋津イサオの息子であり、青龍会四天王でもある。どっちにしろ、さやかの敵に違いねえ。

 冬枝が目線でさやかに返事を促すと、さやかはエレベーターの窓を見つめた。

 ガラスに映る自分自身に確かめるように、さやかは答えた。

「僕とミノルさん、それに秋津ユタカさんは、何というか……同志みたいなものなんです」

「同志?なんの」

 嵐の問いに、さやかはそっと目を伏せた。

「…イサオさんの意志を託されたもの同士、ってところでしょうか。今は、それしか答えられません」

「なして」

 冬枝がデリカシーを蹴飛ばして敢えて突っ込むと、さやかはぷいっとそっぽを向いた。

「イサオさんたち、ご家族の事情に関わることなので。どこまで冬枝さんたちに明かすかは、ユタカさん次第です」

 それに、と言ってさやかは言葉を継いだ。

「僕にはもう一つ、ユタカさんに会う理由があります。ユタカさんの出方は分かりませんが、今夜は長い夜になりますよ」

 さやかにとっても、因縁のある相手との大勝負といったところなのだろう。

 さやかの考えも、秋津イサオたちとの事情もさっぱり分からない冬枝だが、さやかの真剣な横顔だけで十分だった。

「分かった。桃華組の奴らは俺が黙らせてやるから、お前はあの若造と存分に話せ」

「はい」

 そこで、最新式のエレベーターが早くも最上階に到達した。

 4人の表情が、無言で引き締まる。

 ――灘さんちで藤浪に会った次は、秋津ユタカか。青龍会四天王なんざ、俺みたいな田舎者がわざわざ拝みたい相手じゃねえってのにな。

 さやか、嵐、朽木はともかく、冬枝自身にはこんなところにいる理由はない。それなのに、この場を立ち去ることもできないのだ。

 ――俺は、いつからこんな勝負師みたいな生き方になったんだ?って、こいつのせいか。

 隣に立つ、さやかのつむじを見下ろす。車の中で寝こけていたのが嘘のように、凛とした顔付きをしている。

 さやかの抱える揉め事が片付かない限り、冬枝の日常も戻ってこない。冬枝がここにいる理由は、それが全てだ。

「行くぞ。桃華組の事務所はこっちだ」

 朽木に促され、一行はパステルピンクに桃の花の紋が白抜きされた扉の前に立った。



 桃華組事務所の中には、大勢の若者たちが詰めていた。

 それも、彩北の街で跳梁跋扈したような『ブルー・ワイバーン』のような類ではない。若者なんてどいつもこいつも似たり寄ったりのように思っていても、至近距離で見ると違いが分かる。

 ――こいつら、秋津一家の元組員たちか。

 冬枝も、ミノルの話や灘家に置かれた週刊誌などで、秋津ユタカが秋津一家から独立した経緯を知ってはいた。

 10年前、秋津ユタカは父・秋津イサオが自分ではなく叔父の秋津タケルに跡目を譲ったのを理由に、秋津一家から離反した――ことになっている。その際、秋津一家の若い組員たちを引き連れていた。

 叔父との跡目争いというのは狂言、というミノルの話を信じるなら、この若者たちもまた、宿敵・青龍会に秋津ユタカを潜り込ませるにあたり、秋津イサオが息子につけてやった精鋭たちということか。

 ユタカのみならず、ユタカについた若者たちにとっても『東京の極悪ヤクザの手下になる』というのは大きな決断だったはずだ。秋津一家の血の結束は、それだけ固いということか。

「朽木だ。約束の女を連れて来た」

 朽木がさやかの顔を顎で示すと、組員たちは無言で頷いた。

 整然と並んだ組員たちの向こうから、真っ青なスーツ姿の男がカツカツと歩いてきた。

「待ちくたびれたぞ。…おや?何やら、呼んだ覚えのない客が、何人かいるようだが」

 秋津ユタカ――青龍会四天王という肩書きが大袈裟に思えるぐらい、それは細身で白面の青年だった。

 朽木が何か答える前に、嵐が我先にと手を挙げた。

「はいはーい!俺たち、さやニャンのボディガードでーす!」

「おいっ、てめえっ…!」

 目を剥く朽木を無視して、ユタカは「そうか」とあっさり受け入れた。

「まあ、いいだろう。ザコが何人いたところで、夏目さやかさえいれば問題はない」

「ザコ……」

 こんな生っ白いお坊ちゃんから面と向かって言われると、冬枝の胸がざわつく。眉間が思いっきり寄ったところで、さやかが目線で自制しろと訴えて来たため、何とか拳は押さえたが。

「おい!俺は約束通り、夏目さやかを連れてきたぞ。メイちゃんを返せ」

 前のめりになる朽木に対しても、ユタカは王族のように気取った態度を崩さない。一瞥だけして、傍らの若い組員に命じた。

「案内してやれ」

「はっ」

「俺も行く!ダンディ冬枝、後はよろしく」

 嵐と朽木はそのまま、組員たちによって別室へと連れて行かれた。

「さて…」

 ユタカはお坊ちゃん然とした見た目にふさわしく、気取った仕草で背後のテーブルを示した。

「立ち話というのもなんだから、座ってくれたまえ。茶ぐらいは出してやる」

 組員たちに押されるようにして冬枝とさやかが座らせられたのは、ピンク色に白のクロスがかかったソファだった。

 ついでにテーブルも同じパステルピンクで、白のレースのクロスがかかっていることに気付き、冬枝は面食らった。

 ――そういや、なんでこの部屋はこんな背筋が寒くなるようなピンク一色なんだ?

 この部屋を支配している薄い桃色なんて、ヤクザの組事務所ではまずお目にかからない色だ。そこで、冬枝は秋津ユタカのもう一つの顔を思い出した。

 ――そうだ、こいつのシノギは確か、若い女向けの雑貨屋だった。彩北からさらった女たちも、そこで働かせてるとかなんとか…。

 つまり、ここは青龍会四天王・桃華組の事務所であると同時に、東京の少女たちを席巻しているファンシー雑貨店・モモカショップの事務所でもあるのだ。

 ――それにしたって、ピンク色の部屋に出入りなんかして、恥ずかしくねえのか、こいつらは。

 どうでもいいことを考える冬枝の前に、組員がメニュー表を差し出した。

「お茶はどれになさりますか。緑茶、麦茶、紅茶、ジャスミンティー、コーヒー、オレンジジュース、コーラなど、各種取り揃えておりますが」

「お前ら、そんなことまでやらされてんのか。ここは喫茶店か?」

 敵地のど真ん中だということを忘れて、冬枝はついそう口走ってしまった。

 対する若い組員は気分を害した様子もなく、至極無邪気に返した。

「だって、色々飲めたほうが楽しいじゃないですか。女の子たちのウケもいいし」

「はあ……?」

「コーヒー二つ、ブラックで」

 ごちゃごちゃ言う冬枝を黙らせるかのように、さやかが口早に注文した。

「秋津組長。僕がここに来た目的は3つあります」

「ユタカでいい。キサマの周りには、ボクの血縁者がうようよしているからな。で、3つの目的とやらは何だ?」

 律儀に聞いてくれるのか、と冬枝はユタカの変なところに感心した。

 さやかは「1つ目は、ここにいる風間鳴子さんを解放すること」と言った。

「2つ目は、あなたと…ユタカさんと、今年の1月に起きた事件について話すこと」

「ああ。望むところだ」

 ユタカが頷く。ここまでは冬枝にも予想の範疇だが、最後の1つは何だろうか。

 さやかが口にしたのは、ある少女の名前だった。

「3つ目は、桃華組にさらわれた落合絵里子さん…エリさんに会うことです」

「落合…?」

 と首を傾げたのは、冬枝である。どこかで聞いたような名前だが、思い出せない。

 一方、冬枝より10歳近く若そうなユタカは、すぐにピンときたようだ。

「ああ、源が彩北から連れてきた、あの女子高生か。そういえば、キサマとは一時、同船していたのだったな」

「ええ」

 源の名前が出て、冬枝はようやくかの男の不在に気付いた。

 ――そういや、源さんはどこにいるんだ?

 わざわざ会いたい顔ではないが、冬枝とさやかを引き裂いた張本人だ。また思わぬ横槍を入れられるのではないか、と冬枝に緊張が走る。

 冬枝が左右に視線を走らせるのを、ユタカが敏感に察知した。

「源なら、ここにはいないぞ。奴はクビにした」

「クビ?なんでまた」

 冬枝の不躾な質問に対し、ユタカはわざとらしく肩を竦めてみせた。

「ボクは青龍会四天王だぞ?源は、このボクに相応しくない。それ以上の理由はないさ」

「ああん……?」

 青龍会四天王だか何だか知らないが、こんな青二才の物言いを真に受けられるほど冬枝はバカじゃない。

 ――源さんは、何か別の目的のために桃華組を離脱させられたってことか?だが、何のために?

 源ほどの男を潜り込ませるぐらいだ。何か余程大きな事態が動いているのかもしれないが、冬枝にはまるで見当がつかない。

「………」

 そこで、散々話を混ぜっ返されたさやかの冷ややかな目線を感じて、冬枝は口を閉じた。

 さやかも、源の不在が気にならないわけではない。何らかの思惑も感じているが、今日の目的はあの男ではない。

 ――源さんがいないなら、そのほうが僕には好都合だ。あの人の顔、もう見たくないし。

 さやかは、改めてユタカに向き直った。

「…3つの目的のうち、1つ目は果たされました。2つ目は、僕だけでなくユタカさんの目的でもあるでしょう。最後の目的――エリさんに会うことを、お許し願えませんか」

「ダメだ」

 ユタカはにべもない。高慢そうな笑みで、こちらを見下ろした。

「桃華組の女は全員、貴重な商品だ。よそから来た人間に、おいそれと会わせるわけにはいかないな」

「…何か、条件があるんですか」

 冬枝は「こいつぶん殴って済ませりゃいいんじゃねえか」とでも言いたげな顔をしているが、さやかは目線で黙らせた。

 そこで、ユタカと、ユタカの周囲にいる組員たちが怪しく笑った。

「夏目さやか。キサマには、我が桃華組の洗礼を受けてもらおう」

「洗礼…?」

「一般人にも分かる言葉で言えば、拷問だ。フフ…キサマのような小娘が、耐えられるかな?桃華組の苛烈な接待に」

 たまりかねた冬枝が「おい!」と声を上げた。

「てめえ、黙って聞いてりゃ勝手なこと抜かしやがって。俺たちは拷問なんか受けるためにここに来たわけじゃねえぞ」

「ちょっと、冬枝さん」

 さやかは冬枝を窘めるように、背広の袖をぐいっと引いた。

 ここはユタカの根城であり、さやかたちの座るピンク色のソファは、桃華組の組員たちにぐるりと囲まれている。この状態でユタカに啖呵を切るなんて、自殺行為だった。

 まして、今は青龍会に属しているとはいえ、彼らの出身はあの秋津一家だ。秋津一家がいかに結束が固く、『秋津一家の始祖・秋津イサオの仇』であるさやかを憎んでいるかは、冬枝とて知らないわけではないだろう。

 はっはっは、とユタカの高笑いが響いた。

「弱い犬ほどよく吠える、というのは本当だな。冬枝、キサマは源に傷一つ付けられなかったどころか、藤浪に拾われて世話をされていたそうじゃないか。そんな哀れな負け犬が、このボク相手にそんな口を利いていいと思っているのか?」

「何だと?てめえこそ、いつまでも女の尻なんか追いかけ回して恥ずかしくねえのか。しかも自分で出張るならまだしも、あんな色情狂の自惚れ屋の変態親父を使いっ走りにしてるなんざ、お里が知れるってもんだぜ。身の程知らずはてめえのほうだ、青龍会のハゲ野郎!」

「誰がハゲだ!」

 冬枝の暴言にユタカが立ち上がり、周りの組員たちもわあわあ声を上げ始めた。

「俺たちが大人しくしていれば、調子に乗りやがって!」

「白虎組は礼儀というものを知らないのか!」

 男たちの怒号の中で、さやかは深く、海よりも深く後悔していた。

 ――冬枝さんを連れて来るんじゃなかった。



 ユタカたちのいる応接間を出た嵐たちは、ピンクの扉が連なる廊下を歩いた。

 よく見ると、それぞれのドアには横に『うさぎ』『キャンディ』『ストロベリー』などの部屋名がつけられている。思わず、嵐は苦笑いしてしまった。

 ――うっひょー、ラブホテルみたーい。

 若い組員が、『プリンセス』と書かれた扉をノックした。

「風間さん、お客さんです。今、大丈夫ですか」

 人質相手とは思えないような慇懃な調子に、嵐はちょっと面食らった。

 ――桃華組って、ホントに異世界ねー…。

 尤も、この手の悪党は珍しくない。女にとことん優しい顔をして、自分に貢がせる輩は、彩北にもいる。 

 ひょっとしたら、これからは桃華組のような、女に媚びへつらうタイプのヤクザが主流になるのかもしれない。『強い男が弱い女を支配する』という構図が崩壊しつつあるのは、堅気も裏社会も似たようなものだろう。

 ――いずれにせよ、血の吸い方が変わっただけだ。ジェントル秋津やマロン林には悪いけど、俺はモモカちゃんのことを100%は信用出来ないぜ。

 桃華組――秋津ユタカと源清司は、鳴子を二度もさらったのだ。ミノルや栗林にどんな事情があろうと、嵐は連中を許す気にはなれなかった。

「はぁい」

 扉から女の声がした瞬間、嵐の思考はプツッと断ち切られた。

 ――鳴子の声!

 夏に鈴子は鳴子と再会したが、嵐は朽木によって会うことを許されなかった。何年ぶりかに声を聴いただけで、自分でも思っていた以上に心が揺れてしまう。

 組員が「どうぞ」と言って扉を開けた。

「風間さんのことはご自由に、とのことです。では、失礼します」

 折り目正しく礼をして去って行く組員には目もくれず、朽木が我先にと部屋に入った。

「メイちゃん!」

「…貴彦さん!」

 思いっきり弾みをつけたスーパーボールのように、白いシルエットが朽木の胸に飛び込んだ。

「…鳴子!」

 緩やかに波打つ髪、ビーズのきらめく白いカーディガンとフリルのついたシャツ――鳴子の実年齢は嵐より上なのだが、相変わらずの少女趣味だ――、そしてその少女趣味と大きく矛盾する、上から下まで急カーブを描くボディラインは、姉に劣らぬプロポーションの良さだ。

 何より、朽木の背中越しに覗く、涙に濡れたその顔は――鈴子と瓜二つの、見慣れた義妹のものだった。

 ――良かった。

 真っ先に、嵐の胸に広がったのは安堵感だった。鳴子が無事で良かった、本当に良かったと、心の奥にまで温もりがじわりと溶け出していく。

 朽木との呆れるぐらい長い抱擁の後、ようやく鳴子が嵐の存在に気が付いた。

「…嵐ちゃん?どうして、ここに…」

「…当たり前だろ。鳴子が桃華組にさらわれたって聞いて、鈴子がしったげ心配してるぞ」

 ぶっきらぼうに言う嵐に、鳴子がふふっと笑った。

「そっかあ。ありがとう、嵐ちゃん」

 そのノンビリとした言い方は、昔のままだ。何事もなかったかのように接する鳴子に、嵐の胸は疼いた。

 ――違う。俺がここに来たのは……。

「すまねえ、鳴子」

「嵐ちゃん…?」

「俺、ずっとお前に謝りたかったんだ」

 頭を下げる嵐を、鳴子が不思議そうに見下ろしている。

 嵐は、これまでのこと――それこそ、鈴子を慕っていた5歳の頃にまで、思いを馳せた。

 嵐が憧れた5歳上の幼馴染、風間鈴子。そして、その隣にいつもいたのが、妹の鳴子だった。

 姉妹の家は貧乏で、姉妹揃って素行も悪かった。だが、二人はいつも明るく天真爛漫だった。

 そんな2人と兄弟のように付き合いながら、嵐が目で追いかけていたのはいつも鈴子のほうだった。

 鈴子と結婚したいと、ずっと本気で思ってきた。そりゃ、鈴子は年上趣味で、不倫ばっかしてるけど、いつか自分が鈴子の安心出来る存在になるのだ。情に厚い鈴子が、本気で他人の家庭を不幸に陥れたいわけじゃないのも分かっていた。

 一方で、鳴子に対しては、姉を取り合うライバルのように感じてもいた。鈴子は3歳下の実妹に甘く、鳴子はそんな姉にべったりだ。鈴子への思いが強くなるにつれ、嵐は姉妹の仲の良さに嫉妬するようになっていった。

 鳴子さえいなければ、鈴子は自分だけのものになる。認めたくないが、それが嵐の本心だった。

 やがて、嵐は警察官になり、彩北を舞台に数々の大捕り物をした。姉妹はホステス勤めで、マイペースに楽しくやっていた。

 その頃、鳴子が白虎組のヤクザ――つまり朽木と付き合っていることは知っていた。だが、どうせすぐに飽きるだろうと嵐も鈴子もたかをくくっていた。鳴子の『王子様』は、週刊誌の話題並みにころころ移り変わるのだ。

 ただ、心の隅でこう思ってもいた。

 鈴子はいつまで、頼りない妹に付き合い続けるのだろうか。鳴子があんな恋愛気質だから、鈴子も自立できないのではないだろうか――と。

 そんな中、ある事件がきっかけで心が折れた嵐に、鈴子がこう励ましてくれた。

 結婚してあげる。だから、元気出して――と。

 こうして嵐は惜しまれつつも警察官を辞め、鈴子と一緒になった。ようやく鈴子を自分のものに出来た喜びと、刑事を辞めた喪失感とが、嵐の口を滑らせた。

 ヤクザなんかと付き合っている鳴子は邪魔だ、鳴子さえいなければ幸せになれるのにな、と。

 その場では冗談めかしていたが、本音を吐き出してしまった自覚はあった。鳴子はただ微笑んでいた。

 そして、約束していた花見に鳴子は来ず――そのまま、彩北から姿を消してしまった。

 嵐は、鳴子を奪った朽木を恨んだ。その一方で、ずっと罪悪感が胸を刺していた。

 ――鳴子のことが憎かったわけじゃない。鳴子だって、俺の大事な家族なのに。

 鳴子の不在を寂しがり、その身を案じていたのは、鈴子だけじゃない。自分にとっても鳴子はかけがえのない存在なのだと、いなくなってようやく分かった。

「俺はずっと、鳴子に嫉妬してたんだ。だから、あんな酷いことを言っちまった。でも俺は…」

 懺悔の言葉を口にする嵐を、朽木が遮った。

「今更ごちゃごちゃ言ってんじゃねえ。つまり、てめえはいい人ヅラがしたいだけじゃねえか。この期に及んでまだ、てめえの狡さを許せってメイちゃんに言うのか。それこそ、傲慢じゃねえのか」

 朽木の言う通りだ。顔を上げられない嵐に、朽木が吐き捨てるように言った。

「俺たちは、朱雀組の5代目のところに戻る。てめえはどこにでも消えちまえ」

 そう言って去ろうとした朽木を、鳴子が「待って」と止めた。

「お願い、貴彦さん。嵐ちゃんのことを責めないであげて」

「メイちゃん…」

 恋人を安心させるように微笑むと、鳴子は嵐に向き直った。

 嵐の肩にそっと触れた指先は、驚くほど優しかった。

「嵐ちゃん。メイコね、嵐ちゃんのことをひどいなんて思ったこと、一度もないよ。嵐ちゃんがずっとお姉ちゃんのことを好きでいてくれて、お姉ちゃんが安心して傍にいられる人になってくれて、メイコ、本当に嬉しかった。嵐ちゃんのおかげで、お姉ちゃんはやっと本当のお姉ちゃんになれたの。だから、メイコも安心して、貴彦さんと一緒になろうって決められたんだよ」

 鳴子の手が、嵐の頬に触れる。そこにはただ、慈しみだけがあった。

「お姉ちゃんとメイコは、自分自身の人生を歩み始めたの。寂しいけど、怖いことじゃないんだよ。今までずっと、ちゃんとお話しできなくてごめんね」

 そのまま、鳴子は腕を広げて、嵐を抱きしめた。

「嵐ちゃん。メイコのことを見つけてくれて、ありがとう。貴彦さんをここに連れて来てくれて、ありがとう。嵐ちゃんは、メイコの自慢のお兄ちゃんよ」

「鳴子…!」

 感極まった嵐は、うおーんと雄たけびを上げて鳴子の胸に頬を寄せた。

「あっ、てめえ、離れやがれ!」

 朽木が小突き回したが、嵐はちっとも堪えない。

「鳴子ぉ。今度、みんなで花見に行こうな」

「うん。メイコと、貴彦さんと、嵐ちゃんとお姉ちゃん。それに、ママやパパや響子ちゃんに…そうだ、さやかちゃんと冬枝さんも誘わなくっちゃ」

 うふふっ、と笑う鳴子には、ここにはない満開の桜が見えているかのようだ。

 この国屈指の暴力団ですら、侵せない世界がこの女の中にはある。嵐と朽木はただ、その慈愛に包まれているばかりだった。



 桃華組と冬枝の怒鳴り合いが一段落するのを待って、さやかは口を開いた。

「…ユタカさん。ボクとエリさんがお会いするにあたって、条件があることは分かりました」

 さやかの声を聞いたユタカが、まだ何か言おうとする周囲の組員たちを手で制した。

 それだけで、辺りがしんと静まり返る。ユタカが言った。

「ほう。受けるか、桃華組の拷問を」

「はい」

 頷くと、さやかはぽつりと言った。

「ユタカさん相手に駆け引きが出来る立場じゃないことは承知です。でも」

 きっと顔を上げたさやかは、瞳に闘志を光らせていた。

「冬枝さんを『負け犬』呼ばわりされてしまっては、僕としても素直に口を割るわけにはいきません。僕は白虎組の代打ちで、冬枝さんは僕の雇い主です。口の利き方には、ご注意を」

 さやかのセリフに、ユタカが感心したように顎を引いた。

「…なるほど。噂通り、確かにミノル叔父さんに似ているな、キサマは。パパもきっと、それでキサマを……」

 ユタカの瞳が一瞬、遠くを見るように細められる。

 ユタカの顔立ちは母親似だが、眼はイサオと同じ色をしていると――その時、さやかは思った。

 言いかけて、ユタカは途中で言葉を切った。

「…ここから先は、拷問の後にしよう。お前たち、支度をしろ!」

「はっ」

 周囲を取り囲んでいた桃華組の組員たちが、一斉に別室へと動き出す。

 冬枝はさやかを庇うように前に立ち、左右を警戒した。

 ――奴ら、何をするつもりだ。

 やがて、ガラガラと音を立てて、台車が押されてやって来た。

 そこに載せられているのは、禍々しい拷問器具の類――ではなく、赤いチェック模様の紙に包まれた、黄色い生地からホイップクリームが覗くお菓子だった。

「あん?」

「あーっ!」

 訝しむ冬枝をどかすようにして、さやかが身を乗り出した。

「クレヨンクレープ!しかも、全種類!どうしてここに?」

「くく…これが青龍会の力だ。キサマを締め上げるために、店のスタッフにここで調理させたのさ。出来立てだぞ」

「わあ…」

 呆気に取られる冬枝に、さやかがご丁寧に説明してくれた。

「あっ、冬枝さんは知りませんか?クレヨンクレープっていうのは、原宿で一番有名なクレープ屋さんなんです。僕も子供の頃から通ってて、大好きなんです」

「はあ……」

「人気なのはこの『いちごチョコバナナスペシャル』なんですけど、僕はバナナチョコクリームがお気に入りです。冬枝さんにはこっちの『シュガープレーン』がおすすめですね」

 饒舌に語るさやかは、まさに東京娘そのものだ。冬枝は、目の前にいるのが彩北から遠く離れた都会生まれ都会育ちの女だということを、久しぶりに思い出した。

 冬枝の慨嘆をよそに、ユタカが得意げに腕を組んだ。

「ふふん。キサマも伊達に東京者ではないようだな。だが、桃華組はキサマの更に上を行くぞ」

「なんですって!?」

「これを見ろ!」

 ユタカの背後にいた組員が、別の台車にかけられていた布をバサッと剥がした。

 そこに並んでいるのは、銀色のケースたち。中には、色とりどりのアイスクリームが入っている。

「ここにあるクレープに、アイスをトッピングし放題だ。どうだ?」

「ああ~っ!いいなぁ~」

 さやかが手足をじたばたさせる横で、冬枝はかかしのように突っ立っていた。

 ――なんだ、これ……?

「お前、クレープなんかに食いついてる場合かよ」

 冬枝の冷静なツッコミに、さやかは「だって」と拳を振った。

「僕、冬枝さんと一緒にクレープ食べるの夢だったんです。冬枝さんはあんまりこういうの、興味ないかもしれませんけど…彩北では、冬枝さんが僕にミルク焼きを食べさせてくれたでしょう?だから僕も、僕の地元で好きなものをご馳走したいっていうか。原宿は地元じゃないですけど」

 さやかの気持ちは冬枝も嬉しくないわけではないのだが、それよりも気になることがあった。

 ――さやかの奴、何だか術にでもかけられたみたいに、自分のことをぺらぺら喋ってねえか?

 ついていけない冬枝をよそに、ユタカは得意げな笑みを浮かべた。

「だが、お楽しみはここまでだ。ボクたちは青龍会・桃華組だ。ハゲタカと恐れられる、この国でも指折りの冷血集団。特に女に対しては、その絞り方を骨の髄まで心得ている」

 ユタカはさやかに背を向け、組員たちに笑顔を向けた。

「さあ、お前たち。日頃のねぎらいだ、存分に食うがいい」

「ありがとうございます、組長!」

「いただきます!」

 クレープとアイスを運んできた若い組員たちが、次々にクレープに手を伸ばした。

 むしゃむしゃむしゃ――。

 クレープは男たちによって貪られ、あっという間に赤い包み紙だけを残して消えていく。

 さやかが「くう~っ」と悔しそうに拳を握った。

 ユタカは自身もクレープを頬張りながら「これは挨拶代わりだ」と言った。

「ボクたち桃華組の冷酷さを思い知るのは、これからだ。おい」

「はっ」

 今度は別の組員たちが、どこからともなく台車を押してきた。

 台車には、またもやわざとらしいビロードの布がかけられている。だが、さやかはその形状から全てを察したようだった。

「まさか…麻雀牌!?」

「フフ…いかにも」

 したり顔のユタカに、さやかが「くっ…!」と追い詰められた表情になる。

 ――なんで分かり合ってるんだ、こいつら……。

 冬枝は、呆れと疎外感の入り混じった感情を抱いた。自分がおかしいのだろうか、とちょっぴり不安になってくる。

 バサッ、と布が外され、台車の上に置かれた薄紅色のジュラルミンケースがあらわになった。

 組員によってうやうやしくフタが開けられると、中にはずらりとピンク色の麻雀牌が並んでいる。

 それを見て、さやかが溜息を吐いた。

「うわあ。まるで、桜の花びらが敷き詰められているみたい」

「桜の花びらに失礼じゃねえか」

 冬枝は思わず突っ込んだが、さやかはお構いなしだ。

「バラみたいなピンクとか、フラミンゴっぽいピンクとか、ピンク色にもいろいろありますけど…このピンク色は、本当に桜の花みたいで綺麗ですね。ねえ冬枝さん、『こまち』の麻雀牌も全部これにしましょうよ」

「やだよ。客が遠ざかるだろうが」

 冬枝が営む雀荘『こまち』の客は、オッサンばかりだ。タバコの煙で灰色に曇る店内に、こんな女っぽいピンク色は似合わない。

 そこでさやかが、ぼそりと吐き捨てた。

「いいじゃないですか。オッサンなんて」

「ああ?」

「僕だって、その辺の汚いオジサンじゃなくて、綺麗で可愛いお姉さんと打ちたいです。冬枝さん、『こまち』が汚いオジサンでいっぱいなのと、綺麗なお姉さんでいっぱいなのとだったら、どっちがいいですか?」

「なんの話してるんだ、おめーは」

 まただ。因縁の男・秋津ユタカを目の前にしているというのに、さやかはまるで脈絡のない話を始めている。

 面食らう冬枝とは対照的に、ユタカは「ふふふ」と全てを分かっているかのように笑った。

「この麻雀牌は我が『モモカショップ』特製デザインだ。色の選定は勿論、触り心地の良い素材、見やすく美しい字体など、うちの女たちが厳しく選んだ特注品だぞ。牌の大きさも、女の手でも持ちやすいように微調整してある。ここまでこだわり抜いた麻雀牌は、世界広しといえどこの『モモカショップ』にしかあるまい」

「すごい…」

 感嘆の声を漏らしてから、さやかは急にハッと顔色を変えた。

「……!待ってください、ユタカさん」

 ピンクの牌を大切そうにケースに戻すと、さやかは興味を隠しきれずに言った。

「桃華組には、麻雀に興味のある女性がいるんですか」

「いるとも。フフ、本題はそこだ」

 ユタカの頷きを合図に、数人の組員たちが前に出てきた。

 いずれも若く、20代後半ぐらいだろうか。秋津一家の出身とはいえ、東京で暮らしているだけあって、大羽にいる連中よりは垢抜けて見える。

 どこか緊張気味、というか恥じらっているかのような数名を前に、ユタカが司会者のように声を張った。

「これが、今夜の拷問のフィナーレだ。おい、キサマら、自己紹介しろ」

「はっ!」

 一番左に並んでいた組員が、ぺこりと頭を下げた。

「27歳独身、モモカショップ警備スタッフです。麻雀クラブに通っている姉がいます」

 組員は、写真を取り出して見せた。赤い口紅がよく似合う、色気と爽やかさを両立させた美女が笑顔を浮かべていた。

「麻雀好きのお姉さん!?いいなあ、いいなあ」

 さやかがそわそわする間にも、次の組員が名乗りを上げる。

「24歳独身、モモカショップ物販スタッフです。彼女が最近、麻雀に興味があるみたいなんですけど、俺が教えようとするとケンカになっちゃって。彼女に麻雀を教えてくれる、優しい先生を募集中です」

「はーい!僕、先生やりまーす!」

 元気よく上げられたさやかの手を、冬枝が横から降ろさせた。

「バカっ、さやか、お前なあ!これが奴らの作戦だぞ!」

 冬枝にも何が奴らの作戦なのかはよくわからないが、とにかくさやかを諫めた。

 さらに、他の組員たちも次々に自己紹介をした。

「実は、彼女のご両親が大の麻雀好きで。今度、彼女の家に遊びに行くんだけど、俺は麻雀のルールがちょっとあやふやだから、不安だなあ」

「うち、妹が麻雀好きなんだ。でも妹はまだ若いから、雀荘なんかに行かせるのはちょっと心配でさ。誰か、一緒に打ってくれる頼もしいお姉さんがいればいいんだけどなあ」

「小さい弟と妹がいるんだけど、麻雀って知育にもいいんじゃないかと思って。ルールを簡単にして、子供でも楽しく遊べる麻雀を一緒に考えてくれる人がいないかなあ」

 いずれも、さやかの「女好き」と「女の麻雀人口を増やしたい欲」を同時にそそるプロフィールだ。冬枝は、欲求を堪えるあまりエビ反りになっているさやかを、不安な気持ちで見下ろした。

「おい、さやか。お前、変な格好になってるぞ」

「ううう~っ、だってぇ。みんなが僕を求めているから」

「求めてねえ、求めてねえ。これが奴の…青龍会の『ハゲタカ』のやり方なんだ」

 最初は戸惑っていた冬枝にも、何となくだが桃華組――秋津ユタカの手管が見えてきた。

 普通、ヤクザは暴力や脅し、或いは酒や薬や色仕掛けなんかで女をひっかけるものだ。

 一方、この桃華組は女たちに徹底的に共感、同調してやることで、女のほうから自主的にヤクザに協力する体制を作っている。

 源が女装して彩北の女子高生たちを虜にしたように、桃華組は女たちを一切傷付けることなく、幸せなままで自分たちの収入源にしている。

 このぞっとするようなピンク一色の事務所は、まさにその象徴だ。女にとことん尻尾を振り、媚び、油断させることで、女を安心させて働かせる場所。

 そんじょそこらの悪党には到底真似のできない、桃華組独自のやり方だ。やはり、青龍会の恐ろしさは、他のヤクザたちとは次元が違う。

 そこまで考えて、冬枝は疑問を抱いた。

 ――いや、それって悪事なのか……?

 桃華組の女たちは、身も心も健全な状態で、組と共存共栄しているということになる。たとえ警察が介入したとしても、女たちは桃華組の味方につくだろう。

 実際、さやかがここまで素をさらけ出してしまっているぐらいだ。桃華組――秋津ユタカは、女の本音を引き出すのがうまい。

 ――こいつの狙いは、さやかを痛めつけることなんかじゃねえ。さやかを油断させて、重要な情報を引き出そうとしているんだ。

 そうと分かれば、こんな茶番に付き合ってはいられない。冬枝は、居並ぶ組員たちに「あのう、名刺いただけませんか」と声をかけているさやかを、ぐいっと引き戻した。

「おい、秋津のせがれ。拷問とやらは、これで終いか」

 冬枝の声音に、真剣なものを感じたのだろう。ユタカが、長い脚を組み直した。

「そうだな。ショータイムはこれでお開きにしておこうか」

 ユタカがぱちんと指を鳴らすと、組員たちは折り目正しく礼をして、その場を去って行った。

 パステルピンクの応接間に、さやかと冬枝、秋津ユタカの3人だけが残される。

「夏目さやか。エリに会わせる前に、一つだけ答えてもらいたいことがある」

「……何でしょうか」

 そこで、ユタカの赤銅色の瞳が、真っすぐにさやかを射抜いた。

「キサマの『生まれ変わり』。名は何と言う?」

「………!」

 その瞬間、冬枝はここに来て初めて――さやかの全身に、恐怖が走るのを察した。

 ――さやか。

 さやかはずっと、冬枝に隠し事をしている。その秘密の重さゆえに朱雀組に追われ、青龍会に狙われた。さやか自身もまた、自虐するようなことばかり言ってきた。

『…後悔しますよ。冬枝さん』

 その核心が今、問われている。秋津ユタカによって。

 さやかのせいで父を奪われた息子によって。

 冬枝は、反射的にさやかの手を握っていた。

「さやか」

「……」

 さやかの手は冷たく、唇は緊張で固く閉ざされている。

 冬枝は、さやかの耳元でこう囁いた。

「『こまち』だ」

「…えっ?」

 さやかが顔を上げると、冬枝は至極真面目な顔で言った。

「何だか知らねえが、名前だろ?ここは適当に『こまち』って答えとけ。お前と言えば『こまち』だろ」

「…………」

 こまちこまち、と小声で連呼する冬枝に、さやかの口元が緩んだ。

「…適当ですね。ホント、行き当たりばったりなんだから」

「うるせえな。こんなお坊ちゃん相手に、真面目に答えるこたぁねえだろ」

「ありますよ」

 そう、真面目に答えなければいけないのだ。さやかは、改めてユタカを見つめる。

 ――今更、怖がってる場合じゃない。

 どんなに軽蔑されようと、さやかは真実を打ち明けなければならない。ユタカはきっと、全てを正面から受け止めてくれる。

 ――僕が怖いのは、ユタカさんじゃなくて冬枝さんのほうだなんて、気付いてないんだろうな。

 この手が離れてしまう瞬間が、どんなに恐ろしいことか。さやかに勇気をくれるのも、絶望をもたらすのも、同じ男なのだ。

 冬枝にも、ユタカにも、正直でありたい。さやかは、ぎこちない声でもしっかりと答えた。

「…『サクヤ』。それが、僕の『生まれ変わり』の名前です」

「そうか。覚えておこう」

 ユタカが、小さく笑みを浮かべた。それは温かい、少年のような笑みだった。

 さやかとユタカの間に、まさに『同志』のような空気が流れる。

 何となく警戒は解けた冬枝だが、それはそれとして疑問はあった。

 ――『生まれ変わり』って、何だ?



 ユタカは約束通り、すぐにエリ――落合絵里子と会わせてくれた。

「夏目さん!お久しぶりね」

「エリさん!」

 さやかはソファから立ち上がり、エリの手を取った。

 エリはトレードマークの黄色いカチューシャもそのままに、淡く化粧した顔が以前よりも大人びて見えた。

「すみません。こんな夜遅くに来てもらっちゃって」

「いいのよ、まだ起きてたから。友達と長電話してたら、彼が血相変えてうちに飛び込んできたのよ。組長がお呼びだ、って。何回電話しても私が出ないから、かなり焦ったでしょうね」

 コロコロと笑うエリが指さすのは、エリの隣で照れくさそうに肩を縮める桃華組の組員だ。

 確か、エリが船で桃華組に連れて行かれた際、桃華組のリーダー格としてさやかたちと交渉したのも、この青年だった。あの時、「彼ったら、私に気があるみたいなの」とエリは言っていた。

 もしかして、とさやかは思った。

「野暮なことをお聞きしますが…」

「やだ、マキも言ってたけど、夏目さんったら本当におじさんみたいな話し方するのね。可愛いのに損よ」

「……」

 むくれるさやかに、エリが「冗談、冗談」と手を振った。

「ご想像にお任せしますわ。ま、私が桃華組でキャリアを積むなら、彼が一緒にいてくれたほうが安心ってところ」

「…なるほど」

 ともあれ、エリが心底、幸せそうなのは、さやかにもよく分かった。こんな深夜にヤクザの事務所に呼び出されたというのに、エリが全く緊張していないのが良い証拠だ。

 これ以上「おじさんみたい」なことを言いたくはないが、さやかは口を開いた。

「マキさんが言ってました。エリさんのことは心配だけど、信じるしかないって。エリさんなら、自力で幸せになれる、と」

「マキが…」

 エリはそこで、ふっ、と大人びた表情を浮かべた。

「…流石ね。マキは私と違って、ご両親とも本当に仲が良くて、誰からも愛されてるのに…私みたいなはぐれ者の気持ちまで、分かろうとしてくれるんだもの。本当に心が温かくて、真っすぐな娘」

 それは皮肉ではなく、エリの正直な想いのようだった。

「どんなに離れていたって、これからもずっと、私はマキの友達よ。勿論、夏目さんとも。マキに本当に安心してもらえるように、ちゃんと手紙も書くわ。私はもう『家出少女』なんかじゃないんだから」

 そう言うエリは、希望で光り輝いて見えた。さやかもまずは安心、と思ったところで、エリが耳元に顔を寄せてきた。

「ところで、そちらが夏目さんのおじさま?キャッ、結構カッコいいのね」

「ちょ、ちょっとエリさんっ」

 エリは冬枝とさやかを交互に見て、ふふふっと含み笑いをした。

「夏目さんがお元気そうで、私も安心したわ。こんな時間にわざわざここに来たのは、組長の命令だからじゃないのよ。そこは、覚えておいてくださいませ」

 エリから茶目っ気たっぷりにウインクされ、さやかは照れ笑いした。

「…はい。ありがとうございます、エリさん」

 さやかもマキもエリも、皆、お互いのことを気にかけている。さやかは、久しぶりに胸の奥が温かくなるのを感じた。



 エリたちが帰った後、他の組員たちも、ユタカの命で引き上げた。

 部屋には冬枝とさやか、ユタカの3人だけになった。夜の重さが、しんと肩にのしかかるような静寂だ。

「いいのか。護衛もなしで」

 天下の青龍会の若頭が、たった1人でよそ者と対峙しているのだ。冬枝の疑問に対し、ユタカは笑いもせずにこう答えた。

「キサマごとき、指1本あれば十分だ」

「何ぃ?」

 いちいち癇に障るガキだな、と目を剥く冬枝を、さやかがどうどう、と宥める。

「ユタカさんは、あのイサオさんがひいき抜きで認めるほどの実力者です。恐らく、源さんより強いかと」

「当然だ。源なんて、ボクの足元にも及ばん」

「ほぁん?」

 源は若い頃、冬枝の首根っこを怪力で押さえ続けた兄貴分だ。勿論、源のことはもうただの腐った変態親父としか思っていないが、このモヤシみたいなお坊ちゃんからそんな風に言われてしまうと、やはり冬枝は気に入らない。

「ずいぶん、自信満々じゃねえか。そんなに強いんだったら、やっぱり秋津イサオを殺ったのはてめえなんじゃねえのか」

「ちょっと、冬枝さん!」

 さやかの鋭い声が、夜のしじまにピシッと刺さる。

 イサオの死に負い目を感じているさやかとしては、冬枝のセリフは許せるものではないのだろう。

 ――それも、俺は気に入らねえんだけどな。

 世間では、イサオを殺したのは当時、朱雀組の若頭だった柘植か、イサオと確執があったとされるユタカか、と騒がれている。

 面の皮の厚そうなそいつらではなく、どうしてさやかがイサオの死に責任を感じて、青龍会に追い回されなければならないのか。そんな怒りが、冬枝の中でユタカへの反感に繋がっているところはあった。

 当のユタカはと言えば、怒るでもなく、ぽつりと呟いた。

「そうだな。もしかしたら本当に、ボクがパパを殺したのかもしれない」

 ユタカは「ボクにはパパを殺す動機があった」と言った。

「動機……?だって、イサオさんとユタカさんは本当に仲のいい父子だって…」

 イサオがユタカを目に入れても痛くないほど可愛がっていたこと、ユタカがイサオを心から慕っていたことは、さやかも柘植やイサオ本人から聞いている。週刊誌で取り上げられているイサオとの確執だって、青龍会に潜り込むための狂言だ。

 だが、ユタカは微かに笑みを浮かべた。

「勿論、ボクはパパを心から愛しているさ。でも、ボクには守らなくちゃならないものがあったんだ」

 そう言って、ユタカはスーツの胸ポケットからあるものを取り出した。

 鈍色に輝く、何の変哲もないナット。

「パパは、これをボクにくれた人間を殺そうとしていたんだ」

 ナットを見下ろすユタカの瞳は、深い悲しみを湛えていた。



 東京から少し離れた山奥に、それはひっそりと佇んでいる。

 木々に抱かれるように聳え立つその建物は、窓のない黄土色の壁が滑らかな曲線を描く、不思議な形をしている。一見しただけでは何の施設か分からず、ごくまれにこの建物を見た者は、宗教施設か、はたまた宇宙人の作ったものか、と泡を食う。

 歴史に詳しい者なら、こう例えるかもしれない。

 墳墓のようだ、と。

 或いはそれは、的を射た表現と呼べるかもしれない。この施設には古の神々を模した存在がおり、そしてまた、数多の命が輪廻を繰り返す終焉の地でもあるのだから。

 その名はタカマガハラ。

 ――俺には、何がなんだかさっぱり理解できないけどな。

 車から降りた難波は、溜め息交じりにタカマガハラを見上げた。何度見ても、不気味なシルエットである。

「これは子宮なんじゃないかな。だって、タカマガハラを統率しているのは女の人なんでしょう?」

 と言ったのは、一度だけここに来たことがあるタマミである。

 なるほど子宮か、と難波は妙に納得したし、そこに思い至るタマミの突飛な思考回路に感心した。

 青龍会や玄武会といった、誰もが恐れをなす男たちの利権の行き交う場でありながら、その実、タカマガハラは巨大な母胎なのだ。だから気持ち悪いのかと、難波はしみじみ理解した。

 それは難波自身が、『女』というものに根源的な嫌悪感を抱いているせいもあるが――この場所は、そんな個人的な感情を超えた魔境なのだ。

 ――バケモノの腹の中には、バケモノがうじゃうじゃいる。当たり前っちゃ、当たり前の話だな。

 最低限の護衛だけを連れて、難波はタカマガハラの洞のような入り口をくぐるようにして入った。

 タカマガハラの中は暗い。真っ暗な壁一面に、蛍のような青白い光を発する照明が無数に埋め込まれており、それらが順路を照らしている。

「玄武会はきっと、私たちの知らないテクノロジーを使っているんだね。我らが生徒会長が見たら、さぞかし興味を示すだろうけど」

 とは、やはり一度だけここに来たタマミの言だ。こんなおかしな場所に来て、微塵も怯まないんだから、タマミも夏目さやかに負けず劣らず変な女である。

 タマミと違って、難波はタカマガハラや玄武会のテクノロジーとやらについては、考えないようにしている。

 ――バケモノがバケモノを生み出すための手管なんて、知りたくねえからな。

 タカマガハラとの折衝だって、自分よりも成滝や藤浪のほうが適任だと思うのだが――いっそ、秋津のお坊ちゃんでもいい――行き場のない若者をたらふくタカマガハラに提供していることから、難波が自然とこういう立場になってしまった。

 若い頃の自分だったら――ただバカで無力な不良だった頃の自分だったら、こんな未来が想像出来ただろうか。

 日本でも屈指の極道になった挙句、人造人間を生み出す狂気の実験に手を貸しているなどと。

 昔を振り返るなんて、感傷に耽りすぎている。難波は、乾いた笑みを浮かべた。

 ――結局、強者も弱者も地獄を見ることに変わりはねえか。世知辛いねえ、この商売。

 難波が足を踏み入れると、壁が自然と開けた。

 穴ぐらのような内部には、3人の男女が座っている。無数の蒼い光に照らされながら。

「待ってたぜ、難波。今日は、我々3人が一堂に会する天赦日だ。ラッキーだな、お前は」

 中央に座す男――いや、男のように背が高く、声も低いが、これでもれっきとした女らしい――が、右側に座す少女を手で差す。

「我ら玄武会が誇る美姫、木花咲耶姫から受け継ぎし名はサクヤ」

「……」

 少女――サクヤは、にこりともせず、大きな瞳でちらりと難波を見る。

 中央の女が、今度は左手に座す男を差す。

「同じく、我ら玄武会が誇る大丈夫、スサノオ」

「よっ」

 男――スサノオが、鷹揚に手を挙げた。

 最後に、女は自らをこう名乗った。

「そしてこの俺――タカマガハラの統率者にして、この国最強の人造人間。貴様の交渉相手、その名はアマテラス」

 女――アマテラスは、両腕を広げてゆっくりと立ち上がった。

「要件は聞いている。俺の息子に会いたいって奴がいるんだろう」

「ああ」

 てめえの息子じゃねえだろ、と言いたい気持ちを堪えつつ、難波は出来るだけ事務的に告げた。

 このタカマガハラのどこかに、朱雀組の組員――栗林アキラが軟禁されているらしい。

 栗林は立場上はただの組員だが、亡き朱雀組の4代目・秋津イサオの甥にあたる。当然、血縁者である秋津一家の者たちは、黙っていなかった。

「朱雀組の最高顧問、秋津ミノル。それに、うちのお坊ちゃん。桃華組の秋津ユタカが、栗林に会わせろと言ってる」

 少なくとも、前者は海堂が許さないだろう、と難波は思う。栗林の身柄を巡る朱雀組と青龍会との交渉は白紙になった、と藤浪から聞いている。

 というか、本来であればまず、海堂に諮らなければならない件だ。今回に限って、難波は玄武会から先に接触した。

 ――『友達』らしいからなあ、俺。

 ユタカへの義理をおいても、玄武会との交渉に関しては海堂から一任されているので、多少の勝手は許されるだろう。

 ただ、海堂を通さないデメリットもある。玄武会が、難波の裁量を超えた提案をしてくる場合があるからだ。

 案の定、難波が恐れるバケモノの一人――アマテラスは、カラカラと笑ってこんなことを言い出した。

「そうか、俺の弟と甥っ子がアキラに会いたいって言ってるのか。いいぜ、会わせてやるよ」

「いいぜって……そんな簡単に」

 本気か、と真意を探る難波に対し、右側から冷ややかな返事が返ってきた。

「あんな男のこと、重視してるのはアマテラスと朱雀組だけよ。あいつは『私』を殺そうとしたわ。生かしておく必要はないのに」

 サクヤの口調からは、少女らしい潔癖さが滲む。髪の長さこそ違うが、その表情はまさに『あの女』に瓜二つだった。

 そんなサクヤを、左側からスサノオがからかう。

「相変わらず、血の気が多いな、サクヤは。そんなんだからさやかに嫌われてんだべ」

「どうだっていいわ、『私』の思ってることなんて。スサノオはいつも私の邪魔ばかりする」

「お前を放っておいたら、秋津一家が滅んじまうだろ。俺ぁ長男として、家を守る責任がある」

「悪趣味なままごと遊びね。理解に苦しむわ」

 玄武会が生み出した複製人間同士でありながら、この3人、特にサクヤとスサノオは、犬猿の仲のようだ。

 アマテラスはパンと手を叩いて、話を元に戻した。

「ま、つまり反対意見はなしってことだ。いつでも連れて来いよ。俺も、ミノルとユタカの顔が見たい」

 白い歯を見せて笑うアマテラスに対し、難波は硬い顔付きのまま言った。

「…分かった。会長に確認次第、ここに来る」

 またなー、というアマテラスの大きな声に送られて、難波は足早にその場を後にした。

 あの3人が目の前にしただけで、難波は名状しがたい感情に襲われる。それは恐怖か、はたまた畏怖の念なのか。

 ――死人のコピーと、生きてる人間のコピーが喋ってるんだぞ。犬や猫が喋ってくれたほうが、まだ可愛いぐらいだ。

 タカマガハラは、巨大な母胎であり、墓でもある。どちらにせよ、難波が長居したい場所ではない。

 難波がその場を立ち去ると、穴は再び塞がって、ただの壁になった。仕組みは分からないが、この建物はまるで生き物のような動き方をする。

 その様を見る度に、ここに長居したら飲み込まれる――そんな想念が難波の中をよぎるのだった。


 秋津イサオ、夏目さやか、秋津アカネ。

 3人の血は玄武会に奪われ、3柱の神として現世に蘇った。表の社会も、裏の世界も、彼らを縛る法を持たない。

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