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グッドバイ・ピッチ  作者: カロリーはうまみ
3年目(久松プロ6年目)
149/152

10/31 祝勝会 ♦

ジャパンチャンピオンシップを4勝2敗で駆け抜けたクロウズを待っていたのは、歓喜の宴だった。

リーグ優勝した時もそうだったが、ホテルの宴席をぶち抜きで貸し切ってのビールかけ。

勝利の美酒とは浴びるものであるらしい。

ビニールシートを貼られた段の上で、黒いゴーグルを額につけた野口がビールを高く掲げつつ叫ぶ。


「えー皆さんお疲れッした!日本一!日本一です!も〜特にいうことありません!最高です!お祝いの席存分に!存分に!楽しみましょう!行くぞぉぉぉぉぉぉ!!」


野口の号令一下、黄金の飛沫があちこちであがり、大男たちが騒いで弾む。そして、野太い笑い声が響き始めた。

少しあったあと、メディア関係者が取材を始めるが、同時に彼らからも悲鳴が上がる。

無論それに、悲壮さや不快さを含んでいるはずもない。


「いやーサイコーっす!」

「1年間、いや、ここまでプロで頑張ってきて良かったなと思います!」

「クロウズでよかった!」


多くの選手がそれぞれの媒体の取材に応じ、めいめいに言葉を尽くす。

例えば選手会長で先だって音頭をとった野口。


「いやもう最高。何度も言いますけどねぇ、最高ですよ。一度死んだ身でこんないい思いできるなんて思ってなかったんでねぇ。ほんと、みんなに感謝です」


ビールと涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、それでも野口はなお嬉しそうに笑みをこぼした。

それをメディア各社のカメラマンが逃さんとばかりにフラッシュを焚き、あるいは画角を寄せに行く。

もちろん、情感が溢れているのは野口ばかりではない。


「ヒサ、佐多。お前たちゃ、ほんと、ほんとよく頑張ったよ。俺ァ嬉しいぜ…。なーんもしてやれなかったけどよ…、見返されて、こんなに嬉しくて泣いたこたぁねぇ…」


最近めっきり皺の増えてきた顔を歪めて、蜷川は久松と佐多の肩を抱く。

久松は少しだけ困ったように、だが嬉しそうに笑い、佐多はうっすらと目尻を潤ませながらこれに応じた。

また、騒がしい中、落ち着いた雰囲気で歓談する者もいる。


「篠原、宇多さん、改めてありがとう。ディフェンス面での2人の助言は本当に助かった。来年もよろしく」

「いえそんな。…しかし、現役の時からは考えられない事です。ようここまで来たなっちゅう感じですねぇ」

「何回経験してもいいものですね。来シーズンは手綱を離せなかった奴が旅立ちますから、より一層全体に目を利かせられるよう力を尽くしますよ」


吉永の感謝と労いに、彼の両翼とも言えるコーチ2人がそう応えた。

これに扇と佐々木、それから球団社長の水尾が加わり、それぞれ労いあう。

それぞれがそれぞれの過程を振り返り、或いはこの時ばかり忘れて、時間の許す限り喜びあった。


余談だが、報道各社が翌日朝のニュースで流したのは、どの媒体の取材に対しても「最高です!」をただひたすらに繰り返す池田の姿であった。

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