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第74話 VSアトモス王国軍!パートⅡ


 作戦は決まった。


 ……まあ決まったというか、いつも通りの出たとこ勝負で、相手の出方を窺う以外の選択肢が無かった。


 悠真たちに確認をとったところ「僕も戦います!」と悠真が力強く言った為、戦力として考える事にした。

 まあ……悠真達からしたら、少しでも自分たちが使える事をアピールしつつ匿ってもらっている恩を少しでも返そうと思っているのだろう。


 その為、サーシャ・ネオン・ゴドフ・悠真を一つのチームとして考え、俺が遊撃で何かあった時の対処要因として動くことにした。


 とはいえ、基本的に敵軍と相対するのは『魔王』である刃鬼。

 アトモス王国軍と刃鬼をぶつけ、相手の出方を窺い、その動きの如何によってこちらも対処していかなければならないだろう。

 まあ簡単に言えば、魔王という防衛ラインを越えられ、さらに都市ロムルスの結界を破った者を倒すのがサーシャチームだ。そして、その戦況を見つつ動くのが俺。


 そして、ウラヌス教幹部のミネルヴァさん、クリーン大司教、ルイス司教聖枢機卿は、ウラヌス教総本山に結界を張りつつ、住民の避難や指示系統を担う事となった。


 さて、どうなる事やら。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「というわけで、刃鬼にはアトモス王国軍を抑えてきてもらいたい」


 刃鬼にそうに伝えると、くすっと笑いながら、


「徹様。貴方は私の主様ですよ?――どんな要求でも構いません、命令して下さい。私はその命令のすべてを、この身命を賭して叶えましょう」


 刃鬼は、俺の目をその黒と赤で彩られた独特な目で見ながら、そう力強く宣言する。


 ……だから刃鬼さん。

 重い、重すぎるんだよ!

 一体君は、どこの武将なんだい?!

 

「……刃鬼、アトモス王国軍を抑えて都市ロムルスに近づけないようにしろ。ただし人族はなるべく殺さないようにしてくれ。『女神の加護』持ちの吸血鬼は見つけ次第倒していって構わない」


「はっ!」


 刃鬼が跪き首を垂れる。

 

「……ただし、一番高い優先順位は、刃鬼……お前の命だ。お前がヤバくなったら、アトモス王国軍の人族を皆殺しにてもいいし、加護持ちを無視して逃げても構わない。絶対に生きて俺のところに戻って来い」


「……はいっ!!」


 刃鬼の体がビックっと震えた後、先程より喜色な声で返事をした刃鬼。

 それと同時に、赤黒い魔力が刃鬼の体を包み込み、3秒程でその魔力が晴れたと思ったら、悠真と対峙した時と同じような花魁風な格好になっていた。


 やっぱり、間近で見るとその衣装エロいな。

 そんなエロそうな刃鬼は、妖艶な笑みを浮かべ、


「では――行って参ります!」


「ああ、頼んだぞ!」


 俺がそう言うと、刃鬼の影が赤黒く変わり、その中にずぶずぶと足から落ちていった。

 




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇





「時間だな……。進軍を開始しろ」


「はっ!……進軍開始―!!」

「進軍開始だー!歩兵から順に進ませろ―!」

「旗を掲げ!」

「第1歩兵から第7歩兵まで行かせろ!」

「次に、魔術部隊整列!進め!!」


 布陣が終わったアトモス王国軍、その後方で飾り立てられた馬に乗り指示を出す男。

 その男は、もともとアトモス王国軍の軍部では、取り立て目立つ事の無い男であった。しかし、アトモス王国聖光騎士団の隊長や魔術部隊の隊長がアトモス王国……もとい『女神教』に反旗を翻し、自分たちの部隊を連れアトモス王国から逃げた事により、気が付いたら指揮官位ついていた。


 本来であれば、軍の総大将として軍を指揮する事なんて、自分には荷が重い事を理解しながらも、人を動かす事が出来る権力に次第に毒されてしまっていた。


 その為、分不相応な将軍に任命された時も、深く考えはしなかった。……それが、自分の命の灯を早める事になるとは知らずに。


 アトモス王国軍5千の兵は、布陣された陣形を崩さず、そのまま進軍を開始した。

 地響きと砂埃を上げながら、歩兵のスピードに合わせ、都市ロムルスへと迫る。


 そこへ、アトモス王国軍と都市ロムルスの間に、赤黒い水たまりの様なモノが現れる。


 アトモス王国軍の歩兵隊を指揮する部隊長は、馬に乗っていたためそれが見えた。

 しかし、だからと言って、そんな直径1メートルぐらいの水溜まりの様なモノで、この進軍を止める訳が無い。


 そのまま”それ”を無視して進もうとした時、自身の体が震えてくるのが分かった。


 ”それ”に再度目をやると、そこから人型の何かが出て来るところであった。


 ”それ”――魔王が姿を現した時、アトモス王国軍は見えない壁に阻まれるかのよう、その進軍が止まった。



 アトモス王国軍は、その歴史上、ほとんど魔王軍と戦った事が無い。

 それには理由があるのだが、まあ簡単に言ってしまえば、地理的に魔族領から一番離れているからである。


 神である神崎徹が『アルカディア』を運営するにあたり、人族領とエルフ領の間に魔族領を配置し、人族をエルフ領に近づかない様にしたためである。何故なら、一度、元エルフ領(現魔族領)にあった世界樹を人族が燃やし、世界が混沌と化し、邪神が生まれる一歩手前まで行くという大惨事になったからである。


 だから、エルフ領を守るために配置された”魔王”は、物理的に遠いアトモス王国に出向く事は無く、魔王軍が攻めたとしても魔物・魔獣が行くぐらいで、本当の意味での被害は今までなかったのだ。


 ……つまり、アトモス王国軍が”魔王”と初めて戦ったのは、勇者である佐藤悠真と共に来たあの時が初めてだったのだ。


 その時の”魔王”は”勇者”を倒す事を考えていたため、人族のことなど眼中になかった。


 それが今、アトモス王国軍を敵として認識し、相対しているのである。


 アトモス王国軍は、初めて……本当の意味での”魔王”と戦おうとしていた。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



====================

名前  桜ノ刃鬼

種族  鬼人族

役割  魔王

職種  鬼術士・刀剣士

位階  127

筋力  7843(+1000)

体力  5604(+1000)

精神  8005(+1000)

知力  9209

魔力  10190

器用  9081(+1000)

幸運  82

【特技】  

鬼術9 刀術8 体術7 統制6(+3)指揮6 殺気感知6 誘惑6 暗殺5 言語4


【特殊スキル】 

人化 鬼化 魔王(効果 パラメータの変化・人族からの攻撃無効化・魔の付く者を統制により縛る事が出来る)


【称号】   

忠誠心の塊 花魁 大きい おねーさん


数少ない鬼人族の一人。

基本的に鬼族は強さ第一主義であり、その中でも鬼人族は最強を誇る。

桜ノ刃鬼は鬼人族の姫であり、また、神に魔王と言う役割を与えられた者でもある。

現在は、敬愛する神崎徹の命を受け、アトモス王国軍と相対中である。

====================



 刃鬼は、鬼術の一つである『影潜行』を使い、アトモス王国軍の進路上に移動し姿を現した。


 進軍が止まったアトモス王国軍、それを一瞥した刃鬼は、自身の溢れ出る感情に流されるまま、自身の魔力を辺りにまき散らす。


(――ああ……体の底からヤル気が溢れ出る……!今の私なら、邪神だろうと竜王だろうと負ける気がしない……!)

 

 そして刃鬼は、腰に差してある刀をゆっくりと抜く。赤黒い魔力を帯びた刀を地面に向け一閃する!


 ズガッアァァンンンッッ!!!


 と言う音と共に大量の砂埃が舞う。その砂埃が晴れるとアトモス王国軍と刃鬼の間に、一本の境界が出来ていた。


「……人族共。この線より前に出た奴は殺す」


 静かにそう放たれた言葉は、声量的にアトモス王国軍の最前列にしか聞こえなかったはずである。

 しかし、アトモス王国軍5千の兵は、”魔王”が放つ殺気、重圧に飲まれ進軍どころか声を発する事さえ出来なくなっていた。


 アトモス王国軍の兵士達は、生き物として捕食される側である事を改めて認識した。


 十秒程、そのまま時が止まったような静寂に包まれていたが、「ちょっとごめんよー」と軽い感じの声が、刃鬼の存在感に吞まれているいる兵士達の間から聞こえ、件の吸血鬼達が出てきた。


 軽薄そうな男の吸血鬼が手を上げながらやれやれと首を振る。


「かー!やだねえ~。本当に魔王が出やがったよ」


 その後ろにいた真面目そうな奴は、近くの部隊長に命令する。


「おい。魔王は俺達に任せて、他の奴らは都市を押さえろ」


 ぞろぞろと出てきた吸血鬼達。


「くはは!魔王をこの手で殺してやる!」

「――殺す」

「女神様のため……人族の繁栄の為……に!」


 その全員が、刃鬼を強敵と認めながらも、勝てない相手ではないという雰囲気を出していた。


 女神の加護を持った吸血鬼達が、アトモス王国軍を背に刃鬼の前へ出る。


 すると、先程まで息が出来ないほどの重圧がかかっていたアトモス王国軍兵士達は、詰まっていた息をはあーと吐き出した。


 今だ彼等は、体の底から恐怖を感じているが、動けないという事は無くなったようだった。

 このままでは進軍を再開するのも時間の問題であろう。

 

 それを薄目で一瞥した刃鬼は、


「愚かな……。――出ろ『影獣狼』達よ」


 刃鬼の影が、後ろにすーっと広がっていく。

 そしてその影から、高さ2メートル体長8メートルほどの狼に似た何かが10体出てきた。


 その真っ黒な毛並みの狼達は、はっはっはっはっと呼吸をしながら赤い目で刃鬼を見ていた。


「お前達、そこの線を越えてこちらに来た者を食い殺せ」


「バウっ!」


 一番前に居た、リーダーらしき者が吠えると『影獣狼』達は散って行った。


「ちっ、面倒だな……」

「あれ一体一体が相当強いぞ?」

「まあ、魔王を殺せば犬共も消えるだろうさ」


 吸血鬼達が、刃鬼を見据えながら戦闘体制に移行する。


(ふーん?吸血鬼のくせに、私の統制が効かない……か。つまり、吸血鬼の親玉は私と同等か、徹様と同じような存在……。要らないわね。――この世に神は一人で十分!とりあえずこいつらは皆殺しね)



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