第70話 見定める者
バタンという音を聞きながら、出て行ったクリーン大司教とミネルヴァさんの事を考える。
基本的に、脅しをかけてくるという事は、今のところはそう簡単に害してくる事は無いと思う。が、絶対とは言い切れないのだが、まあサーシャとネオンがいれば問題ないだろう。
「神崎さんありがとうございます!」
いつの間にか悠真が近くに居て、お礼を言ってくる。
「ん?司教聖枢機卿の事?」
「はい!」
一応約束したしね。
それに悪い人でもないし。
すると司教聖枢機卿が、俺の前で跪き口を開く。
「数々の無礼をお許しください。何も知らなかったとは言え、神の御意志に背き、さらに、偽の神をその座に据えようとした、この愚か者に罰を」
まあ普通の宗教とかなら、絶対にアウトだと思うんだけど、俺が作った宗教じゃないしな。
それにこう言っているけど、神の目では、本当に俺が神かどうかまだ疑っているし。
「ルイス・キルングス」
「はっ」
「お前は神の行いを疑い、自身の行いで、ウラヌス教を混乱せしめた。それは、ウラヌス教にとって罪だろう」
「はっ!」
悠真とミレイユ王女の息を飲む声が聞こえる。
「しかしそれは、人族をより良く導こうとした結果だ。その意思は、私の意思に反してはいない。だからお前には、俺の行いを疑い、見定める役目を授けよう」
ルイス枢機卿は、顔を上げ、目を見開き驚いた顔をしていた。
そしてさらに身をかがめ、
「承りました!」
と、承諾の意を示した。
こんな感じでいいよね?
少しは威厳っぽいのでてたよね?
それにしても、正直しんどいわー。
自分が、本当の意味で神じゃない事を知っているから、ストレスがぱない。
というか罪悪感ががが。
でもこの世界、女神教に対応する為には、”神”という役割を持った人が、アルカディアの住人の前で、指揮を執る必要があるのかもしれない。
そして、チラッと司教聖枢機卿を神の目で見ると、
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名前 ルイス・キルングス
種族 人族
役割 見定める者
職業 司教聖枢機卿
ウラヌス教、位第2位司教聖枢機卿であり、敬虔なウラヌス教徒である。
人族の歴史を調べていくうちに、本当に”神”というものが居るのかどうかわからなくなり、ならばいっそ、神を作ってしまえばいいと考え、アトモス王国でウラヌス教の秘儀を改良し、異世界から神になれる者を呼んだ。
ゆくゆくはその者、佐藤悠真にこの世界の神になってもらい導いてもらいたいと思っている。
アトモス王国に命を狙われ、勇者たちと逃げだし、ウラヌス教に保護を求めた。
現在は、ウラヌス教が信じている神崎に対し、疑いの目を向けていたが、本物かもしれないと思い始めている。
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枢機卿のステータスに、役割が付随していた。
もう一度言おう。
枢機卿のステータスに、役割が付随していた。
……これは、ゲームのシステムには無かったぞ。
ゲーム上のいわゆる役割は、決まった雛形があって、それを多少変更するぐらいのゆとりは有ったが、新しく新規の役割を作った事はない。最低限俺はやった事がない。
それとも、実はゲームでも出来ていたのだろうか?
まあ、取り敢えずアレだな。
「悠真。ちょっと話がある行くぞ」
「え?あっはい」
「ルイス枢機卿は、この男部屋で今日は休んでください。王女様は、刃鬼に着いて女子の部屋で休んで下さい。まあ、そんなに遅くなるつもりは無いですが」
そして、刃鬼に向き直り、
「なんかあったら、上空に合図を打ち上げてくれ。すぐ帰ってくる」
「承りました」
悠真を連れ、クリュチェフスカヤ山の山頂に向かう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
今日も色々あったが、すでに日は落ち、地球とは違った幻想的な夜空が広がっていた。
俺と悠真は、座りやすい岩に座り、地球では見られない青い月みたいな物を見ていた。
「神崎さんに、一つ聞きたいことがあるのですが、いいですか?」
「ああ」
「神崎さんが神様なら、僕の元いた世界に、僕を返す事は出来ないんでしょうか?」
俺は、眺めていた月から視線を切り、悠真に振り向く。
「無理だな。というより、それに対する答えを、今から話さなきゃならん」
悠真は、ハテナマークを顔に浮かべながら、俺を見る。
「悠真、俺も地球から召喚された普通の人だ」
「はいぃぃぃぃ!?」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ああ……成る程。納得です」
俺が知り得ている情報の、大半を悠真に話した。
正直、この世界にこれだけ長くいて、アルカディアの住人に、君たちゲームのキャラクターだよ?なんて言いづらいし。
それを思えば、悠真は唯一、ゲームの概念も理解している存在だしね。
いや〜、誰かに色々相談したかったんだよね。
「まあそんなわけで、俺は、地球に帰る為に行動していたんだよね」
「この世界がゲームだったなんて」
悠真は遠くを見ながらそう呟いた。
「んーそれもなあ、よく分からないんだよ。確かに、ゲーム時代の名残がめちゃくちゃあるんだけど、リアル過ぎるし」
「え?でもヴァーチャリアリティのゲームなんてあったけっな?僕知りませんよ?」
「ん?いやだいぶ前からあるだろ。仮想現実フルダイブ型なんて」
「え?無いですよ!そんなのアニメの中だけですよ!」
「え?」
「え?」
しばし悠真と見つめ合う。
決して、そんな関係では無い。
「悠真」
「はい」
「お前がこっちに召喚された時、西暦何年だった?」
「えっと、2018年でした」
お前何言ってんだ?みたいな顔で、俺の事を見る悠真。
何というか、みんな俺に対する態度おかしくない?
「……そうか。ちなみに俺は2091年だ」
「え?マジですか!」
驚愕の表情、目と口を大きく開く悠真。まあそうなるわな。
「うんマジ」
「「……」」
時間がズレているという事は、俺と悠真の地球も同じでない可能性があるな。
並行世界の、別の歴史を辿った地球とか。
まあ並行世界かどうかなんて、現状わかりませんけど。
「まあ……アレだな。俺たちは違う世界から召喚されたようなものだな」
「そう、ですね」
「とりあえず、俺は召喚されてから、この世界が何なのか?そして帰れるのか?を調べながら旅していたんだよね」
ここ最近は、竜王メフィルナーガをどうするか?を考えていたけど、いい案が思い浮かばなくて、何も出来ていなかったけど。
「悠真はどうする?元いた地球に帰りたい?」
悠真を見ると、下に顔を向け考えているようだった。
「僕は、その、うーん……帰りたいわけでは無いんですが、両親に無事でやっている事を伝えたいとは思っています」
「あ、そうなの?」
「はい。そのミレイユの近くに居たいので」
そう言うと悠真は、少し顔を赤らめ下を向いた。
いや、男のソレ見ても嬉しくも何とも無いからな?
惚気やがって!
「ちなみにさあ、本当ヤッたんだよね?」
「えっと、その、はい」
「ふむ」
ゲームでは、その仕様は無かったから、この世界での滞在が伸びれば伸びるほど、無意識的に、この世界でも出来ないんじゃね?と思いながら過ごしてきたけど。
そうかあー。ゲームと違ってヤレるどころか、下手したら子供も出来るのかな?
それにしても、アルカディアに召喚された当初は、この世界は割とリアル世界だと思っていたから、風俗に行こうとして、土下座させられたけど、アレが無ければ普通に出来たのか。
ここ最近は、ゲームの要素が強く出ていたから、なんか、リアル過ぎる仮想現実内だと思っていたが……。
やっぱり、ゲームが現実になって、それで召喚されたってのが、一番可能性が高いのかな?
……なんかアレだな。
今まで、サーシャにしろ刃鬼にしろ、ゲームキャラクター的な感じで考えていたから、あんまり性的な感じで見ていなかったけど、そうじゃない事を知ると、アレだな。うん。
まあ、この辺は成るように成るよね!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
昨日はあの後、悠真との会話を切り上げ、部屋に戻った。
帰ると、ミレイユと刃鬼は部屋におらず、おっさん2人が風呂に入り終わったあとだった。
いや別に2人で入ったわけでは無いが。
悠真と代わりばんこで風呂に入り、明日からの事を考え……無いで寝ることにした。
俺が考えても、あんまり意味ないだろう。
ウラヌス教の事なんか、俺が考えるより、クリーン大司教やルイス枢機卿、ミネルヴァさんが考えた方がいいだろう。
アトモス王国や女神教なんかは、成るように成れだし。
そして、起きたら(踏まれたら)いつもの様に問題がやって来ていた。




