表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/85

第71話 神になる決意


 アトモス王国から西に行くと、帝国領に入る。

 

 その帝国領の端に位置するクラニット王国。

 山間にあるその小国は、帝国とアトモス王国の緩衝国として、帝国からの庇護を得る事により、アトモス王国から狙われることもなく、存在していた。


 そのクラニット王国は、山と山の間に堅牢な砦を二つ所持し、仮にアトモス王国から戦争を吹っかけられても、数ヶ月は耐えることが出来る軍備があった。


 帝国にとって、クラニット王国が背を守ってくれることから、獣人族領を攻める事が出来るのだ。


 そんなクラニット王国に、ここ最近、人が集まっていた。


「おい、そっちはどうだ?」


「問題ない……とは言えないが、何とかなるだろう。食っていくだけなら問題無いんだがな」


 安さが売りの食堂の一角で、アトモス王国聖光騎士団の隊長が、安っぽい鎧を身に付けながら話していた。


 その相手は、アトモス王国軍の魔術部隊の隊長であった。


「こっちはキツイな。そもそも家族がいるやつも多い 。そういう連中は、アトモス王国に反旗を翻す事なんてしないだろうしな」


「ある程度の人数は集まったが、あの化け物達を倒すのは、現状無理だな」


 と聖光騎士団元隊長は、そう結論付けた。


「ああ……。せめて勇者がこちらに付いていたらな」


「悠真か」


 そう言うと、元隊長は顎に手をやり、その無精髭を撫でながら口を動かす。


「なんとか、ロムルスに逃げ込んだらしいが……な」


「ああ、アトモス王国軍がロムルスに向かったしな。それを、悠真がどうするかだな」


「出来れば戦わずに逃げてもらいたいのだが」


 難しいだろうと2人は思う。


 ミレイユ王女と、そういう関係なのは周知の事実であった。

 だから、王女を見捨て一人で逃げる事はしないだろう。だが悠真一人で王女を守りながら、あの軍勢から逃げる事は不可能に近い。


 むしろ、ロムルスによく逃げ込めたものだと思っている。

 

 さらに言えば、アトモス王国軍と戦いになって、勝つ事なんて無理だろう。


 この先、悠真が強くなる事は間違いない。

 だが今の悠真では、アトモス王国に巣食ってしまった化け物達を、倒す事は不可能であろう。


 一体二体ならいざ知らず、何十体にも襲われたら、勇者といえどどうしようもない。


「まあ俺たちも、戦力を集め、機を伺うしかないな。正直、女神教と戦える国や団体があるとは思えないが」


「そうだな。この先世界はどうなるんだろうか?」


「――さあな」


 と2人は、肩を竦めながら、冷たくなった残りの食事を片づけるのであった。

 



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 昨日私は、シスターのローブを羽織り、シスターミネルヴァとクリーン大司教の後について行きネオンと共に護衛をした。


 こちらに殺意を抱いたら、ネオンの特技である殺気感知により、相手の行動より早く気付く事が出来るだろう。

 

 クリーン大司教達は、すぐに各国の使者を応接室に呼び、ウラヌス教はウラヌス教のままいくという事を伝えた。


 各国の使者は、


「バカな!」

「その意味が分かっているのか?」

「知らないですよ?」


 と口々に、上から目線で不平をもらしたが、クリーン大司教が笑みを崩さず、


「何か問題でも?」


 と言ったところで、使者達は諦めたようだ。


 そもそも今回の使者達は、自国の方針を伝えに来ただけであり、交渉する訳ではないのだから、ウラヌス教の考えに対し、何を言っても意味はないのである。


 その後、クリーン大司教たちは、ウラヌス教の主要なメンバーで集まり、これからの事を少し話し合い、身の回りに気をつける事を伝え解散した。


 基本的には護衛を増やし、私の神聖魔術による結界を総本山の建物に張り、極力1人で外に出ないようにすることが決まった。


 私とネオンは、その話し合いが解散した後、結界を張って部屋に戻り、そのまま寝る事にした。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 そして翌日、いつもの様に目が覚め、礼拝堂に向かい朝のお祈りを済ます。


 神崎さんとの旅路では、お祈りはしていなかったけれど、元聖女がお祈りしないのは、ここでは、さすがに体裁が悪いので、この総本山でお世話になっている間は、ウラヌス教徒と同じ様な生活を送っている。


 すると、バタバタと周りが慌ただしくなった。


 下級神官の方が、近くを通ったので、呼び止めて聞いてみる。


「あの、何かありましたか?」


「え?!あっはい!そ、それが、南から数千人規模の軍隊がこちらに向かって来ていて!」


「え!本当?」


「はい!物見の話では、アトモス王国の国旗が掲げられていたとか」


「分かった、ありがとう!」


 と、目で行っていいことを伝えると、彼は走って行った。


 私も、早足で神崎さんのいる部屋に向かうのであった。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 男部屋に、主要メンバーが集まっていた。


 俺は、起きたばかりの体を伸びをしてほぐし、冷たい水で顔を洗い、頭をスッキリさせる。


「ウラヌス教の人達は、食堂で会議中なんだろ?俺達もそこに行って、どうするか聞かないとな」


「そうですね」

 

 サーシャに起こされた後、大体のあらましを聞きおえたが、俺達だけの問題ではないため、ウラヌス教の人達と話すことにした。


 俺は、換装で旅人モードの服装に着替え、勇者一行も連れて食堂に向かう事にする。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 食堂では、侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論がなされていた。


「アトモス王国軍は何と言って来ているんだ!」

「いえ、まだ何も」

「普通に考えたら、既に相当な侵害ですが」

「都市ロムルスに、あれを相手にする程の軍備なんてない事は、あっちも分かっているだろうに」

「ウラヌス教がそのままいくという方針なんて、あちらが使者を送った時に想定していただろうに……。それなのに、大した御題目もなくここに攻め込んだら、さすがに世間が黙ってないぞ」


 そして、俺たちの姿を見たクリーン大司教が、手を叩き、議論を中断させる。


「皆さんお静かに!とりあえずは、アトモス王国が何て言ってくるかによりますね。その間に、ある程度の方針を決めたいと思います。神崎さんもよろしいですか?」


 とクリーン大司教がこちらに話を振る。


 俺は頷きながら、空いている席に座る。

 付いて来た面々もその近くに座る。勿論勇者一行もだ。


 食堂に居る人たちの半数ぐらいから、あんた達何者?みたいな視線を感じる。まあ当たり前ですね。


 クリーン大司教が俺に話しかけたから、最初、俺に注目がなされていたが、勇者一行が座る時には、こいつら誰だ?みたいな感じの雰囲気になっていた。


 そして、


「あ、あなたは司教聖枢機!?」

「な!?」

「今更何故?」


 と、至る所で驚愕の声が上がる。それを、クリーン大司教は手を再度叩き、


「静かに!その事は後で説明します!今は、アトモス王国軍をどうするか?ひいてはウラヌス教の未来をどうするか?……それを、考えなければなりません!」


 そう言うと、食堂にいる人たちを見渡す。


「現在、アトモス王国軍が都市ロムルスに向かっています。相手の布陣が完了するまでには、まだ時間があるとは言え、事態は緊迫しています」


 そして、クリーン大司教の隣にいるミネルヴァさんに、頷きながら合図を送る。


 それを受け、ミネルヴァさんが立ち上がり、


「皆さんには、これが最後の通達です。これ以降、ウラヌス教はどんな事があろうと、女神教に与する事はなく突き進むでしょう。もし、女神教に鞍替えするならば、今この瞬間が最後だと思って下さい」


 たっぷり1分ほど、周りを見渡しながら待っていたミネルヴァさん。

 そして、誰一人として立ち上がる者はいなかった。


 まあこんな状況で、立ち上がることが出来る人はいないと思うけど。


「では……これから、ウラヌス教最高位階にいらっしゃいます神崎さんにお話をして頂きます」


 そう言いながら、こっちを見るミネルヴァさん。

 ていうか、室内全員の視線が突き刺さる。


 あ、やっぱりそうなっちゃうよね……。

 めんどくさいから表舞台に立ちたくなかったけれど、そろそろそう言う訳にもいかなくなってきた。

 

 なんせ、ウラヌス教の教えを”アルカディアの住人皆仲良く!”に変えたの俺だし……。

 

 それに、人族領では、俺の意にそぐわない事がこれだけ起きている中、表舞台に立たずそれらを解決するのは難しいだろうし、女神……メアと対峙するにも、表舞台に居た方がその機会は多くなるだろう。


 まあ、危険度もそれ相応に増すのだが。


 

 ……この辺が、俺とアルカディアの分岐点でもあるのだろう。

 



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 俺は、軽く息を吐き、座っていた席から立ち上がり、室内全体を見渡す。


 やべ!緊張する!


「どうも、今紹介に預かりました神崎徹です」


 室内がざわざわとしだす。

 さらに、ちらほらと俺に対する否定的な意見が飛び出している。


 そりゃあそうだろう、俺でも同じ状況であれば、「お前は誰だ!」とか言いたくなるし、知らないやつの為に命を懸ける事になるなら、文句の一つは言いたくなる。

 

 とは言え、このまま色々説明しても、聞いてくれなさそうなので、刃鬼の威光に縋ろう。


「刃鬼。鬼化してくれ」


 と刃鬼の方を向き、お願いする。


「畏まりました」


 その一言の後、刃鬼は立ち上がり、一歩下がり”鬼化”を発動する。


 すると、刃鬼の体から赤黒い魔力が立ち上り、少しすると、その魔力が刃鬼の体を覆い隠し、刃鬼の体がシルエットだけしか分からなくなる。

 

 「んっ。」と言う刃鬼の艶めかしい声が漏れると同時に、そのシルエットに変化が現れる。頭、もとい額の髪の毛の生え際である場所から2本の角がメキメキと生えた。

 そして角が生えると、刃鬼の体を覆っていた魔力が、刃鬼自身の体へと吸い込まれていった。


 魔力が吸い込まれ、姿を現した時、そこには人族とは明らかに違う”鬼”がいた。


 角が生え、人族で言う白目の部分は黒く、黒目の部分は赤い目をしていて、その髪も人化している時より濃い紫色をしている。さらに、爪もマニュキアをしているかの如く真っ赤で、一目で人とは違う生き物であることが分かる。


 そして一番の変化はその醸し出す空気であろう。


 それは、人族より絶対的な強さを持ち、さらに”魔王”という人族の天敵であるが為の、威圧感であった。


 室内にいた、ウラヌス教の人達は、刃鬼を確認したと同時に、


「な、何だこの悪寒?!」

「何故魔物である鬼が……!?」

「鬼族だと!」

「あ、あ、あ」

「お、お前は、魔王……?」


 俺たちこの事を知らない人達が、口々に騒いでいたが、その中で、刃鬼が魔王であることに気が付いた、一人の漏らした声が辺りを支配し、人々の目線に明らかな怯えが混ざるようになった。


 そして悲鳴や怒声が上がろうとした瞬間、


「騒ぐな」


 と刃鬼が一言発した。


 それは決して大きな声ではなく、さらにがなり声でもなく、ただただ、静かに発せられた一言であった。


 すると、食堂に居た人達は、息を飲むんだり、短く「ひっ!」と悲鳴をあげたり、ビクビクと下を向いたりしていた。


 食堂の中にいた人達は、圧倒的な強者との生物としての差を感じ、死神の鎌が自分の首にかけられている事を悟った。


 ――様な顔をしている。


 ……。


 人族にとって、魔王ってこんなに恐怖の対象なんだな。


 まあこれで、話をしやすくなっただろう!明らかな脅迫ともとれるが。


すみませーん!


ここまで読んでいただいた方々、10か月ほど更新しておりませんが近々、また更新していきますので少々お待ちください!


令和元年


↑書きたかっただけw

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ