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第64話 佐藤悠真の憂鬱


 僕こと佐藤悠真は、転校先の小学校でいじめを受けていた。


 もともと人見知りの性格のうえ、恥ずかしがり屋でもあり初対面の人と話すのが苦手だった。

 同年代の女子と話すと、すぐ顔が赤くなり、キョドッてしまう。そんな性格が本当に嫌いだった。


 小学5年生で、引っ越しを機に登校する学校が変わり、仲良くしていた子達と離れ離れになってしまった。


 僕の事を理解してくれる人が居なくなり、そして、暗黒の2年間を過ごした。



 僕が通っていた中学校は、3つの小学校から集まる公立の中学校だった。


 だからか、あんなに辛かったいじめは、中学校に上がった頃からほとんどなくなり、いじめられていた時に比べれば、ここは天国ですか?というぐらいの平穏を手に入れた。


 でも、ヤンキーっぽい人達や、クラスの中心で楽しんでいる人達の近くには行かなかった。


 だから必然的に、オタク的なグループの人達と行動するようになり、アニメや漫画、ラノベの面白さに僕はずっぽりとハマっていった。


 不良っぽい人達やカースト上位者の人達は、彼女を作ったり男女のグループで遊びに行ったりしていた。

 

 僕は、それを眺めながら、漫画やアニメ、ラノベのヒロイン達に思いを寄せ、二次元の世界にハマって行った。


 でもだからと言って、3次元の女の子が嫌いなわけじゃないし……むしろ興味はあるわけで。


 せめて、高校生になったら彼女とか作りたいし、もっと青春したいと思った。

 その為には、偏差値の低い所だとヤンキーにいじられるから、それなりの偏差値の高い学校に行かなければと思い、勉強を頑張った記憶がある。


 おかげで、第一志望の高校に入学でき、いわゆる高校デビューをした。校則に触れない程度の髪色にして、おしゃれにも気を使った。

  

 顔はフツメンだと思うんだけど、しかし小中学校から続くコミュ障の所為で、高校デビューはと言うと、まあ可もなく不可もなく?彼女は出来ないけど友達が出来るぐらいな感じ?にはなった。


 今は学校で、それなりに楽しくやっているが、本当の意味で心から楽しんでいるかと言うと、何とも言えない。

 まあ別につまらなくもないし、辛くもないから良いんだけどね。


 でも、こんな僕でも。


 必要としてくれているのなら……!




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 僕がアトモス王国に召喚されて一カ月。


 来る日も来る日、打倒魔王の為の戦闘訓練を行わされている。

 

 別に訓練は嫌いじゃない。

 不満なんてあるわけない。


 よく考えてもらいたい。金髪碧眼の超美人で、さらに王女様という肩書を持った人と、知り合いになる機会なんて日本では考えられなかった。

 

 その人が、事あるごとに僕のところに来て、手を握り、頬を染めながら「さすがです!悠真様!」と言ってくるのを、鼻を伸ばしながら喜んでいるなんて事は無い。


 だって、ふっわっと良い匂いするし、男子高校生の夢と希望が詰まった極上の膨らみがたまに当たっている事とか関係無いんだからね!


 だから不満なんて少ししか無い。



 ……。



 この世界に来た当初、僕はステータス的に相当強かったらしく、チートよっしゃあああ!!!!と心の叫びをあげたものだが、今ここに至って若干の後悔もある。


 普通に考えて、魔王と殺し合いをしなくてはならない時点で、後悔の嵐に飲まれそうになる。

 いくら美人に頼まれたからって、殺し合いなんて割に合わなくね?ってつい最近考えるようになった。


 それともう一つの不満が、こう、何ていうのかな?


 僕的に言うと、僕だけしか持ってないチートで、少し考えて戦うとほぼほぼ無敵とかさ、なんか凄い召喚獣(可愛い子)とかなんかあると思っていたわけですよ!


 にも関わらず、俺の持っているチートは、普通の人より高いステータス、並びに地球で得た知識による魔術適正の高さの2つだけだ。


 凄く地味。

 

 まあもちろん、あるに越したことはないんだけど、ぶっちゃけ言うと、異世界転移の割にそれほどいいとは言えないチートであると思う。


 魔王なんか余裕で倒せたり、ステータスがカンストしてたり、この世界の神(可愛い子)に好かれたり、闇魔法とか鎖魔法とか禁呪とか……。


 せめて、城下町で奴隷が売っていて、運命的な出会いをして、そのヒロインが都合の良いように僕の事を好きになってくれたりさ、姫様がメロメロになってくれるとかさ、魔王が実はかわいい女の子で庇護欲を誘うとかさ、なんかあるじゃん!


 もっとこう、チーレム的な事は無いのだろうか?


 せめてさ、ミレイユ王女が僕のこと好きになってくれたらいいのにな~。


 

 ま、それはないよね。あの感じだと、僕をよいしょして上手く使おうとしている感じだよね。


 クラスの女子が、「佐藤君がだけが頼りだからお願い!」って言ってノートを借りていくのと同じだね。僕もテスト前に勉強したいんだけど。


 はあ、ラノベの様な事は起きたけど、結局、僕の性格というかなんというか、いつものようにどうでもいい扱いは変わらない訳か。


 まあいいけど。それが僕だし。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 僕は、性格的にも肉体的にもケンカとかしたことが無い。

 殴られることはあっても、殴った事は無いし、ましてや動物を殺した事もない。


 本当に僕は馬鹿だ!

 あんな美人さんにお願いされて、それだけで舞い上がってしまって命を懸ける事になるとは。死にたくないから、最終手段として逃げる事も考えておこう。


 とは言え、この世界の生き方や戦闘技術が無いのはまずいから、ここで学べることは学んで、いつでも逃げれる準備をしとかないと!



 と言う訳で、戦闘訓練を行っているのだけれど、僕のステータスが高すぎて、アトモス王国軍の中でも僕の相手になる人物は限られている。


 今手合わせしている2人は、アトモス王国軍、聖光部隊の隊長と副隊長だ。


 そしてこの2人の剣術レベルが7である為、純粋な剣での勝負は、剣術レベルが5の僕では相手にならない。


 なんと言えば良いいのだろう?

 詰め将棋の様な感じで、どんどん追い込まれていく感じ。


 2人の剣を、強引に避けたり、受けたり払ったりするのだが、気が付くと、どんどん逃げ道が無くなり、マズいと思った時には後の祭りだ。


 決めの攻撃が繰り出されており、それを、強引に相手より高い筋力で弾こうとしても、隊長達は柳の様に剣でいなし、最後にはカウンターを決められる。


 だだし1対1の戦いだと、僕のステータスが高すぎて訓練にならない。その為の2対1なのだが、正直この2人を相手に剣だけでは勝てる気がしない。


 仮にステータスが同程度であれば、一対一でも、手も足もでなかったであろう。


 まあ、魔法込みで戦えば、まず負けないのだが、それでは訓練の意味がない。


 

 そして。



「はぁはぁ」


「ふむ、もう2人がかりでも、そう簡単には崩せないな」


「ですね。剣術レベルはこちらの方が高いのに、いかんせんステータスの差が相当ありますからね」


 ステータスは僕の方が随分高いはずなのに、涼しい顔をしている隊長と副隊長。


「取り敢えず、俺達の試験はこれで合格だ。これからも、ステータスの高さに奢らず剣の腕を磨くといい」


 隊長が僕に手を差し出す。


「ありがとうございます」


 そう言って僕は、乱れた息を整えながら、隊長の手を掴む。


「次は魔術か?」


「はい。そうです」


「お前は、魔術の方は問題なさそうだよな。ま、頑張れよ」


 そう言うと、手を上げながら副隊長とともに、去って行く隊長。

 それを見送った後、僕は魔術部隊の修練場へと足を向けた。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 この世界の魔術は面白い。


 普通、魔法と言ったら○ラとか○ラゾーマとかファイアーアローだとかドラグ〇レイブとか、エク〇ペクト・パトローナム!みたいな、呪文を唱えて、成功すると決まった形で発動するイメージがある、でもこの世界の魔法はそうではない。


 この世界の魔術は、自分の中にある魔力を、どういう形にしたいかを想像しながらこねこね練っていく感じだ。

 

 おかげで自由度が高く、イメージさえ上手くいけば、特技レベルや魔力量に左右されるとは言え、そのイメージ通りに魔術を発動する事が出来る。


 つまりこの世界の魔術はステータスの魔力、特技レベル、イメージ力があればどんな形でも可能という事だ。


 まあもちろん、物事には限界というものがあり、魔術についても同じ事が言えるらしい。


 つまり、一度に扱える魔力量というものが決まっていて、どんなに魔力量が多くても、一度に扱える魔力の量は青天井ではなく、限界というものがちゃんと存在している。そのため理論上の最強魔法というものが決まっている。


 特技レベル10の魔力500を込めたものが、この世界の最強魔術という事になる。

 ただ、発動した魔術がどういったものなのかによって、威力や効果というものが変わってくるため、”最強”というのも決めずらいんだけど。


 ちなみに、魔力を一度に込められる量というものも、特技レベルによって決められているらしい。


====================

特技レベル 1   50

      2   60

      3   80

      4  110

      5  150

      6  200

      7  260

      8  330

      9  410

     10  500

====================


 こんな感じ。

 

 で面白いのが、人族は、いろんな特技を使えるが、基本、特技レベルは7が上限との事。

 異世界人の僕が、特技レベル7以上になるかならないかは、宮廷魔術師の人にも分からないらしい。

 

 それにしても、まるで異世界というよりゲームの様だ。


 で、これが、魔術の初級とか中級とかの等級別の特技レベル表だって。


====================

レベル初級 中級 上級 特級

1  10

2  10

3   8 50

4   7 40

5   6 30 100

6   5 25 90      

7   4 20 80  

8   3 15 70 180

9   2 10 60 150

10  1  5 50 100

====================


  特技レベル1で10の魔力を込めたものが初級、特技レベルが10にもなると1の魔力で初級という括りになるんだね。


 仮に、特技レベル5の人が70の魔力を使って、魔法を放つと、それは中級以上、上級未満というカテゴリーの魔法になるわけだ。


 まあつまり、この初級とか上級とかという括りは、魔法に対する尺度であって、システム的に決まっているわけではないらしい。

 一度に扱える魔力量は、ゲーム的なのに、こっちは現実的だ。


 

 ちなみに、人族の最高特技レベルが7だから、上級魔法が限界で、特級魔法はエルフやドワーフ、それと魔法が使える魔獣、魔物に限られているらしい。

 

 でも大昔には、人族でも特級魔法を使える人が居たとか居なかったとか。


 後は、エルフやドワーフの血が入っている場合で、純粋な人族でなければ特技レベルの上限である7を超える可能性があるとかなんとか。


 ただ言いたいことは、この世界の魔法は特技レベルによる恩恵が相当高い。

 だから、僕の地味チートもそこだけは超えてもらいたいところである。


 あ、もちろん魔術試験は余裕で合格しました。


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