第63話 女神教
俺がこの世界に召喚されて、4カ月ほど経ったある日。
その使者は唐突に現れた。
……いや、その使者”達”が唐突に現れた。
この日ウラヌス教が大混乱に陥った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ウラヌス教総本山の建物内では、クリーン大司教並びにミネルヴァさん、それと現在の運営に携わっている人たちが”その”対応に追われていた。
「どうなってんだ!?メギドはそもそも宗教を嫌っていただろう!何故今更、女神教なんていう新宗教を国教とするなんて言い出した!!」
「それを言ったら、アトモス王国も同じですね……。あそこはウラヌス教を国教とし、国民の8割以上がウラヌス教のはず、それをいきなり女神教というものに乗り換えるなんて」
「帝国もだ。帝国領の小さな国々では、好きに宗教を決めていたはずだが、帝国自体は皇帝を頂点とした絶対王政をしいていたはずだ。宗教はその絶対王政が崩れるからと、認めていなかったはずなのに……」
「唯一の救いは、商業都市群だな。あそこまで女神教になっていたら、交易を止められて、都市ロムルス……というよりウラヌス教は潰されていたな」
侃侃諤諤の議論が続く。
それまで、口を閉ざしていたクリーン大司教が、
「そもそも女神教とは何ですか?使者が言うには、ウラヌス教とは違い、人族の為の宗教という事ですが」
「使者達が言うには、魔王に怯え暮らしていた我々を救い、人族より下等な種族である亜人たちを、のさばらせないようにするという考えらしいのです」
「今までにもそういった考えの宗教はあったはずよね?何故、今になって女神教だけがこれほど急に力を付けたの?」
そう零すシスターミネルヴァ。
それを、聞き思案するクリーン大司教。そして、シスターミネルヴァに耳打ちをする。
「シスターミネルヴァ、この情報を神崎さん達に。決して、この部屋に連れて来ては行けません。それと、使者達にも会わせないで下さい。神崎さん達の情報が、外部に漏れないように注意してください。我々は我々で、神崎さんたちは神崎さんたちで対応していきましょう」
「分かりました」
そう言うとシスターミネルヴァは、その会議室から出て、つけられていない事を確認しながら神崎達の元に向かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
一方その頃、神崎パーティーはと言うと、都市ロムルスとアトモス王国を繋ぐ街道の近くにある森にいた。
そして相対するのは、佐藤悠真。
勇者その人である。
何故こうなったかと言うと、各国の使者達が来た時を同じくして、刃鬼からこんな情報がもたらされたからだ。
「徹様。周辺を警戒していた魔獣から、報告があったので、その周辺を鬼術で確認したところ、3名の人族が邪族に襲われていました。そして、その内の一人が件の勇者なのですが……どうなされますか?」
と言うわけで、取り敢えず何がどうなっているのか分からないので、そこに行く事にした。
ゴトフを呼び、全員の役割、装備などを確認し、自身の装備が神モードなのを確認する。
そしてそこにいる全員を見回す。
サーシャとネオンが頷き、ゴドフが髭を撫で、刃鬼が微笑んでいる。
よし!準備万端だな。行くか!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
テレポートを何度か行い、件の場所近くにやって来た。
ここに来てすぐ分かったのは、戦闘が行われているという事だ。
勇者である悠真が、美女とオッサンを庇いながら、襲って来る邪族を、魔法で片っ端から吹っ飛ばしている。
しかし、逃げながら、守りながら戦うのは相当難しいのか、ジリ貧なのが見て分かる。
……どうしよう?
介入するべきなのかしないべきなのか。
いや介入する一択だな。
すぐに神の加護を重ねがけし、サーシャ達に目配せをする。
佐藤悠真達を助ける事にする。
まあ、相手が邪族なのであれば一発でケリがつく。
右手に持った錫杖を掲げ、
「神級魔法、浄化発動!」
いつになっても慣れない、魔力がなくなる感覚。
体の内側からごっそりと魔力を持っていかれた。
そのおかげで、辺り一帯に光のベールが広がっていき、邪族と思われる者達は、一瞬のうちに灰と化し、辺りには神聖な空気が漂っていた。
ふう、と一息ついて辺りを見渡すと、悠真たちが放心していた。
目の前で起きた光景を、ポケーと見ていた3人であるが、俺を視界に入れた瞬間、勇者である佐藤悠真が警戒態勢をとる。
「貴方は!?――何故こんな所に大魔王が?もしかしてアトモス王国をあんな風にしたのは貴方ですか?」
佐藤悠真は、自身が盾になる様に美女を後ろに隠し、魔力を練っている。
「うん?ちょと待て。俺らはアトモス王国の事は何も知らないぞ?ただお前らが、邪族に追われていたから助けただけだし」
「嘘をつけ!そんな都合の良い話があるか!!」
佐藤悠真はフーフーと息が上がり興奮しているのが分かる。
神の目で全員を確認してみると、
====================
名前 佐藤 悠真
種族 異世界人
役割 なし
職種 勇者
位階 32 → 42
筋力 4100 → 5100
体力 3200 → 4000
精神 2600 → 2900
知力 2500 → 2800
魔力 4000 → 5300
器用 3400 → 4200
運 50 →55
特技 火魔法7 風魔法7 水魔法7 土魔法7
雷魔法7 光魔法7 闇魔法7 剣術7
鑑定7 体術7 盾術7 算術4 言語4
特殊スキル 可能性 予知 魔殺し
地球という世界から、この地に召喚された人間。
あちらの世界では高校生という身分であった。
アトモス王国で召喚され、アトモス王国第3王女に請われ、魔王を倒すことを決意。
現在は、アトモス王国に反逆者として指名手配されている。
アトモス王国の王様が、女神の手下に殺され、その死体に女神の手下が寄生し死体を操っていた。
それを見抜いてしまったため、アトモス王国の反逆者として追われることになった。
その時一緒に居た、アトモス王国第三王女と司教聖枢機卿と一緒に逃げている。
====================
====================
名前 ミレイユ・アトモス
種族 人族
アトモス王国第3王女として生を受けた。
美貌は母親譲りで、頭の回転も速く政治や統治に向いた性格をしている。
父親であるアンドルフから悠真を手に入れろと言われ、悠真がこの世界に召喚された当初から、世話係として悠真の近くに居る。
現在は、父親が殺されていた事を知り、どうしていいのかわからず放心していたところ、悠真に助けられ一緒に逃げている最中である。
====================
====================
名前 ルイス・キルングス
種族 人族
役割 なし
職業 司教聖枢機卿
ウラヌス教、位第2位司教聖枢機卿であり、敬虔なウラヌス教徒である。
人族の歴史を調べていくうちに、本当に”神”というものが居るのかどうかわからなくなり、ならばいっそ、神を作ってしまえばいいと考え、アトモス王国でウラヌス教の秘儀を改良し、異世界から神になれる者を呼んだ。
ゆくゆくはその者、佐藤悠真にこの世界の神になってもらい導いてもらいたいと思っている。
現在は、アトモス王国がいきなりの方向転換をしたため、アンドルフに真意を聞こうと向かったところ、殺されていたことを知り、悠真たちと逃げている最中である。
====================
っておい!
なんで司教聖枢機卿がここにいるんだよ!
それにそこの美女はお姫様かよ!
……にしても成る程ね~。
悠真のステータスが偽装されている可能性があるから、悠真だけのステータス情報では信じられないが、姫様と枢機卿の場合は、普通の人族だから、俺の神の目を誤魔化すのは難しいはず。
3人ともが、同じ情報という事は信じるに値するかな?
まあ、後は話した感じで決めるか。
「とりあえずサーシャ。そこのおっさんがウラヌス教の司教聖枢機卿らしいんだけど本物?」
「はい」
俺の問いに短く回答をした後、
「お久しぶりですねルイス枢機卿」
一歩前に出ながら司教聖枢機卿に挨拶をするサーシャ。
サーシャを見て、目を見開き驚愕の顔で、
「聖女サーシャ――生きておられたのか?」
「ええお陰様で。もう聖女ではございませんが」
そのやり取りを見ていた悠真は、
「貴方達は敵では無いのですか?」
と、警戒しつつ遠慮がちに聞いてきた。
「だから、そう言ってんだろ」
「話は終わりましたかしら?」
邪族を浄化で綺麗さっぱりした後、周辺の警戒に出でいた刃鬼とネオンが帰っ来た。
「トール!近くにはにゃにもにゃかったにゃ!」
「お、そうかご苦労さん」
と言いながら、トテトテ近くづいて来たネオンの頭を撫でてやる。
しっぽは喜びの仁王立ちだ。
悠真は、魔王である刃鬼を見た瞬間、警戒レベルを上げたが、俺とネオンの絡みを見て、戸惑っていた。
すると、
「悠真。状況的に彼らが言っている事に嘘は無いのではないかしら?私達を害したいのであれば、すでに殺されているし、現状、魔王が貴方を襲って来ないのもそれで説明つくのでは?」
「いやでも、この先敵になる可能性もある訳だし」
「それは考えてもしょうがない事ね」
そう言うと、アトモス王国第3王女はこちらに向き直り、
「皆々様、お初にお目にかかります。アトモス王国第三王女のミレイユと申します。ここが公式の場では無いので、証明する事は叶いませんが」
と、優雅にお辞儀をし自己紹介をした。




