第51話 これからのウラヌス教
魔王軍は、刃鬼の「お前たちは魔族領に帰れ!」の一言で去って行った。
と言っても、ゴブリンやウルフ系の魔獣や魔物は、アトモス王国軍にほぼほぼやられていたので、残った魔王軍は鬼族が300体ほどであろうか。
その鬼族も、赤鬼族の族長、赤銅が率いて魔族領に帰って行った。
そして俺は、魔王桜ノ刃鬼を神崎パーティーの面々に紹介することにした。
刃鬼は、人化の術で人の姿になっており、角や目の色、爪などが人族と同じ様になっていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アトモス王国軍と、魔王軍を一望出来ていた、高台に刃鬼とともにテレポートで戻り、サーシャ達と顔合わせをさせた。
「大魔王様おかえりなさい。えっとその方が魔王……ですか?」
サーシャのやつめ、ニヤッとすんな!
おかしいやろ!俺は神だよ!
「……ああそうだよ。刃鬼紹介しよう。人族の女性がサーシャ、獣人の女の子がネオン、ドワーフがゴトフだ」
と一人ずつ指しながら紹介をする。
「初めまして。徹様の忠実なる僕、桜ノ刃鬼で御座います」
和服にも関わらず、着物的な物の裾を摘み、優雅に西洋風の貴族的な挨拶をする刃鬼。
「獣人族のモルの娘、ネオンにゃ!」
物怖じせずネオンが元気よく挨拶する。顔がウキウキしているな……私興味津々です!って感じだな。
「ドワーフ族のゴドフ・グランツじゃ。鍛冶師をしておる。このパーティーに入ったのもつい先日の事じゃ。まあよろしくのう」
ご自慢の髭を撫でながらそう伝えるゴドフ。
「えっと、人族のサーシャです。神崎さんの保護者?ですかね」
若干ドやりながら自己紹介をするサーシャ。
ま、まあ確かに、養ってもらってますが、保護者の部分必要でしたかね?サーシャさん。
それを受け、刃鬼が爆弾を落とす。
「そうですか……みなさん、今までご苦労様でした。これからはわたくしが、徹様の身の回りのお世話をさせて頂きます。どうぞ元居た所にお帰り下さいませ」
「!?」
「嫌にゃ!」
「ガハハハハ!面白い事をぬかすのう!」
三者三様の反応を示す。
「神崎さん?」
サーシャがクルっとこちらに体を向け、にこにこと笑顔を向けてくる。
こわい!
サーシャは笑顔なのに、後ろに般若が見える!スタンドかな?
「刃鬼、それを決めるのはお前じゃない。……それと、俺の仲間に危害を加えるなよ。その場合、お前でも容赦しないぞ」
刃鬼を見据え、警告をしておく。
何というか、忠誠心が高すぎる故に俺の望まない事をする可能性があるな。
よくラノベやアニメなどで、好き過ぎてヤンデレるヒロインや、主人のために、人を殺しまくる配下など、その感情自体は好ましいのに、結果、デメリットの行いをする場合がある。
勿論、ラノベやアニメだけではなくて、現実世界でもそれは起こってはいる。
よくあるのが宗教絡みであろうか、経典などを深読みしたり、教義を拡大解釈して、それが正しいと他の者にも強要し、思い通りにならないと、その相手を殺す事もある。
挙句に、その行いの責任を神の所為にして、自分は悪くないと本気で思っていたりするからタチが悪い。
「刃鬼……俺は完璧じゃない。だから俺の行いに対して、問題があればドンドン言ってくれて構わない。その為の仲間だ。俺達について来るのであれば、お前の価値観を押し付けるのダメだぞ」
刃鬼は俺の目をじっと見て、その真意を探っているのか、数秒顔を動かさずいた。
そして、ふっと息を吐くと、
「かしこまりました。以後気をつけます。……皆様、お気を悪くさせて申し訳御座いませんでした」
と刃鬼が頭を下げた。
それを受け、サーシャのスタンドも消えた。
オラオラされなくて良かった。
ネオンとゴドフは、それほど気にした様子もなく、「気にするな。」と言っていた。
「ま、とりあえず、ここに居てもしょうがないから、ロムルスに帰って今後の事を話し合おうか」
「それもそうですね」
「ごはんにゃ?」
「がはははは!酒でも飲むか!」
「かしこまりました。」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
都市ロムルスの厳戒態勢は解かれていた。
よくよく話を聞くと、遠見のアイテムがあるらしく、ロムルスから戦況を確認していたらしい。
それでか、アトモス王国軍の司令官たちは後方に居たにも関わらず、相当早い指示を出していた。
勇者でも勝てそうにない相手、通称大魔王が増えたところで、すぐに撤退を指示を出していたが、明らかに早すぎると思っていた。
しかし、戦況をタイムロスなく確認できていたなら納得だ。
で……今は、西の大司教とミネルヴァさん、それと教会関係者が数人いる部屋で食事をしている最中だ。
総本山に避難していたほとんどの人は、自分の家や泊まっていた宿屋等に帰って行った。
そもそもこの町に残っていた人は、ウラヌス教を心から信じていた敬虔な信者や神官・シスター、この都市で生まれ育った人などで、商人や傭兵、冒険者のほとんどは、魔王が向かって来ているという情報を入手して、すぐに都市ロムルスを去っている。
まあ、別にそれが悪い事ではなく、命を大事にすることは大切だと思うが、逃げた者達はここで生きていくことは難しくなるだろうな。
そんなロムルスの現状を聞いた後、クリーン大司教が本題をぶつけてくる。
「魔王軍は、その……もう襲って来ないのでしょうか?」
「徹様が襲えと申されましたら、すぐにでもこの都市は灰燼と化すと思いますが」
と、先程までの着飾った花魁の格好から、落ち着いた着物の格好になった刃鬼が答える。
それを受け、部屋にいるウラヌス教関係者の何とも言えない顔が痛ましい……。
「刃鬼……とりあえずお前は黙っていような。その言い方だと、俺の気が向いたら襲うかもねって脅してる感じじゃん」
やめろ馬鹿!
ただでさえ、”大魔王”って人族には認識されつつあるのに、これ以上俺の悪評を広めるな!
人族に命を狙われたい訳じゃないんだから。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「と言う感じですかね?」
「成程。大体の流れは理解できました」
クリーン大司教が腕を組みながら、色々考えているようだ。
とりあえずいろいろ説明できたと思う。
この世界『アルカディア』に、ウラヌス教が聖女サーシャを使い俺を呼んだこと。
この世界の、”神”が俺である事。
とりあえず、自分の世界に戻るために旅をしている事。
魔王と言う護衛を手にした今、竜王メフィル・ナーガに会おうと思っている事。
食事をしながら、これらの事を話していた。
「次は、ウラヌス教の事教えくれませんか?これからどうする予定なのかも知りたいですし」
クリーン大司教とミネルヴァさんがメインになり、俺らが去った後のウラヌス教を教えてくれた。
ウラヌス教は、聖女サーシャを”神の審判”の刑に処したことにより、その後聖女が現れず、さらに魔王が狙っているという情報が飛び交い、内部から崩壊していったそうだ。
その時に、ゴージャスが教会の幹部を殺害し、異端審問会のベオ・マーダ部隊を連れ行方をくらませたらしい。
「ですので、ウラヌス教の権威は地に落ちてしまったでしょう、ウラヌス教の聖地であるこの山も魔王に狙われたとなると……」
まあ、今までと同じようにはいかないわな。
「まあプラスに考えれば、ゴージャス等の膿を出し切っったと思えば、悪い事ばかりではなさそうですが。それに今ロムルスに残っているウラヌス教徒は、本気でウラヌス教を信じている訳だから、復興自体は何とかなりそうですよね。ついでに、ウラヌスが主神じゃなくて人族だった事でも、公表すればいいんじゃないんですか?」
と、ウラヌス教総本山に飾ってあった、神の遺物なる十字架の装飾品、それを神の目で見た時に知った情報を告げる。
「え?」
サーシャが目を見開き、驚きの顔でこちらを見る。
ほーん聖女でも知らない事なんだ。……まああり得るか、神を信じ切った聖女の方が扱いやすいだろうし。
とそんなことを考えていると、視線が俺に集中していた。
「あれ?皆さんどうしました?」
「いやあの……ウラヌスって人族の方だったのですか?」
クリーン大司教が、ウラヌス教関係者全員の心の声を代弁する。
「――あれ?大司教位の人も知らない感じですか?」
「ええ、大司教になった時にもそんな話は聞いてません」
「私も知りませんでした」
とミネルヴァさんも心底驚いたようで、頬が引きつっていた。
「えっと、1500年ぐらい前の暗黒期に、神聖魔術の浄化を作った人で、ここを拠点とし周辺を浄化して回った人らしい……ですね」
先程、総本山の中にあるウラヌス像確認した時に知った情報である。まあ詳しい事は、また後で教えるとして、
「そのことを知っていた人はいないんでしょうか?」
その言葉にクリーン大司教は、
「聖教皇や司教聖枢機卿は知っていた可能性はありますが。……それとゴージャス大司教も知っていたかもしれませんね」
「ふーん?故意に隠していたのか、気が付いたらウラヌスが主神になっていたのかは分からないですが、僕が知った事でよければお教えしますよ」
1500年も経っていれば、昔の事が徐々に変わる事もあるだろうし、その当時の資料も紛失している可能性もあるから、ウラヌスを故意に主神にしたかどうかまでは分からないな。
「神崎さん。その、ウラヌス教はこれからどうしたらいいですか?」
神妙な面持ちでミネルヴァさんが聞いてくる。
「その、貴方を信仰の対象にしてもかまわないのでしょうか?」
爆弾を落とすミネルヴァさんであった。




