第50話 忠誠心
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名前 神崎徹
種族 人族
役割 なし
職種 商人
位階 10
筋力 7056
体力 7056
精神 7056
知力 10056
魔力 7056
器用 7056
幸運 100
特技 剣術2 交渉3 算術5 言語5
特記事項 特になし
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剣鬼を抜けば、まだステータスは上がる。しかしそれでもステータス的には、魔王桜ノ刃鬼には届かない。
勇者である佐藤悠真とは、ステータス差が倍近く在る為、余裕で勝てるだろう。
しかし魔王と戦った場合は、簡単にやられる事は無いが、絶対に勝てるという保証はない。
とは言え、この二人の戦いをそのままにしておくのは、俺にとって都合が悪いので介入するしかない。
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魔王桜ノ刃鬼が、鬼術で作り上げた無数の赤黒い刃を、勇者である佐藤悠真に向かって放つ。
佐藤悠真はそれを躱したり、盾で防いだり、魔法で迎撃したりしているが、少しずつ傷を増やしている。
そして悠真の注意が、完全に魔王から赤黒い刃に移ったその時、魔王が自身の刀に手を伸ばす。
キセルを腰の帯に差し、左手で刀の鞘を持ちながら、腰を落とし右手を刀の柄付近に置く。
いわゆる”居合”の体勢だ。
そこから、目で見てわかる様に、魔王からズズズと赤い魔力が溢れ出る。
さすがに不穏な空気を察してか、悠真も魔王を確認する。
しかし遅い。
「フッ!」
肺にあった空気を吐き出しながら、刃鬼が刀を一閃する!
鬼術と刀術の複合技である、飛ぶ斬撃を放った。
先程までの鬼術の赤黒い刃は、1メートルほどの刃で、盾でも防げる程度の刃であった。
しかし今刃鬼が放った複合技は、10メートルほどの斬撃で、速さも込められた力も尋常ではなかった。
「!?ッツ、くそがっ!」
目の前に迫る斬撃に回避は間に合わないことを察した悠真は、盾にありったけの魔力を流し、光魔法で強化を図る!
しかし、その程度の守りでは防げないだろう。……当たれば、であるが。
佐藤悠真と斬撃の間に、特級のバリア3枚を発現させる。
1枚目は無残にも割られ、2枚目もひび割れている、そして3枚目には届かなかった感じか。
特級のバリアを割るという事は、魔王が放った先程の技は、特級以上の威力を持っている事になる。
俺は、丁度魔王と勇者と俺とで、正三角形になるような立ち位置の場所にテレポートをした。
いきなりの闖入者に呆ける勇者、何が起こったのか理解出来ていないのか、周りに目を向けている。
そして、助けられたことに気付いたのか、
「お前は、……仲間……なのか?」
と、こちらを窺っている。
そして勇者の反対側に居る魔王に目を向けると、頭を垂れ跪いていた。
その一連の動きの後に、何とも言えない空気が流れ、数秒経ってからざわざわと周りが騒がしくなる。
「お、おい、あの魔王が跪いているぞ」
「なんだ、あの不気味な格好は。それに禍々しいモヤが体中を覆っているぞ!」
「魔王だけでも、倒せるか分からないのにそれより強い化け物が居るなんて聞いてないぞ!」
「魔王の主……大魔王か?」
「いや魔神じゃないのか?」
人族が口々にはやし立てている。
不気味な格好ってなんじゃい!これでも神専用武具だぞ!
「おい……お前!人間の敵なのか!?それとも味方なのか?どっちだ!」
勇者である佐藤悠真が、一歩こちらに踏み出し詰問してくる。その顔は非常に焦った感じだった。
そりゃそうか、魔王一人でもヤバかったのに、その魔王が跪いている相手が出てきたら、普通は絶望しかないわな。
この神モードの存在が何なのか、人族はわからないらしい。まあ当たり前か。
ただ人族から見ると、魔王が跪いている事から、魔王側の”何か”という事は理解できるのであろう。
つまり現状、人族にとって魔王を跪かせる事が出来る敵が増えただけなのである。
しかし悠真的には、その魔王の攻撃から自分を守ったことが、唯一の期待できる判断材料なのだろう。
だから問うている訳だ。「お前は敵なのか味方なのか」と。
さて、この場をどうやって納めればいいのだろう?
とりあえず、魔王と戦う感じじゃないのが救いだな。
そんなことを考えながら、再度魔王を神の目で見ると、
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数少ない鬼人族の一人。
基本的に鬼族は強さ第一主義であり、その中でも鬼人族は最強を誇る。
鬼人族の姫であり、また魔王でもある。
約1000年前に、神から魔王の役割を与えられた。
都市ロムルスに神の意思を感じ侵攻中であり、勇者と戦っていた。
現在は、敬愛する神と出会えたことで歓喜に震えている。
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……うん。
とりあえず魔王は置いといて大丈夫だな。
そして魔王軍、もとい鬼族の戦士たちも、魔王が跪いている事に驚いているのか、現状を見守っている。
それにしても刃鬼が、なんで俺が神だという事を理解しているのかが分からないんだけど。
するとアトモス王国軍に動きがあった。
いくつかの部隊の兵士が、盾を構え勇者を助けに来たのだ。
そして勇者に、
「ここは撤退します!」
「早く!私たちが敵をひきつけますゆえ!」
そう言って俺に向かって武器を振り上げる兵士たちと、勇者の前で盾を掲げながら後退する兵士。
こっちはすぐに落とし穴を作り、向かってきた兵士たちを足止めする。
落とし穴の手前まで近づいてきた兵士たちが足を止め、
「死ね大魔王が!」
「おらぁあ!」
「しっ!」
「こっちだ!大魔王!」
と口々に叫びながら、兵士たちが槍を投げたり、弓矢で攻撃を仕掛けてくる。それを風魔法を放ち吹き飛ばす。
そんな感じでアトモス王国軍と遊んでいたら、勇者は居なくなっていた。
いやまあ、逃げてくのを横目に、兵士たちと遊んでいたんだけどね。
そんな遊んでいた兵士達を、無視し背を向け魔王に歩み寄る。
アトモス王国軍の兵士達は、「今だ!」と言いながら、ここぞとばかりに退却していった。それに対し、鬼族達は追撃せずこの場に留まっている。
先程から跪いている魔王との距離が、声の届くであろう所まで近づいた時、
「ドマレ!!」
魔王のすぐ近くに居た、赤鬼族の族長が一歩踏み出しながら金棒を振り上げ警告を発する。
それを後ろから、魔王が止める。
「やめな赤銅。その御方はお前じゃ敵わないよ。それに私は、その御方に会うためにここまで来たのだから」
「ジ、ジガジ!」
「――赤銅」
二度目の警告とともに、赤い魔力がほとばしる。
「ッツ!……ワガリマジダ。」
赤銅と呼ばれた赤鬼族の族長は後ろにさがる。他の鬼族も、今の光景を目にしたからか静かに成り行きを見守っているようだ。
「お騒がせいたしました」
「いや、問題ない。それと跪かないで普通にしてもらっていいよ」
俺の言葉の意味を考えていたのか、3秒程そのままの体勢であった刃鬼が、顔を上げ俺と目を合わせる。
「……かしこまりました」
そう言うと刃鬼は、スッと立ち上がり俺を見下す。
……花魁の格好だから、履物も厚底の下駄だし、そもそも刃鬼は俺より背が高いと思う。
日本人はツライよ。
「とりあえず、自己紹介をしておこうか。神崎徹、この世界アルカディアの神をやっていた者だよ」
「貴方様から”魔王”という役割を頂いた、桜ノ刃鬼にございます」
そう言いながらにっこりと笑みを見せる刃鬼。
めちゃくちゃ美人さんでした。
人外の色気というのであろうか、鬼の角、目の色、喋ると見え隠れする牙、どれもこれも人には無い物で、それがアクセントとなり不思議な魅力となり、顔立ちと醸し出す色気がなんとも妖艶だった。
「とりあえず、魔王軍は解散してもらっても大丈夫?」
「主よ、命じてください。私はそれに応えるだけです」
……いや、忠誠心高すぎでしょ。
「じゃ、じゃあ、魔王軍は解散で。……それと刃鬼、これからいろいろ説明するけど、”仲間”として接してくれ。」
「……仲間ですか?」
「ああ、多少の敬語とかは全然いいけど、お前を下僕として使うわけじゃないから、もっと気軽に接してくれて構わない。というかお願いします」
日本人の感覚だと、跪いて接せられるとすごく気持ち悪い。
何というのだろうか……?知り合いが、本気で土下座した時の気まずさとでも言えば良いのだろうか。
まあ言いたい事は、過ぎる態度は嬉しく無いという事だ。




