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第47話 魔王軍VSアトモス軍VS神崎軍・・軍?


 人族の中で、一番信仰されているウラヌス教。

 ウラヌス教の歴史は古く、1500年程前の暗黒期と呼ばれる時代まで遡る。


 当時のアルカディアは荒れに荒れていた。

 何故なら、この500年前に人族のある国が、エルフに戦争を吹っ掛け、世界樹に火を放ち燃やしてしまったのである。そのため、穢れの浄化能力が著しく低下し、邪族やコボルトが大量に生まれ、生きとし生きるものに襲い掛かった。


 世界樹を失ってからの500年、その間に邪神が2度蘇り、各地に大災害を引き起こしていた。 

 邪神自体は、神が世界に介入し封印する事が出来たが、その爪痕は大きく、世界中が混沌としていた。


 作物が育ちにくく大飢饉に陥り、病気や呪いが蔓延し、邪族の影に怯えていた。

 人族はさらに、自分たちの国同士で争い、殺し合っていた。

 

 そんな中、穢れを清める事が出来る魔法『浄化』を開発し、各地で穢れを清めていった者が居た。

 その者は、神が修復した山を拠点とし、その周辺を重点的に浄化し清めていったのである。


 その山はクリュチェフスカヤ山と呼ばれ、現在のウラヌス教の総本山のある山であり、また、その者の名を”ウラヌス”と言った。


 ウラヌスは、その浄化した周辺の土地に、戦争孤児や住む場所を追われた者すべてを受け入れた。

 しかし、色んな国の者を受け入れたが為、ここでも争いが起きようとしていた。

 

 ウラヌスは悩み、ここに住むためのルールを設けた。

 敵対する国の者であろうとも、ここに居る間はそれを持ち出してはならず、さらに、ここでは上下関係はなく、元貴族であろうがスラム出身者であろうが、その区別をしてはならないとした。


 この地に集まったほとんどの者が、戦いに疲れ、飢えや穢れに苦しみ、元の場所では”死”以外の選択肢しかなかった者達だ。ただただ、平和に生きたいと願いこの地に辿り着いた。


 そのためこの地に集まった人々はそれを受け入れ、第二の故郷として尽力していったのである。


 気が付くと、村という規模だった所が、町となり都市となっていった。人々が増えるにつれ、ウラヌスという聖人の名も人族領で広まっていった。


 人族領の国々は、ウラヌスを自分の物にしようと動き出すが、ウラヌスはそれを拒否し、代わりに穢れを浄化するから自分たちの後ろ盾になるように迫り、何ヶ国とも渡りをつけた。


 国々は牽制しあい、いつからかウラヌスが居る”そこ”は国々が干渉しない地帯となった。

 その頃になると、何人もの弟子が同じように浄化を使えるようになり、後ろ盾になった国々に派遣し、浄化をしていった。


 いつしか、ウラヌスは聖人として人々に崇められ、周辺の国々からは、その集団の事をウラヌス教と呼ぶようになったのである。


 それから1500年……いつしか”ウラヌス”はこの世界の主神として語られ、ウラヌス教の権力は絶大なものへと変わっていったのである。


 


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 クリュチェフスカヤ山の山道をいて来た俺たちは、中腹にある総本山の門の前で、避難誘導しているミネルヴァさんを見つけた。


「皆さん!壁の内側から出ないようにお願いします!結界を張って魔王軍の侵入を防ぎます。早く敷地内に入ってください!」


 フードをかぶったまま近づき、声をかける。


「ミネルヴァさんお久しぶりです」


 ミネルヴァさんにだけ見えるようフードを上げる。


「!!」


 目を見開き驚いた後、フードを被った俺とサーシャ、そしてその後ろに居た人族領ではあまり見かけないドワーフと獣人を見て、


「リンド司祭!ここの避難誘導をお願いします!私は、大司教にお伝えする事が出来ました!」


 そう言われた、人のよさそうな20歳ぐらいの男性は、


「わかりました」


 と頷き、ミネルヴァさんの様に避難誘導を始めた。


「神崎さんこちらへ」


 と総本山の建物内に案内された。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「シスターミネルヴァ、住民の避難は終わりましたか?」


「いえまだ終わっていません。その前にクリーン大司教お話があります。どうぞ神崎さん、入って来てください」


「失礼します」


 被っていたフードを外し、その部屋に入る俺たち。

 そこには数人の教会関係者と思われる人たちが居た。


 そして俺たちを見ていた、訝し気な視線が一人に集中する。


「な!?聖女サーシャ……?!」

「サーシャちゃん!」

「お、おお!」


 サーシャは、その中で祭服が一番凝っている人のところまで行き、


「お久しぶりです。クリーン大司教様」


 目を見開き驚いているクリーン大司教の前で、お辞儀をするサーシャ。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「――なるほど、(にわか)には信じられませんが、聖女サーシャが生きている事がその証でしょうか」


 今俺たちは、この部屋に居た人たちに事情を説明したところだ。

 人族に俺が神って事は伝えたく無いのだが、サーシャが生きている事を、説明するのが無理ゲー過ぎて大体の事を話てしまった。


 まあ神の目のおかげで、ここに居る人たちがゴージャスの手の者じゃないのはわかっているし、本気でウラヌス教を信じ、良くしたいと思っている人達だったので問題ないだろう。


「というわけで、魔王の方は任せてもらって大丈夫だと思います。まあ、会ったことない様なものだから、どうなるかは分かりませんが」


「魔王に会う予定でしたからね。丁度良かったんですかね?」


「もっとこっそり会うつもりだったんだけどね」


 クリーン大司教が、シスターミネルヴァの方に体を向け、


「シスターミネルヴァは、この事は知っていたのですか?」


「ええ、サーシャが生きている事も、神崎さんがこの世界の神という事も。ドワーフ領での出来事は知りませんでしたが、アルスメットでのゴブリン襲撃事件の、”冒険者サーシャ”の活躍も知っておりました」


 俺が神って事は散々疑っていなかったか?


「そう、ですか……。それなら合点がいきますね。敵は容赦なく叩き伏せる貴女が、聖女サーシャの時は大人しくしていたので、首を傾げたものです」


 クリーン大司教、通称、西の大司教。


 話によると、ゴージャス一派が粛清を行った時にその場に居て、命からがら逃げ伸びたらしい。

 スラム近くで、ケガにより動けなかったところを、ミネルヴァさんに保護されたらしい。


 もともと、ミネルヴァさんとは同期で、先々代の聖女と合わせて3人でよく一緒に居たらしい。

 しかし、先々代の聖女を助けられなかった事が、二人の間に亀裂を生み疎遠になってしまったとの事。


 聖女サーシャ問題も裏でアレコレしていたのだが、結局ゴージャス大司教に押し切られてしまったらしい。


「とりあえず、目の前の問題を片付けていきましょう。魔王軍に関しては、えっと……その”神様”にまかせてしまってよろしいのでしょうか?」


「あー……どうなるか分からないんですけど、とりあえず動きます。それと普通の人として接してくれると嬉しいんですが」


「いや、しかし……」


「気にせんでいいじゃろう。そもそもおんしらの”神”はウラヌスなのじゃろう?なら神崎殿は神違いじゃ」


「クリーン大司教様、あんまり気にしなくて大丈夫ですよ。神崎さんは普通に接して、怒る事とかないですし」


「そうにゃ!トールはご飯くれるにゃ!」


 ネオンさんや、お前はもうお腹空いたのかい?


 クリーン大司教は、ゴホンと咳ばらいを一つして、


「わ、分かりました」


「一応魔王とは話を付ける予定なんですが、魔獣とか魔物は意思疎通できないのと、もし魔王と交渉が決別した場合、戦いになると思いますがどうします?」


 何かあった場合に責任は取れないから、


「もともとの予定では、この総本山に立てこもり、メギド王国やアトモス王国からの救援を待つつもりでした。自分たちの国で争うより、他の国で戦った方が自国の被害は少なく済むはずなので、隣国は魔王軍に狙われる前に倒しに来るだろうと踏んでいましたから」


「そうですか……って事は、ロムルスの町が戦火に巻き込まれる予定だったのか!?」


「神崎さん……」


 サーシャが不安そうな顔でこちらを窺っている。

 

 避難場所を教えてくれたお婆さんみたいな人は、少なからず街に居るのだろう。

 自分が生まれ育ち、その場所が大切で壊されるぐらいなら、そのまま自分も一緒に……という人や、ケガや病気で動けない人、それに付き合っている人など、ロムルスの都市全員が避難出来ているわけではない。


 サーシャは、そういった人たちの事が心配なのだろう。


「う~ん。今から、避難出来ていない人を探し回って、避難させるのはさすがに無理だな。って事は、魔王軍が到着する前に迎え撃つしかないか」


 と考えていると、廊下をドタドタと走る音が向かってくる。


「し、失礼します!あ、アトモス王国からの使者をお連れしました!」


 そう言うと一人の兵士らしき人物が入ってきた。


「失礼します。時間がないので用件だけ述べさせて頂きます。都市ロムルスに向かっている魔王軍、それの討伐にアトモス王国も”勇者”率いる王国軍を向かわせている最中です。近くの平原でぶつかる予定ですので、都市ロムルスを拠点として使う事を了承していただきたい」


「アトモス王国軍がもう向かっているというのですか?」


「はい。ウラヌス教司教聖枢機卿が、我が国で会談をしている最中でしたので、そこで話を決めすぐに王国軍を向かわせたとの事です」


 と、言いたいことを言って討伐軍の兵士は去っていった。


 勇者……?意味というか、そういった存在の概念を”俺”は理解できる。

 この世界で勇者という概念あったんだな。

 英雄の概念はあったけど……。


 それとアトモス王国と司教聖枢機卿……ね。

 この完璧なタイミングでの、アトモス王国軍投入。


 ウラヌス教が内部で問題があり、崩壊する可能性もあるなか、魔王軍に狙われ絶体絶命のウラヌス教、それを華麗に助けに来た、勇者率いるアトモス王国軍。

 

 仮にアトモス王国の思惑通りにいくと、ロムルス市民はもちろん、周辺の国の人達までウラヌス教の救世主として、アトモス王国がウラヌス教を牛耳る感じになるな!


 ウラヌス教がどうなろうとも、あんまり関係ないんだけど、ミネルヴァさんが身を置いている場所と考えるとな。


 くそ相変わらず人族め!


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