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第46話 帰ってきたロムルス!


「私はこの世界『アルカディア』の水先案内人のメアと申します。以後よろしくお願いします」


「よろしくお願いします。神崎徹です」


「何とお呼びすればよろしいですか?」


「じゃあ、……普通に徹?」


「畏まりました。”徹様”で問題ないですか?」


「いや、それは気恥ずかしいから、敬称はなしでもいいんだけど……」


「わかりました。では”徹”とお呼びします」


 ◆◆◆


「あーくそ!あのバカ上司!無理難題押し付けやがって!……なあメア。どうやってあの上司を完全犯罪で消せると思う?」


「そうね~。とりあえず1000通りほど思いついたけど、どういったのがお好み?」


「……いや、今のはなしで」


 ◆◆◆


「なあメア。……昨日彼女に振られちゃったよ」


「徹と結構長く付き合ってなかったっけ?」


「4年ぐらいかなー。アルカディアを初めて3年ぐらいだっけな?その子と付き合ったの」


「そういえば、あの当時の徹はインする時間減ってたもんね。何度、人族を煽ろうかと思ったよ」


「やめて!今でも大変なのに、メアがいじったら一瞬で滅ぶよこの世界!」


 ◆◆◆


「なあメア―お腹空いた。なんか作って」


「無理。さっさとご飯食べて戻って来て」

 

 ◆◆◆


「うう、メフィにブレス吐かれたんだけど」


「あ~……言ってなかったっけ?キャラごとに親密度的なモノがあるからね?」


「え……?何それ俺聞いてないんだけど」


「……あ!人族領で事件発生だってよ!」


「おい……!」



 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 完全没入型仮想現実ゲーム『アルカディア』


 そのアルカディアで遊ぶにあたり、いわゆるシステムさんである、アルカディアの案内人『メア』


 俺は、このメアと長い時間を一緒に過ごした。

 本当に今のAIは凄く、人と会話していると言っても過言ではなく……というか、普通に人として接していた気がする。

 アルカディアにハマってから約10年、神の座に居る時は隣には常にメアが居た。


 彼女と別れた時は慰めてもらい、仕事で失敗した時は愚痴を聞いてもらい、くだらない事から、人生相談までゲーム以外のことを沢山話した。

 勿論、アルカディアのことも話したが、それ以外の方が多かったかもしれない。


 俺の中で『メア』は相棒という位置付けで、常に隣にいた気がする。


 で……だ。


 現在のこの状況下において、メアはどこに居るのだろうか? 

 

 正直エグゼバグを見るまで、その存在を忘れていた。

 ――忘れていたというのは語弊があるか。

 この世界とメアの関係を考られていなかった。


 この世界が、俺の遊んでいたゲームの『アルカディア』と関係がある事は間違いない。しかし、ここがどういった概念の世界なのかがわからない。


 俺の意識だけがゲームデータ内に捕らわれているのか、それとも俺がゲーム内で作った世界『アルカディア』と似たような異世界に召喚されたのか、はたまた俺がゲーム内で作った世界『アルカディア』が異世界にでもなったのだろうか……。


 仮説は色々たつのだが、どれも可能性だけで決定的な何かが足りない。


 ただ言える事は、アルカディアのゲームシステムを支えるAIはどこに行ったのか。

 そして、AIの端末である『メア』はどうなったのか。


 そして”女神”とは一体何なのか。


 いや、……俺の中では、答えが出ているのか?

 ゲームのシステムを司っていたAIの方が、俺なんかよりもよっぽっど神に近いよな……。

 なんせその世界を、システム的に管理していたわけだろ?

 俺はプレイヤーとして、神という”役割”を演じていただけなのだから。


 本来の神である”女神メア”にとって、神という”役割”を持った俺は邪魔な存在なのではないだろうか?


 エグゼバグが、自爆してでも殺しに来た理由が、それで納得できる気がする。


 はあ……。相棒が殺しに来るなんて、結構心にクるな。

 


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「神崎さん。これどうします?」


 その問いに、現実逃避をしていた思考が引き戻される。

 そう、現実逃避をして考えていた事も、現実逃避をしたいところだが、()()についてはしっかり考えた方がよさそうだ。


 それより、この目の前で広がる現状をどうしようか。


 ――魔王桜ノ刃鬼率いる魔王軍VS異世界から召喚された勇者率いるアトモス王国軍の戦いを――。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 遡る事6時間ほど前、俺たちは、ロムルスの孤児院内のいつもの部屋に、テレポートで飛んできた。

 さすがに4畳ほどの部屋に4人は狭い。


「――本当に瞬間移動出来るんじゃな」


「さてと、じゃあちょっくらミネルヴァさん呼んでくるね」


「はい、お願いします」


「にゃ!」


 そう言って扉を開き、ミネルヴァさんが居るであろう部屋に向かう。


 サーシャが行かないのには理由がある。

 孤児院に居る子どもたちに見つかると、危険な目に巻き込む可能性があるからだ。


 ”聖女サーシャ”が生きている事を、子ども達が知った場合、それを周りの人に零してしまって、それがベオマーダまで届いた日には拷問される可能性もある。

 そうじゃなくても、常に嘘をつかせるのもアレなので、ミネルヴァさん以外には生きている事を内緒にしているのだ。


「にしても静かだな……?というか誰もいないし」


 期間は短かったが、何日かお世話になった場所だ、孤児院の一日の流れぐらい理解している。

 礼拝堂を掃除する子や、小さい子たちを面倒見ている年長の子たち、食事の準備をする者など、孤児院のどこかしらに人がいたはずなのだが……。

 

 とそんなことを考えながら、すべての部屋を確認してしまった。

 そして、誰もいなかった。

 ただ荒らされた形跡や破壊の跡はないので事件や事故に巻き込まれた感じではないのだが。


「サーシャに聞くのが早いか」




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「と言う訳で戻ってきました」


 手を顎に持って行き首を傾げているサーシャ。

 その隣で同じことをやっているネオン。

 見た目は同じだが、片や考えている最中、片やただ遊んでいるだけなのは言うまでもない。


「――いえ、わかりません。この時間に人が居ないなんて事は無いと思いますが……」


「それにゃら、町中に出るしかにゃいにゃ?」


 な!ネオンが、か、考えていただと!


「まあそれしかないじゃろうな。他に居そうな場所はないのか?」


「――普通に考えると、本山の方の教会や神殿でしょうけど」


「ウラヌス教関係の方に行くのはねえ……?ロムルス市内を回って情報を集めよう。時間が経ったら帰って来るかもしれないし」


 こくりと頷く面々。

 とりあえずの目的が決まったため、俺とサーシャはローブで顔まで隠れるようにした。

 サーシャはもちろんであるが、一応俺も顔を隠すことにした。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 孤児院から出て、最初に思うのは人が少ない事だ。

 そして人が居たとしても、足早に余裕のない顔で去っていった。


 そんな中、ベンチで休んでいる一人のお婆さんが居た。そこにに向かって歩いていくサーシャ。


「こんにちは」


「はいはい、こんにちは」


「私たちは旅の者なのですが、ロムルスはいつもこんな感じなのですか?」


 そう言いながら辺りを見渡すサーシャ。


「いやいや、本来は賑やかでありながら、平和なところだったんだけどねぇ。ウラヌス教が聖女様を害してしまって、神がお怒りになってしまったんじゃよ……。天罰として、魔王がここロムルスを滅ぼさんと向かって来ているらしいのう。」


「――魔王ですか?」


 チラリと俺の方を見るサーシャ。

 待て、俺は何もしていない。

 無罪だと思います!


「なんでも、相当数の魔獣や魔物を率いているのを、旅のお方が伝えてくれたらしいのう。それで街の者は避難をしているところじゃて」


「おばあちゃんは避難しなくていいんですか?」


「かっかっかっか、もう老い先も短いし、この状況で避難しても遅いじゃろうて。避難するなら、この道を真っすぐ行った山の中腹に、ウラヌス教の建物がある、そこが避難場所だよ。サーシャちゃんが住んでいたそこの孤児院の子らもそこに居るはずじゃ」


「っ!!」


 サーシャの顔は、フードで目元を覆っているから分かりづらいはずだけど、そのお婆さんとは面識があったのか、お婆さんには”サーシャ”であることが分かったらしい。


「サーシャちゃん、すまんかったね。私たちはサーシャちゃんに良くしてもらっていたのに、私たちは何も出来なかった……」


 そう言いながらサーシャの手を取り、頭を下げるお婆さん。

 

「いえ。……私は、あれのおかげで、今生きている事を実感できています。気にしないで下さい」


 その声色は優しく、お婆さんを慰めているようだった。

 その後もお婆さんから色々聞きだせた。

 

 今現在、ウラヌス教は西の大司教が取り仕切っているらしい。なんでも内部でゴタゴタがあって、位が上の人が何人も殺されたらしい。

 

 その事件の主犯として、西の大司教が、正式にゴージャス大司教を指名手配したとの事。

 いろいろ噂話はあるらしいのだが、ゴージャス一派がここに居ない事だけは確からしい。


 お婆さんにお礼を言って、ミネルヴァさんが居る総本山の方に行くことにする。


 さて、ウラヌス教はどうなっているのかな?


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