第45話 閑話 暗躍する人々
「くそ!何故だ!?俺が神の武器職人のはずだろう!?なんで剥奪されなきゃならないんだ!」
ランドギス城の地下にある、牢屋でそう叫ぶギムレット。
そこへ、カツカツと足音が聞こえてくる。
その足音は、ギムレットのいる牢の所までやって来た。
「!?お前はニコラス!おい!お前の言う通りにしていたのに、これはどういう事だ!」
あえてもう一度言おう。
ここは、ドワーフ領の首都と言われるミッドガル、そしてこの牢屋がある場所は、神聖なポロッカ火山の中腹にあるランドギス城の地下である。
そこに、平然と人族がやって来たのである。
「どうと言われましても……ねぇ?確かに私の言った通りにやっていたと思いますが、非常時にまでやっていたらそりゃあこうなるでしょ」
その商人風の男は、ヤレヤレと肩を竦めながら、バカにした態度を取る。
「ふざけるな!お、お前が、お……やれと言ったんだろうが!」
牢屋の格子に近づき、両手で格子を一本ずつ掴みながら怒鳴る!
「まあそんな事はどうでもいい!いいからここから出せ!!俺のおかげでいい武器が沢山手に入ったんだろう!?この先も融通するからさっさと出せ!」
「しょうがないですね~」
そう言いながら牢屋に近づき、いつ手にしていたのか分からない、歪なナイフを格子の間からギムレットを刺す。
「ごふっ!……うぇ?……何で?お、お前……!?」
「神の武器職人じゃねーお前ごときが必要なわけないだろ?俺は口封じに来たんだよ」
「お疲れさん」とギムレットの耳元でささやき、胸を一突きした歪な形のナイフを抜く。
その際、顔に飛んだ血飛沫をハンカチで拭い、ナイフもきれいに拭う。
ドサリと倒れたギムレット、ビクビクと痙攣していたがそれも無くなり、目からは光が失われた。
「さて、撤収しますか。行くぞお前ら」
「「「はっ!」」」
その者たちがいつから居たのか、それは定かでないが、そこには3人の部下らしき者達が居た。
「あ~あ、武器入手の任が中途半端になっちまったな。神専用武具の入手は出来なかったし」
「いいじゃないですか。それでも神専用武具のレプリカは作れましたし、人族領では、決して手に入らないレベルの武具は手に入ったのですから」
3人のうちの一人が声を掛ける。
「それより私は、あの神と呼ばれた存在の方が気になります」
「誰も鑑定出来なかったんだっけ?」
カツカツと4人の足音が鳴る。
そしてランドギス城内を散歩でもするかのように歩いて行く。
何人ものドワーフが彼らとすれ違うが、誰も彼らに反応しない。
「はい。アレが本物の隠匿のローブであるのなら、私達如きの鑑定ではあの偽装を暴けません」
「はぁ嫌だねー……最低限、あの人形のステータスと同等、若しくはそれ以上で、空間移動まで行えるバケモノの相手なんかしたくないよね?」
「しなければ宜しいのでは?」
当たり前のようにランドギス城を出て、ミッドガル市内へと歩いていく。
「そうもいかんでしょ。――触らぬ神に祟りなしって言うけど、この世界の理を作ったのは神な訳だし。人族の為に、その理を壊そうとしているんだから、最悪、神との対決も辞さない覚悟じゃないとな」
その4人はそのまま、ミッドガル市街の雑踏へと消えて行く。
「ま、とりあえずメギドに帰ってから、エルフ族殲滅は考えるとしますか」
その言葉を残し、4人の姿はミッドガルから消え去った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
人族領の真ん中に位置するのが、商業都市ターザン。
そこから東へ進むとロムルスがあり、さらにそこから海を渡って東へ行くとジャポネがある。
ターザンから北に向うと、アルスメットがありその先はドワーフ領である。
ターザンから北西に進むとメギド王国があり、そのまま進むと魔族領がある。さらにその先には、エルフ領が広がっている。
ターザンから南西に向かうと帝国にぶつかり、その先に獣人領がある。
そして、ターザンから南東、ロムルスから南に向かったところに、アトモス王国がある。
遡る事約2カ月ほど前、ぶっちゃけると神崎が召喚された次の日、ここアトモス王国で一つの事件が起きていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「いって~……。ここは、どこだ?」
その部屋は20畳ほどの広さで、石畳の床には様々な模様が描かれている。
その模様が、見る者によっては大規模な魔法陣であるという事がわかるだろう。
その魔法陣の中心には一人の青年が佇んでいた。
ブレザーの制服に身を包んだ、まだ幼さを残すその顔を見ると、彼がまだ高校生であることが分かる。
中肉中背でイケメンではないが、それなりに整った容姿をしている。
呆けた顔をしていなければ、だが。
とそこに綺麗なドレスを着た、20歳くらいの若い女性がやって来た。
「どうか私たちをお助け下さい勇者様!」
「へ?」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「なるほど!つまり、人族領を脅かす魔族、ひいては魔王を倒してほしいという事ですよね?」
「はい、その通りです。こんな誘拐みたいな手段で、こちらに召喚してしまった事は、本当に申し訳けないと思いますが、どうか私たちをお助け願えないでしょうか?」
と頭を下げる第三王女。
先程の召喚された部屋ではなく、豪華なテーブルや椅子、調度品がある部屋で、この国の第三王女と大臣らしき人物、ドアの近くに待機している兵士二名、そして先程から飲み物や料理を運んでくるメイド二名がいる中で説明は進む。
(やべー!マジでラノベ的な事が起こった!今流行りのチーレムとか出来ちゃうわけ?よっしゃーーー!!!!)
「やるのはいいんですけど……俺戦った事とかないんですが大丈夫ですか?」
「はい。貴方が召喚されたときに鑑定をさせていただきました。これがその時の結果です」
====================
名前 佐藤 悠真
種族 異世界人
役割 なし
職種 勇者
位階 1
筋力 1000
体力 1000
精神 1000
知力 1000
魔力 1000
器用 1000
運 50
特技 算術4 言語4
特殊スキル 可能性
====================
「えっと……?これは良いんですか?それとも悪いんですか?」
「ものすごく良いです!というより、—―人族でこのステータスは、すでに最強クラスですね。一般人が100程度、騎士団クラスでも300程度ですので」
悠真に近づき、その右手を両手で握りこみ、
「どうか、我らの未来を示してください」
女子の免疫がなかった童貞の悠真。
年上とは言え、金髪の外国美女が迫ってきて、日本人が対抗できるわけがない。
ましてやそれが、女性経験のない童貞ともなれば……。
「はい!任せてください!!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「で、例の少年は落ちたのか?」
「はっ!王女ミレイユの手腕により快諾せしめたとの事です」
「そうか、下がってよい」
「はっ」
伝えに来た兵士が、政務室から退出する。
「――上手く操れば、この国に益を生み出すか」
白髭を蓄え、豪華な椅子に腰かける50歳ほどの男が、その白髭をいじりながら考えている。
「父さん。アレに王族であるミレイユをあてがうのかい?」
「可能性としてはな。場合によっては、奴隷紋などで縛ってもいいのだが、仮にそれを破れるほど強力な者であれば、逆にこの国を窮地に落としてしまう。今のところは様子見だ」
「……そうですね、わかりました」
金髪の日本人ではあり得ないイケメンが、素直に頷く。
「枢機卿。あの少年はそれほどの者なのか?」
白い法衣に身を包み、手を顎にやりながら、ふむと少し考える枢機卿。
表向きは、アトモス王国に会談に来ているウラヌス教の司教聖枢機卿。
しかし、実際はウラヌス教の秘術である神を召喚する召喚術を、アトモス王国に教え、更に一緒になって行っていたのである。
「理論上は、ですが」
「ふむ。まあステータスは人外であるから、問題はない……か。このアトモス王国が、人族領で覇を唱える為に、活用させてもらうか」
この日から、召喚された佐藤悠真の異世界冒険譚がスタートする!?




