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第43話 式典


 ゴドフが、俺たちの旅に同行する事になってから大宴会はお開きになった。


 もちろん、飲み足りないほとんどのドワーフ達は、二次会へと消えていった。

 やっぱり朝まで飲むのかね?


 サーシャと宿をどうしようか話をしていたら、ランドギス城の一室を借りる事が出来た。


 ドワーフ族にとって、命をかけて戦ってくれた恩人に対する、とりあえずのお礼だそうだ。

 ちゃんとしたお礼は、明日渡すと言っていた。


 そして、あてがわれた部屋は20畳ぐらいの広めの部屋だった。

 床や壁、天井は石造りなのだが、天井は高く、外に面した方はバルコニーになっており、開放感があり、まったく圧迫感の無い造りだった。


 バルコニーは、ミッドガル市街の方を向いており、市街を一望できる場所で、常時であれば壮観な光景だったのであろう。


 今は夜という事もあり、ミッドガルを一望できるわけではないが、今日の襲撃によりそれでも破壊の跡が生々しく残っていた。


「ここは客室なのかな?ドワーフ用のベットにしては大きいもんね」


「確かにそうですね。まあ人族とかも、会談とかで訪れる事があるからじゃないですか?」


「まあそれもそうだな。にしても今日は疲れたな……」


「ふふ、ネオンはベッドに入った瞬間に寝てしまいましたね。宴会中に、物を口に入れ舟を漕いでいる時もありましたが」


 ネオンの方を見ると、スピースピーと鼻が鳴っていた。

 子どもか。


「で、神崎さん。説教の続きですが……」


 おうふ、サーシャさん忘れてなかったのですね。

 ゴドフの乱入で無かった事にしたかったのだが、覚えてらっしゃいましたか。


「はい」


 とりあえず正座をする、本日のMVPである神こと神崎徹選手。


「お願いですから、あんまり心配させないで下さい。あの時私は、本当に心配したのですから」


「すみませんでした」


 あの時とは、エグゼバグに吹き飛ばされ酒場に突っ込んだ時の事だ。

 ネオンもサーシャもあの近くにいたから、もちろん目撃していたらしい。


 サーシャは、誰が突っ込んだのかわかっていたから、頭の中が真っ白になったらしく、その後ピンピンした姿で出てくるまで、何故一人で行かせたのかとか、強引にでも逃げなかったのか等の後悔が凄かったらしい。


 いや、ほんとごめんなさい。


「まあ、無事だったので……というか心配するのが馬鹿らしいぐらい怪我とかないんですね」


 と苦笑していた。


「まあ、ステータス7000の世界がどんなもんかなんて、実際になってみないと分からないもんだよね」


「そうですね。……ただ、もう護衛が必要ないと思うと寂しいですが」


 少し目線を下げ、愁いを帯びた表情をしてそんなことを言うサーシャ。


「でも、神の加護の価値がさらに上がったよね。あの状態になるのに、神の加護5回重ね掛けしないといけないから……」


 エグゼバグとの戦いで、残数が少なくなってしまった『神の加護』その必要性を考えながらサーシャに伝える。


 すると、くるっとこちらに顔を向けたサーシャ。

 その顔はつい数瞬までとは打って変わって、良い笑顔をしていた。


「じゃあ、ちゃんと私を崇めるんですよ?」


 だからなんでやねん!

 俺が神だってば!


 そう思いながらも彼女の前に行き、いつものように土下座をし、ふにっと神の加護をかけてもらうのであった。

 

 


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「神崎さん朝ですよ、起きてください」


 遠くでそんな声が聞こえる。

 昨日は頑張ったからか、頭も体も起きる事を拒否していて、表層に上がった意識が、また暗く深い眠りの底に落ちようとしたその時、頬に何かが……ん?


 いつもの踏まれ慣れた足の裏ではなく、ぷにぷにした感触のある変なものが頬の上に乗っかった。

 そして一拍置いた後「行くにゃー!」という掛け声と共に体重がガッツリ乗って顔が潰される。


「あだだだだだ!」


 すぐさま起き上がり確認すると、ネオンが


「起きたかにゃ?」


 と首を傾げながら、目の前にいた。

 かにゃ?じゃねーわ。

 抗議の目をサーシャに向けると、そっぽを向きやがった。


 話しを聞くと「今日は私が起こすにゃ!」とネオンが張り切ったので、サーシャが「良いよ」と言うと、おもむろにベッドの上に乗り踏んづけたらしい。


 いや、サーシャの所為じゃん!

 いつもやってるから、俺の起こし方は踏んづけるってネオンが間違って学習しただけじゃん!


 ジトーとサーシャを見ていると、


「さて、準備してゴドフさんを迎えに行かないとですね」


 あからさまに話しを逸らした。

 この野郎!


 ゴドフとは、昨日一次会の後に別れた。

 自分の鍛冶場の整理をする、と言って酒瓶を片手に去って行った。


 俺たちの旅に同行するので、当分ミッドガルに戻る事もなく、住んでいた所をたたんで、鍛冶場にある必要なものを持って行くためのお片付け中である。


 いっぱいあるんだろうなー。

 鉄などの鉱石類の素材や、魔物から取れる素材など、鍛冶を行うための素材が沢山ある事だろう。

  

「じゃあさっさとゴドフの所に行って、それから朝ご飯にするか」


「早くいくにゃ!お腹空いたにゃ!」


 ネオンが部屋を飛び出していく。

 あいつは道が分かるのだろうか……。


 ランドギス城を歩いていたら、そこかしこに酒瓶が転がっていた。そして、死屍累々のドワーフ達。

 城の中で働いているドワーフ達は、それらを無視して働いていた。


「おはようごさいます。もう出立なされるのですか?」


「おはようございます。いえ、ゴドフを迎えに行ってまた戻って来ますよ」


「でしたら、戻って来た時に食べれるよう、朝食の準備をしときますがいかが致しますか?」


「じゃあそれでお願いします」


「はい、かしこまりました。行ってらっしゃいませ」


 ランドギス城を出て、城の正門の方を見ると、ネオンが「早くいくにゃ!」と手を振っていた。

 あいつ迷子にならなかったか。


 そのまま鍛冶場街の、ゴドフの所に行く。

 市街を観察していると、そこかしこで建物の修理が始まっていた。


 ミッドガル全体が活気に満ちていた。

 確かに、亡くなった者も居るしケガで動けない者も居るのだろうが、それでも前を向いて進んでいく姿はドワーフ族らしい姿だ。


 そんな光景を見ながら歩いていたら、ゴドフの鍛冶場に到着した。


「おはようゴドフ。準備はどうだい?」


「おう徹殿か。それがのう、住んでる所には大した物は無かったんじゃが、鍛冶場の方の道具や素材などが、なかなか減らせなくての……。どうするか考えていたんじゃよ」


「ふーん……。とりあえず見せてくれる?」


「うむ、こっちじゃ」


 鍛冶場の建物内に入ると、鍛治に使うであろうハンマーやら火の中で鉄を掴むハサミや、金床など様々な道具類と、多種多様な素材が所狭しと並んでいた。


「……これで全部?」


「うむ。一応こっちから順に必要度が……」


 と話してる最中に、全部アイテムボックスにぶち込んだ。

 アイテムボックスさんの容量は一体どれ程なのだろうか? 

 ついでに言うと、座標の腕輪だけは、服で隠せるから常時装着中だ。


「……そうじゃたっな。おんしを普通の人族と思っていたら大間違いじゃな」


「まだ必要な物ある?多分まだ持っていけると思うけど」


「……この建物自体はどうなんじゃ?」


 建物……か、前に大きな岩とかも収納できたから、持てない”物”でも収納は可能なんだけど、”不動産”って物に入るのかな?


「そうえいば、その発想は無かったな。やってみるか!」


 全員が外に出たのを確認してから、収納を発動する。

 すると、なんの障害もなく収納する事が出来た。


 漫画であれば、ヒュンという効果がしそうな感じで、建物がきれいに消えた。

 その建物の跡地は、建物の基礎があったのか、ぽっかり穴が開いた状態になっていた。


「相変わらず出鱈目な能力ですね」


「うん、俺もそう思う」


「ワシの頑張りは一体」


「ご飯にゃ!」


 ゴドフ一人が肩を落としているが、敢えて無視して行く事にする。

 神を脅した罰だ!

 

 鍛冶場の建物内に、道具とかを元に戻すんだろうな……完全に二度手間。

 頑張れゴドフ。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 



 ランドギス城の玉座の間において、現在簡易の式典が行われている。


 本来であれば、豪華絢爛に式典を執り行いたいのだろうが、神崎パーティーが直ぐに発ちたい、という意向をドワーフ族が汲んでくれた形だ。


「ではこれから、鉱石の授与を始める!」


 玉座の隣で、宰相であるルンダが声を張り上げる。

 

「ベヒモスを打ち倒した、ドワーフ族の英雄ゴドフ・グランツ前へ!」


「うむ!」


 式典用なのか分からないが、鎧一色を身にまとったゴドフが、玉座がある一段上がった所に行き膝をつく、そして王がゴドフの前に移動し、宰相から鉱石を渡され、それをゴドフに手渡す。


「ゴドフ、そなたのおかげで、変わる事が出来そうだ」


「――ふむ。精進なされ、王の道はまだ始まったばかりですぞ」


 ゴドフからのその諫言に、嫌な顔せず頷く王。


「ゴドフが帰って来た時に、認められるよう努力するよ」


 その言葉を聞き、満足そうに頷き、頭を下げ退るゴドフ。


「次!人族のサーシャ!」


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