第42話 ドワーフ大宴会。
―――そして、神はドワーフ達に試練を与えた。
ドワーフ達は、国一丸となってこの試練を耐えた。
神はそれに満足し、その国に神聖なる加護を与えた。
神がその錫杖を掲げると、その周辺一帯に、
光輝く雨が降り注ぎ、神聖な空気が広がった。
世界はそれを祝福し、空に七色に光る橋を架けた。
その後、ドワーフ族は幸せに暮らした。
【神の旅行記・ドワーフ篇から抜粋】
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ここ、ランドギス城では大宴会が行われている。
さすがにミッドガル全体で宴会が行われるほど馬鹿ではなかった。
城壁や都市の建物の修復、ケガ人の治療、死者の埋葬等々、やらなければならない事が沢山ある。
本当はミッドガルの住人全員を労うため、国中を挙げての宴会を行いたいのだが、先の理由によりミッドガルの都市を30に区分けし、その1区画の住人をランドギス城に呼び、交代交代で宴会を行う事にしたそうだ。
まあつまり、後30日間はここで大宴会が行われるのであろう。
んで、神崎パーティーもここに居る。
何故かというか、ゴドフのおっさんに連れて来られた。
神級魔法『浄化』を使った後、サーシャとネオンに合流し、話……もとい正座でサーシャから説教をうけている最中に、ゴドフが声をかけてきたのだ。
「おう!おんしらも無事だったか!」
「あ、ゴドフさんも無事で何よりです!」
「ガハハハハ!わしはそう簡単にやられんからのう!……今日これから、ランドギス城で祝勝会が行われる。お前たちも来い!」
俺とサーシャが、この状況で宴会するの?と目で会話していると、
「ご飯はあるかにゃ?」
「あるに決まっておるだろう!そりゃ豪勢な食事がな!」
それを聞いたネオンはドバドバとよだれを垂らし始め、
「行くにゃ!!!!」
ごっはん、ごっはん、と踊り始めた。
行くか行かないかお前が決めるんかい!
まあ俺も、お腹空いたし足が痺れたから丁度良いんだけど。
サーシャと頷き合い、
「なら、招待されようかな」
「ガハハハハ!そうこなくてはな!」
で今に至る。
ここに居るドワーフ達は、あの城門周辺で一番被害の大きかった区間の人達と、国の重鎮、城門周辺で戦っていたドワーフ兵であった。
結構な数のドワーフが亡くなったり、ケガで動けない者や、自分の家や店が壊れた者も居るが、それは後で考えるらしく、この場は楽しそうな雰囲気だった。
話によると、ドワーフ族の葬い方法でもあるらしい。
亡くなったドワーフの事を、酒を飲みながら語り、笑いとばして送り出すらしい。
そして現在、サーシャとネオンはドワーフ達に囲まれていた。
城門周辺で、獅子奮迅の働きをしていたサーシャとネオンの事を見ていたドワーフは多く、馬鹿みたいに人気だった。
「嬢ちゃん達すげーな!屈強なドワーフ兵より多く倒しているんじゃない!?」
「ガハハハハ!普通ならその言葉に文句の一つでも言うのだかな。事実だから何も言えないな!」
「おう獣人の嬢ちゃん!すごかったなあの弓捌き!放てば急所を一撃で貫くなんて、なかなかできる芸当じゃないぞ!」
「いやー人族の嬢ちゃんのおかげで、穢れも傷もすっかり良くなったよ。ありがとな!」
サーシャとネオンの周りに人だかり……改め、ドワだかりが出来ていた。
サーシャは丁寧に答えながら食事をし、ネオンはほぼ無視しながら、ごはんに猫まっしぐらしていた。
なんか既視感のある感じだが、アルスメトットの時とは違い、俺は凄腕の魔術師としてドワーフの兵士達に認知されていた。
「いや〜お前さんの魔法も凄かったな!あの一瞬であれだけの事をやれるなんて、十分化け物だな!」
「ま、あれで魔力が枯れて、その後は、役に立って無いけどな」
「何言ってんだ、あれが無かったら、今こうして宴会なんか開けてねーよ!ガハハハハ!」
てな感じで、馬鹿騒ぎは続いているのだか、やっぱり一番の話題は、
「神様を初めて見たけど、神々しかったな……」
「やっぱり、あれは試練だったのかな?」
「どうなんだろう、な。俺らが頑張っていなかったら、見捨てられた可能性もあったのかな?」
「まあでも神の試練も耐えたし、また俺らの事を見守ってくれるよな!」
「神がまた、俺たちの事を必要としているな!」
「そりゃあそうだろう!?なんせ、神の武具を装備されていたじゃないか!」
「凄かったな!神の魔法!もう俺は何が起きたのか分からなかったよ!」
「あんなに居たコボルトや邪族だけじゃなくて、コボルトの死体で穢れた土地も一瞬で浄化してたもんなー。さすが神!」
「それに、あのへんなバケモノとの戦いもすごかったな!早すぎて何も見えなかったけど」
「神々しかったな……。一つの。絵画でも見ている様な感じだった!」
「わかる!神って感じだったな!」
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と、至る所で”神”についての話がされている。
まあそりゃそうか、特にドワーフ達は、神の武器職人という役割がある種族で、神との繋がりが強い種族のはずなのに、つい最近までないがしろにされていて、不貞腐れてしまっていた種族なわけだし。
――はい、それは私の所為です。
それと話題の中に上がっていたが、俺が放った神級魔法『浄化』は凄まじい威力だった。
魔力を5000使う時点で察する事は出来るのだが、辺り一帯の邪族とコボルトを一瞬で浄化した。
しかも、コボルトの死体によって穢された土地や、ドワーフ達が穢されてしまった部分も浄化したらしい。
見ていたサーシャによると、錫杖を掲げたと思ったら錫杖が光り、そこから光の渦が発生し、辺り一帯に広がっていったそうだ。
しかもエグゼバグの自爆で、辺りに水が吹き飛ばされ広範囲に降り注いだ訳だが、その水が浄化の光の渦に反射して光り輝き、更にミッドガルからは俺の後ろに虹が見え、そりゃあもう神々しかったらしい。
そんな演出をするつもりはなかったのだが、それのおかげもあって神の株はうなぎ登りらしい。
実際は、神の試練のつもりなんてこれっぽっちもなくて、割とその場しのぎの行動が多かった気がするが、まあ勘違いしてくれて、神の株が上がるならそれでいいか。
そんなことを考えながら、ドワーフ達の会話に耳を傾けていると、
「おう!御前さん……探したぞ!ガハハハハ!」
とゴドフが酒を片手にやって来た。
「お!ドワーフ族の主役じゃないか、こんな所に居ていいのかい?」
「構わん構わん!他の奴など、どうでもいいわい!」
いやどうでもいいってあんた……。
この中にあんたらの王様も居るんじゃないの?
「んで?俺なんかを探してたって、何か用でもあったの?」
「おおそうじゃ!忘れるところだったわい!……なに、おんしらの旅に、同行させてもらおうかなと思ってのお」
と言いながら、俺の目を真面目に見るゴドフ。
「いや、ちょっとま「何言ってるんだすかゴドフさん!貴方は神の武器職人でしょうが!ここで最高の武具を作るのが役目でしょ!?」
「そうですよ!確かに、その人族のパーティーに助けられたのは間違いないですが、ゴドフさんがそのパーティーに入るのは間違っています!」
「おいゴドフ!おまえの目的は神の武器職人になって、最高の武具を作る事だろう?なんで旅に出ようとしてんだ?」
俺の事を放置して話が進む。
軍総司令官メキオジフィルがゴドフに近寄り問いかける。
「まあいろいろ理由はあるのじゃが……。強いて言えば、ここにいるよりその方がいいと思ったからじゃよ」
「いや、それじゃ何にも理由になってねーよ。そもそもここの環境以上に、良い鍛冶場なんてないだろ?考え直せ!」
「喧しい!いまさら何を言っておる!!おんしらが何を言おうともワシは旅にでるぞい!」
「阿保か!ドワーフ族で一番腕のいい職人を、そう簡単に出奔させるわけないだろう!!」
ゴドフとメキオジフィルの顔が近づき、メンチを切っている。
この二人、昔からの馴染みで、よく一緒に酒を飲み夢を語った仲であるらしい。隣のドワーフ兵が教えてくれた。
にしても、小さい声で「おいやんのかゴラァ!」とか「潰すぞお前!」っていう声が聞こえるのだが……。
「ま、まあ、お二人とも落ち着いて」
「「お前は引っ込んでろ!!」」
ヒィ!?俺が怒鳴られるの?理不尽!
するとそこに、若いドワーフがやって来て、
「ゴドフ……私からも頼む。残って私を指導してくれ!」
と頭を下げる若いドワーフ。
「――王よ。ワシが教えなければならない事などもう何もない。王が自分の意見を言えたあの時、貴方は変わったのですよ。ここからは悩み、苦しみ、耐えて、周りの家臣と国の者達と共に歩んでいきなされ」
ゴドフが優しい感じで、その若いドワーフ……もとい王を諭す。
って、王様!?
「しかし、まだまだゴドフから学びたい事が沢山あるのだ!」
「ふむ……そうじゃのう。ならこうしよう!神崎殿、おぬしが決めてくれ!」
ぶっは!?その丸投げは違くね?!
まわりのドワーフ達の視線が一手にこちらに向かっている。
こわっ!
するとゴドフが、ニヤッとしながら、耳を貸せというので耳を近づける。
「連れて行くと言わないと、今ここでおんしが神なのをばらすぞい」
バッとゴドフを見ると、
「ちらちらと、ワシの作った六色の杖が見えておったからのう……。今はバレない様に全部外しておるようじゃが?」
な、なんだと……!?
いや、だから神を敬えよ!
なんで普通に脅してんだよ!おかしいだろ!
ジトーと恨みのこもった目でゴドフを見たが、どこ吹く風っていう感じで流された。
これが年の功なのだろうか。
ぐぬぬ……どうする?
この状況で俺が神だとバレのは……めんどくさいな!
「わかったよ……。一緒に行こうゴドフ!」
まあ普通に考えて、この世界最高の鍛冶職人が仲間に居て、俺たちに損はない……どころか、普通なら頭を下げお金を積んで、それでも叶わないような出来事なわけだし。
「っておい!人族!何勝手に決めてんだよ!」
「そうだそうだ!」
「はあ、これだから人族は……」
まあ、こうなるよね。こうなるから嫌だったのにー。
するとゴドフが、
「関係ない奴は黙っておれ!!そもそもワシは、一週間もせずにミッドガルを追い出される身じゃわい!」
喧噪がピタッと止まり、またガヤガヤと話し出すドワーフ達、
「ほれ、これがその書類じゃ。ちゃんと国の印もされておるじゃろ?」
それを見てワタワタし始める宰相のルンダと王様。
「いや、それはギムレットが!」
「バカモンが!他人の所為にするでないわい!これはお前達が蒔いた種じゃわい。責任を取る、という事をこれを機に学べばは良いじゃろ」
と、そこに居た国の重鎮達を見渡しそう告げる。
問題ないな?と目で確認を取る。
それに対して、反対を言える者はいなかった。
変に拗らせて、一生戻らん!と言われる訳にも行かず、渋々黙認する重鎮達。
そんな訳で神の武器職人、ゴドフが仲間になった!




