第30話 ミッドガルへようこそ!
数時間、寂しい林で食料を確保していた。
先に進もうかと思うが、大切なことをネオンに尋ねる。
「でどうなん?ネオンの気配察知で、昨日の帝国人はこっちに向って来てるのわかる?」
「来てないと思うにゃ。あれだけの人数にゃら、ここからでも道の音は拾えるにゃ」
「まだ安心は出来ないけど、ミッドガルまでの道のりはちょっかいかけて来ないかな?」
「大丈夫ではないでしょうか。ガルガンから先は、割と魔物の強さが上がりますし、あのレベルではきついと思いますよ」
ふむと考える。そういえば、
「なあネオン、メギトからどうやって来たんだ?」
「メギトと魔族領の境を通って、山を越えてきたにゃ。山を越えたあたりで、待ち伏せにあって毒の攻撃をくらったにゃ。その後はあのまま洞窟に逃げ込み、気を失ってたにゃ」
「待ち伏せは二人?」
「そうにゃ」
「索敵には引っ掛からなかったのか?」
「あの時は、追われて余裕がにゃかったのと、索敵に引っ掛かたのは魔獣の類と思っていたにゃ」
なるほど……なら大丈夫か?
ネオンは、瞬発力はあるけど持久力はそうでもない。
だから、最初に逃げ切れないと、ずるずる追われて人海戦術などで足をすくわれる。
今までの話を総合すると、メギトで逃げたはいいけど、追われてしまい振り切る事が出来ず、さらに先回りをした二人に毒攻撃をくらい、帝国の奴らは弱るのを待って捕まえようとした感じだったのだろう。
そして、そこに俺らが介入したと。
それなら、ネオンの索敵をすり抜ける何らかの特技や、魔法がある可能性も捨てきれないけど、今追って来ていないのであれば、問題はなさそうだな。
じゃあまあ、旅を再開しますか!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ペットを拾ってから、2週間ほど経った。
3人の旅そのものは順調である。
ミッドガルに着くまであと少しの所まで来た。約1ヶ月の予定だったが、サーシャとネオンのおかげで、一週間程短縮してここまで来れた。
ネオンが入ったことにより、索敵、魔法、近距離戦とバランスよくなり、戦闘の効率も上がった。
この辺に出る魔物、魔獣は岩山を飛び跳ねているヤギ系、上空に居る羽を広げると3メートルを超える猛禽類、岩と岩の隙間に居るサソリ系が主な種類だろう。
たまに地竜が出るらしいがまだ出会ってない。
「うにゃ、空から鳥来るにゃ!」
その掛け声とともに神の加護をかけるサーシャ、メイスを右手に持ち、来るであろう猛禽類を探している。
俺は貴重な神の加護をかけ、神聖魔術中級のバリア準備する。
何度目かの襲撃で、空からの急滑降攻撃は中級バリア×3ぐらいで破られることなく、壁に激突した感じで目を回しながら地面に落ちる事がわかった。
最初は破られて、ギリギリ避けたけど危なかった。
あの鉤爪で掴まれたら、簡単に胴体に穴が開く。
今回の襲撃でも想定内の突進力だったらしく、バリアにぶつかり地面に落ちていった。
普通の鳥ならこの時点で死んでいるのだが、さすが魔獣タフである。
すぐさま翼を羽ばたかせ、グギャ―と言いながら風魔法を使い飛ぼうとする。
しかし、それをさせない存在がいる。
そう!我らがカチ割りマシーンサーシャである!
神の加護で上がった筋力による、爆発的なスピードで突っ込むと、猛禽類の頭めがけてメイスを振るう。
当たった瞬間、頭が破裂し体は墜落した。
その体はビクンビクンと意思を感じられない動きをしている。
さすがです。
一応、落ちた場所によってはネオンも爪で首を落としている。
この猛禽類型の魔獣の嫌なところは、逃がすと仲間を連れて来る事があるので、襲われたときは、逃がさないことが大切である。
猛禽類型の魔獣は、手ごわいと感じると大空を旋回しながら、仲間を呼び寄せる。
おかげで10匹ぐらいからなる急滑降波状攻撃を食らった時は、流石に面倒くさくてテレポートで逃げた。
まあと言っても、3人での旅で逃げたのはそれだけで、後は余裕で対処できていた。
ドワーフの町ガルガンを出てから、もう一つドワーフの街を過ぎた。
そこは酒蔵と言えば良いのだろうか、ウイスキーのような、度数の高いアルコールを作っていた。
穀物や果物で作ったお酒を、蒸留し、ドワーフ好みの度数の高いお酒にするのだ。
ドワーフ領に三か所ある、酒造りの町らしい。
名前はウイシュケで、蒸留をメインに据えた町である。
この町でも少し警戒していたのだが、待ち伏せの類はなく、酒や食料などを買い込んだ。
ただ、長居してもしょうがないのですぐに立ち、今に至るのである。
ネオン追跡部隊は、影も形もないのだが、帝国がネオンを使う作戦を辞めたかというと、そうは言い切れない。何故なら、捕まえられなかったが、ある意味ドワーフ領に封じ込めている事は事実であり、捕まえた程で話を進める事は出来るからだ。
ネオンによると、弓を取られているらしいから、捕まえた証として使わられると、獣人達は信じてしまうだろう。
この事はネオンに伝えていない。
その為、早めにドワーフ領での用事を済ませ、獣人の国へ行く必要がある。
とそんな事を考えていると、峠を越え、眼下に壮大な街並みが出現した。
今まで見たどの街より大きく、山と一体化している。
この山はポロッカ火山というらしく、内部ではマグマが所々に噴出しているらしい。
この山の中腹に、半分埋まったような形の城がある。
この城がドワーフの王が住んでいるランドギス城である。
「凄いですね」
「な!酒馬鹿の癖にやるじゃん。ドワーフ族」
「お腹すいたにゃ。早く行くにゃ!」
相変わらず空気の読めない奴め。
「はいはい」
それから一時間ほどかけ、ミッドガルの城門に着く。
城と街を囲う城壁もただ大きいだけではなく、円形の側防塔がありカーテンウォールも傾斜していて、下の方の城壁の厚さは相当なものだろう。
さらにアルスメットの城壁の倍ぐらいの高さを誇り、城門の堅牢さも比べ物にならない。
城門は開かれており、横幅20メートルぐらいだろうか。馬車が6台ぐらい簡単に並びそうだ。
城門の壁の中には、常駐しているドワーフの兵士がおり、そこで手続きをするようだ。
ドワーフの兵士のところに行く。
何か問題があった時に使う切り札”お酒”をサーシャに待ってもらい、万全の体制で臨む。
「すみません、ミッドガルの街中に入れたいのですが」
するとドワーフの兵士が、
「あー?……おう、珍しいな人族がここまで来るなんて」
そして、後ろの二人に目を向け、
「あー、そこの獣人の子はお前達の奴隷か?」
ネオンを指差し確認してくる。
「いや、奴隷じゃない。ペットだな」
「にゃにゃ!?ペットじゃないにゃ!そこは仲間って言うにゃ!」
そう言いながら、近づいて来てポカポカ殴ってくる。
「はいはい」
と言いながら、頭を撫でてやる。
ネオンの尻尾が立っている……。
おかしいな、バカにした結果、喜ばれるとはコレ一体。
「ふむ。奴隷じゃ無いっぽいな。がはっ!歓迎しよう!」
ガハハハと笑いながら、背中を叩いてくる兵士。
防御力低いんだから痛いよ!
話を聞くと、ここまで来る人族は、エルフや獣人を奴隷として連れている奴が多く、内心いい気持ちでは無かったとの事。
人族は我々や獣人、エルフ達を亜人と呼び奴隷にするとドワーフ語り、そういった輩には、この街に入る際に重い税金をかけ、簡単には儲けさせない様にしているらしい。
さらに、奴隷を連れているという証の腕輪を、入国証として付けさせ、ドワーフ達に警戒をを呼びかけているらしい。
まあ、ここまで来るのは大変だから、兵力が必要なのは分かるが、それを安上がりな奴隷に任せるあたりも気に食わないらしい。
まあそりゃそうか。
だから、久々に人族と他の種族が仲が良い姿を見た。と言いながらガハハハと笑い、ようこそミッドガルへ!と促された。
城門を潜りミッドガルへ入る。
城門からポロッカ火山の中腹の城まで、一直線に伸びる目抜き通りがある。
その通りは城門より広く、その倍ぐらいの横幅がある通りだった。
そしてその両側には、三回建ぐらいの石造の建物が並び、壮観な光景であった。
「凄いですね。私もいろいろな所に行きましたが、これ程完成された街並みは初めて見ました」
「だな。石造だから無骨な感じがする筈なのに、色んな所にある細工が、それを感じさせない」
サーシャと街並みを観察していると、屋台にパパッと走る奴がいた。
まあ、ネオンだよね。
それをサーシャと2人で見た後、目を合わせ、
「先に宿見つけて、ご飯にするか」
「ですね」
串焼きを焼いている屋台の前で、よだれを垂らしているペットを、2人で引き剥がし、宿屋を探しに通りを歩いて行った。
「いっぽん!いっぽ~ん!」
おい、語尾付け忘れているぞ!




