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第28話 ドワーフと酒、猫にマタタビ

 

 ゲーム『アルカディア』において、その運営している世界を自分で旅をして楽しむというのも醍醐味の一つである。


 俺は何度も、ゲーム内で邪神を討伐したり、竜王と喧嘩したり、戦争に介入したりしている。

 このゲームの凄い所は、勝手にイベントを始めて勝手に終えて、そして反映させていくことだ。

 例えば、人族が獣人族に戦争を仕掛けるというイベントを始めたとしよう。


 プレイヤーはそれに介入するもよし、放置するもよし、好きにしていいのだ。

 ただし、介入しないで獣人族が滅んでも知らないよ?というスタンスなのである。


 だから、ちょくちょく神の座から下界を見下ろし、ヤバそうな火種を消しに降りたものである。


 んで……その中で割と思い出深いのが、竜王や魔王のような特殊な役割がないキャラクター達で、邪神を討伐した事であろう。

 

 それの始まりのイベントが、たまたま下りてるときに始まったらしく、獣人のミョン10歳を助けるところから始まった。


 人族と獣人族が何度目かの戦争に突入し、辟易していたところ、たまたま獣人族の国に行こうとした時、小さな村が人族に襲われていて、助けに行ったのだがミョン以外殺されていた。


 そこから保護し、邪神を倒すまでずっと一緒に旅をしていた。

 その旅の内容はまあ割愛するが……邪神を倒した後、リアルの仕事でトラブって忙しくなり、一カ月ぐらいゲームにインできなかった。


 そして気が付いたらゲーム内時間が50年程進んでいた……。

 もちろんそれは俺のせいで、ゲーム内時間を遅くしておけばよかったのに、邪神を討伐して満足し、ちゃんと管理していなかったからそんなことになってしまった。


 獣人のミョンはもうすでに死んでいて、獣人族の英雄になっていた。

 

 あのお馬鹿でふにゃって笑いながら、ご飯を食べている姿を見れなくなった。

 モフモフする事が出来なくなった。

 

 あの時の絶望感たるやなかったな。

 

 もちろん性的の目で見ていたわけじゃないし、ほんと大切な仲間兼ペットがいなくなっただけなんだけど、結構つらかった。


 それからは、このゲームのキャラクター達にのめり込み過ぎない様にした。


 ちなみにこのゲームは、そういった行為は出来ない仕様だったし、キャラクターが神に恋することもないのが仕様だった。


 また、時間を逆行する事も出来ないし、同じキャラが生み出されることもなかった。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「――――」


「神崎さんどうかしましたか?」


 ツッ!体がビクッとしちゃった。

 机で寝ている時とかよくなるよね。

 どうでもいいな。


「いや、なんでもない。……少し昔を思い出していた。」


「昔……ですか?」

 

「とりあえず、毒をくらって気絶してるみたいだから回復お願いしてもいい?」


「わかりました」


 サーシャがネオンに近づき、神聖魔法で解毒と回復をしている。


 その様子を眺めながら考える。

 

 アルスメットのゴブリンの襲撃にしろ、先程の洞窟前にしろ、ネオンが襲われているにしろ、タイミングよく俺がいるところで何故事件が起きる?

 

 ――そりゃあプレイヤーだから……か?するとこの世界はやっぱりゲーム内なのか?


 物思いにふけっていると、コツコツと洞窟内を歩く音が聞こえてくる。

 

 人数は……2人かな?

 そのままこちらに向かってくるので、サーシャに目配せしてみると、もうネオンの処置は終わったのか臨戦態勢をとっている。


 そしてそいつらは、洞窟内の角を曲がって来てこちらを視界に入れる。

 一瞬ビックっとして、俺らの見た目の感じからか、余裕が出たらしく、


「その獣人は俺らの奴隷なんだ。迷惑かけたか?悪かったな」


 そしてもう一人も、


「ほら、早くこっちに寄こせよ」


 と言ってきた。

 まあ、お前らに渡す気はさらさらないのだが。


「悪いな、この子は俺が保護した。帝国にもそう伝えといてくれ」


 言いながら魔法を発動する。

 一つは、相手達との間に神聖魔法のバリアで壁を作り、もう一つは水魔法と土魔法を合わせた、足元を泥沼にする魔法だ。


「な!?なんだこれは!」


「ちっ!」


 ガクッと膝まで泥沼まで足がつかり、さらにずぶずぶと沈んでいく体。

 一人は狼狽えて、もう一人は冷静に反撃を行ってきた。

 もちろんそのナイフはバリアに弾かれ、カランカランと床に落ちることになる。


「マジかよ……。3属性を一瞬で発動するなんて」


「た、助けてくれ!」


 腹まで泥沼に使ったところで、雷魔法で気絶させる。

 胸あたりで沈むのが止まり、気絶して項垂れているが、沼に倒れる感じではない。


「私の出番がないのですが」


「まあ、無い方がいいと思うけどね」


 周りの気配を探っていると、後ろでゴソゴソとネオンが起きる音がした。


「う、う……ん。ふえ……」


 よだれを垂らしながら、虚ろな目でこちらを見ている。

 ……この緊張感のない感じ、なんか既視感があるな。


 だんだんと頭がはっきりしてきたのか、ハッとして臨戦態勢をとるネオン。

 そして、フーフーと息を荒げ興奮してきている。

 右手の爪が少しずつ伸びてきて、3センチほどの長さになった。

 多分、一番折れにくくひっかきやすい長さなのだろう。


 そして、それに反応してサーシャも臨戦態勢をとる。

 神の加護をかけ、さらにほかのバフをかけているのがわかる。


「サーシャ落ち着け、手を出すなよ」


「……それは聞けません。もしその子が変な動きをしたら、すぐにカチ割ります」


 怖いよ。


 まあ、さっき鑑定していたから、ネオンのステータスの高さに警戒しているのだろう。

 ネオンとサーシャの間に立ち、ネオンに話しかける。


「おいネオン。お前は助けてくれた人に敵意を向け、殺そうとするのが恩人に対する態度か?」


 いきなり自分の名前を読ばれたからか、ビクッとして、俺の顔を見て戸惑った顔をしている。

 どうやら毒気を抜かれたらしい。


「にゃ!?――にゃにが助けたにゃ!ひ、人族の言うことは信じないにゃ!」

 

 フッ、落ちたな。

 普通に会話が出来れば獣人など、恐るるに足らん。


「お前毒くらったろ?そこのおねーさんが解毒して、傷まで治してくれたのに、話も聞かず戦闘しようなんて、モル将軍が聞いたらどう思うだろうなー」


 何というか、他人という感じでなく、知り合い感を出しながら喋っていく。


「にゃにゃ!?おまえ、パパの事知ってるのかにゃ?」


「はあ~あ、英雄ミョンの子孫ともあろう者が、礼儀も知らないとはな~」


 右手を眉間に持っていき、はあ、やれやれという感じのジェスチャーをする。


「ごめんにゃさい」


 すぐに頭を下げる猫獣人族。

 先程まで毛を逆立ててた尻尾も、今はシュンとしている。


 勝った。


 サーシャがぽかんとした顔をしている。

 クールビューティーにしては珍しい顔をしているな。


「とりあえずここに居てもしょうがないから、先に行くか」


 と二人を促して先を急ぐ。


 沼にハマった二人は一応抜いておきました。


 


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 あれから直ぐにトンネルを抜け、ドワーフの町ガルガンに着いた。


 山と石造りの壁が見事に一体化していて、武骨だが男心をくすぐられるカッコよさだ。

 そのまま、門番に確認とると、人族がここまでくるなんて珍しいな!がははははは!と笑って町中に入れてくれた。


 道中サーシャは、ネオンに対して警戒をしていたが、当の本人はパパには言わにゃいでにゃ!とにゃーにゃ―言っていた。


 もう夕方だったので、本来であればここで宿をとる予定だったのだが、あの帝国の奴らが来る可能性も、この町に潜ませている可能性もあるため、素通りする羽目になった。

 

 それでも町中を通りながら、観察する余裕はある。

 ドワーフの町だけあって、見事にドワーフだらけである。

 ちなみに、女のドワーフの姿はロリでも髭モジャでもない。

 身長は低く、他の種族の女性より筋肉がついていて、豪快なおばちゃんて感じだ。

 もちろん若い子たちは若いのだが、がはははははと豪快に笑うところはあまり変わらない。

 そして建物は、木材よりも石材の方が多く重厚感があった。

 

 そして洞窟のようなところから湯気・・煙?が立ち上っていた。

 サーシャによるとあそこで鍛冶をしているらしい。

 

 そしてそのまま、街に入ってきた反対側の壁門から出ようとすると、門番のドワーフが、


「おいおい!今からミッドガルの方に行くのか?やめておけ、ここから先は魔物や魔獣の強さが格段に上がてくるぞ?最低限朝になってからにしろ。」


 髭モジャのおっちゃん……か、どうかは分からないが、忠告をしてくれた。


「忠告ありがとな。でもうちには優秀な神聖魔術士がいるから、結界で魔物とか魔獣とか寄ってこないんだよ」


 と町中でさっき買った酒を手渡しながら、問題ないことを伝える。


「そうか?ならまあいいんだが……」


 速攻で酒に意識が向いた。

 持っている酒をちらちらと見ながら、そわそわと飲みたそうにしている。

 相変わらずドワーフは……と顔が綻ぶのがわかる。

 

 ドワーフ達は、豪快で気風がいい奴らだ。

 基本何があっても、がははははと大笑いして済ませ、言葉遣いが悪い癖に、人族だろうと心配してくれる優しさを持っている。


 まあ中には、職人気質の頑固な奴らもいるが、共通して言えることは、酒ですべてをダメにするおバカ種族である。


「気にすんな、これは俺たちの事を心配してくれた礼だよ。気にせず飲んでくれ」


 じゃあ俺たちは通るけど問題ないよね?と言いながら門を出る。

 門番は俺たちが外に出ると、扉を閉めるより先に酒の封を切っていた。

 

 せめて、扉は閉めろ!


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