第27話 昔飼っていた猫の名前は?
事件が起きたのは次の日だった。
「この先に洞窟というかトンネルがあります。そこを抜けるとドワーフの町ガルガンに着きます」
「おーやっと山道から解放されるな!さすがに足腰がツライ」
山を登ったり下りたり、直線距離は進まないが体力はガンガン減らしてくる。
この先まだまだ山道があるとは言え、少しは平らな道を歩きたいものだ。
まあ、山道とは言え魔法がある世界だから、神の加護を弱めに貰ったり、筋肉痛を治したり、体力を回復したりと日本では考えられないスピードで進んでいるのだが。
辛いものは辛いのである。
「お、あれが洞窟かな?……入口に人がいるね」
「そうですね。しかもドワーフ族ではなく人族のようですね」
こんな所で人族が居るのは珍しい。商人ならまあ可能性はあるが、あいつら商人ぽく無いな。
10人ぐらいだろうか、旅人のような恰好はしているが、全員が武器を携帯し堅気の雰囲気ではない。
すぐさま神の目を発動し情報取集を行う。
――――。
う~ん、帝国の軍人さん方ね。
山賊や盗賊などではないし、大丈夫かな?
「帝国の軍人だって、ヤバいかな?」
「そういった噂は聞きませんが……とりあえず神の加護をかけて近づいてみましょう」
まあ近づくしか選択肢がないんだけれど。
いきなり魔法で攻撃するわけにもいかないし。
「そこの二人止まれ!」
いきなり止められました。
「……何か問題でもありますか?」
俺の交渉術を見してやる。
「私たちはこの先に用があるので進みたいのですが」
と俺の交渉術が炸裂する前に、サーシャが一歩前に出て話始める。
「ここは通行止めだ!」
と目の前にいる若い男が俺たちの行く手を遮る。
「あなた方にそんな権利があるのですか?少しぐらいなら待ちますが、時間はどれくらいかかるのですか?」
「それをお前らに言う必要などないだろうが!」
「――話になりませんね。」
俺を無視して話が進む。
俺の交渉術は?
サーシャは首を左右に振りながら、腰にぶら下げているメイスを右手に持ちかえ、相手を見据える。
え?やるの?
「ガットやめないか。すみませんね可愛いお嬢さん」
この隊の隊長さんで、帝国貴族の次男坊が止めに入る。
「いやしかし隊長!」
「僕は止めろと言っている。それに彼女が暴れたら、居の一番に殺されるのは君だよ?」
うん?サーシャの強さを理解しているのか?
貴族の坊ちゃんは鑑定はないはずなんだが。
――あいつか、鑑定と念話っていう特技があるな。
鑑定で知り得た情報を、紙に写さずそのまま念話で情報共有出来ると……。
なかなか良い特技の組み合わせじゃないか。
「どうかな美しく輝くお嬢さん、僕の物になる気はないかな?その強さ、美しさは、僕のためにあると思うんだけど?」
いきなりナンパ!?すごいな貴族……。
「申し訳ございませんが、興味がないですね」
にべもなく断るサーシャ。流石である。
「女!頭が高いぞ!この方をどなたと心得る!帝国貴族の公爵家に連なるお方だぞ!」
「申し訳ございませんが、興味がないですね」
同じことを二度言った!
しかもテンション変えずに、大切な事だから二度言いました的な感じで!
「あはっはっは、いいね。実に良いよ。それぐらい強気なほうが壊したときの快感がたまらない」
と同時に右端に居た奴が、睡眠系の魔法を発動しようとしている!
させないぜ!
すぐさま準備していた土魔法中級と水魔法中級5発ずつを発動する!
「ッツ!」
「なに!?」
「うわー!?」
十人十色の叫び声をあげながら、落とし穴に落ちる。
ドボンッッン!という音をあげながら落ちていった。
その落とし穴の中には水が張られていた。
ていうか、簡単出れないように張っといた。
雷魔法を撃ちこんだり、生き埋めにしたり、このレベルの人族なら簡単に殺せるが、人殺しはね~。
「な、何故!土魔法が使える!しかもこのレベルは中級以上だぞ」
「ぎ、偽装魔法だと・・そのレベルの魔法が使えるとは……」
「ひ、卑怯だぞ!正々堂々と勝負しろ!」
「た、助けてくれ!俺は泳げないんだ!」
「さ、寒い……」
縦読みではございません。
まだ雪は降っていないが、それでも水泳するにはメチャクチャ寒いと思う。
殺す気はないけど、復讐されるのもいやだから、力の差を理解してもらおう。
サーシャを目で制し、落とし穴の淵まで進む。
「どうされたい?雷魔法でもいいし、土魔法でもいいけど……。死に方ぐらいは選ばしてあげるよ?」
すると三人が魔法を放とうとし、一人がナイフを投げてきた。
魔法を放とうとした奴らには、撃たれるより早く、火魔法初級×4ほどの威力で当ててあげた。
火傷はするだろうけど、水があるから大丈夫だろう。
ちなみに、飛んできたナイフは神聖魔術のバリアが弾いた。
「さて……、もう一度聞こうか。俺らはここを通りたいのだけれど、通ってもいいかい?」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
洞窟内に入り、案内を見ながら道を進む。
この洞窟がある理由は、この山はもともと鉱山で、反対側から結構掘られていたらしい。
山も険しいから、貫通させて道にしちゃえ!っていうノリで出来たという事。
その為、行き来するための道は、結構整備されていて歩きやすい。
「改めて考えるとアイテムボックスずるいですね。魔法の発動にかかる時間がないなんて、それだけで最強になれますよ。それに、神崎さんの魔法の腕も上がりましたよね。使い方というか」
「まあ確かに。でも今回のあれは、あいつ等が馬鹿だったからああなっただけで、俺の能力は強いけど無敵じゃないから、やられるときは簡単にやられると思うよ?」
それこそ、神の目を使っていても、視野の中に入れてなかったら何も暴けないわけだし、テレポートで逃げる事も、魔法で迎撃することもかなわない。
先程も死角から攻撃をされていたら、どうなっていたかは分からないし、全員が固まって居てくれたから、一網打尽に出来たに過ぎない。
この先は、その辺の対処も考えないとな。
「その……先程は、危険な目に合わせてしまってすみませんでした」
「いや、あれはしょうがないよ。あの貴族がサーシャの事を気に入った時点で、力ずくで奪いに来ただろうし」
あえて言うなら、あいつらの前に顔を出した事が失敗だろうか・・。
いや、そんな事いったら何も出来なくなるから、あれはしょうがない事だろう。
「にしても彼らは、わざわざ帝国から何しに来たのでしょうか?」
「あー・・なんかメギド王国に奴隷として売り払った獣人の中に、それなりの地位の獣人が居たらしく、その獣人を使って、帝国が獣人の国を制圧しようと画策しているらしい。その獣人を捕まえ来たんだけど、途中で逃げられたっぽいよ」
「――ずるいのは、アイテムボックスだけじゃなかったですね」
「まあ一応神だからね」
「彼等はあのまま殺すのですか?」
「おい!物騒なこと言うな。火魔法使える奴もいたから水は温められるし、土魔法が使える奴も3人いたかな?そんだけいれば出れるでしょ。ていうか、時間がたてば周りの土に、水が吸われて問題ないはずだけど」
「イラっとしたから、コロコロするんじゃなかったんですね」
コロコロってなんだよ!ちょっと可愛いじゃねーか!
道をテクテク歩いているわけだが、少し獣人の事が気になった。
というより、このまま何もしないでいると、最悪獣人の国が無くなる気がする。
ここで対処をしないと、後々大変なことになるような……。
「サーシャ、この洞窟に例の獣人が居ると思う?」
「……あそこにいた人達が、出てくるのを待っていたとしたら、この洞窟内にいる可能性は高いと思いますよ。もちろん、反対側から追い立てている人が居るのでしょうが」
「だよね」
どうするかなと考えていたら、サーシャがこちらを見ながら微笑んでいた。
「良いと思いますよ?神崎さんのやりたいようやれば。私はそれについて行くだけです」
と、背中を押してくれた。
「ふー……。そうか、ありがとう」
よし!面倒事は好きじゃないけど、やらないといけない気がするから、やるだけやってみるか!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
はい、ものの3分で件の獣人を見つけました。
通路のトンネルから、鉱山の洞窟のようになっている部分に入って進んでいった。
先程より穴の直径が狭まり、圧迫感を覚える。
そんなことを思っていた直後に発見した。
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名前 ネオン・ニャキータ
種族 獣族
役割 なし
職種 斥候
位階 42
筋力 872
体力 378
精神 432
知力 189
魔力 32
器用 609
幸運 81
特技 気配察知6 弓術5 爪術4 言語3
特殊スキル 第6感 聴覚強化 身体能力強化 リミッター解除
獣人の国シンハ出身者。
現在14歳の猫系獣人である。
1000年ほど前の獣族の英雄ミョン・ニャキータの子孫。
父親が獣族の将軍モル・ニャキータ。
帝国が休戦を持ち掛け、獣族はその話に乗った。
しかし休戦条約の話し合いの席で、帝国がいちゃもんを付け、その席に居た者を人質にとり、獣国の将校達を殺害した。
その時の人質の一人であり、メギトに奴隷として売られた。
何とか隙を見て逃げ出したが、毒にかかり気を失っている。
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ミョンの子孫か……。
嬉しんだけど、このはめられている感じな。
まあ、それは後で考えよう。




