第26話 侵入ドワーフ領
今日はいつもより早く起きだし、荷物を片付け宿を払った。
いつも通り、宿屋一階の食堂で朝ご飯を作ってもらい、それを食べて出発する。
「忘れ物とかないよね?」
「問題ないと思いますよ」
「じゃあ行くか!」
「はい」
真新しい装備のサーシャと、ちょっと匂う皮の鎧を装備した神崎である。
新しい装備と醸し出す雰囲気で、どこぞの貴族が旅をしている感じのサーシャと、どこからどう見てもただの従者である神崎徹。
どちらが立場が上なのかは言うまでも無い。
どっちだろう?
アルスメトットの城門を通ろうと、いつもより少ないその列に並ぶ。
基本的には、都市の出入りは無税だが、商人の運ぶ荷物の物によっては税金がかかる。
それも都市ごとに変わるのだが、アルスメットでは、ここで買い付けたドワーフ製の武器や防具、嗜好品に税金がかかる。
いつもこの時間帯は、出立をする商人たちでごった返しているのだが、先のゴブリン事件の所為で閑散としていた。
ま、そんなわけであまり並ばずに手続きできるのは良い事だ。
そして、何故かいつも居る警備兵さんが、俺の事は目に入らないらしく飽きもせずナンパしてくる。
「おはようございますサーシャさん!今日もいい天気ですね。お昼ご飯でも一緒にどうですか?」
「おはようございます。今日これからこの街を発つので、お誘いはお受けできません」
「え!?ど、何処に行くんですか?」
「ドワーフ領のミッドガルまで行って来ますので、いつこの街に戻って来るか分かりません」
その一言に呆然とする警備兵さん。
ご愁傷さまです。
そしてサクサク手続きを終わらすサーシャ。
城門を出てドワーフ領を目指す。
「バッサリいったな」
「まあ事実ですし」
「にしても、ドワーフ領行きの馬車って無いんだね」
「基本、馬車が通っているのは人族領の中だけですね。それに、ドワーフ領は山道が多くて馬車が走れません。」
「あーそれもそうか、でも道はあるんでしよ?」
「そうですね。ミッドガルまで普通に道は有りますので、迷う事はないと思いますよ」
とのんびり歩きながらミッドガルを目指す。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アルスメット周辺とは景色が違い、大分岩が多くなり寒くなった。
アルスメットも人族領の中では北の方に位置するが、ドワーフ領はさらに北に進み、その領地のほとんどを山地という事もあるため、必然的に気温は低く人族が住むには適さない地である。
ミッドガルまでの道のりは、約1ヶ月程あるのだが、ここまでの旅としては、一週間程の道のりではあるが、特に何もなく順調に進んだ。
寝るときも、サーシャの結界術で魔物除けが出来るので、なにも問題はなかった。
ちなみに、テントは1つのテントを二人で使っている。見張りが要らないから2つで別々に寝ても良いのだろうが、予備は何かあった時に残しておくべきです。とサーシャに言われた。
歩いて、ご飯食べて、寝て、土下座プレイして、魔法をストックしてといつもとそんなに変わらない感じだった。
ちなみに、テレポートを連続で使えば、移動速度は飛躍的に上がるのだが、サーシャが酔ってしまった。
5回ほど連続使用したところギブアップした。
まあそんなわけで、徒歩で旅をしている。
これはこれで、醍醐味があっていいのではないだろうか。
ちなみに、お風呂やトイレは中級魔法で作った。
「神崎さんの魔法、凄く便利ですね。……アイテムボックスって言った方がいいのですかね?」
「出来れば、魔法の方がカッコイイからそっちでお願いしたいんだけど」
「そこですか?」
「そこだな」
ジト目で呆れられた。
「実際、上級以上も使えるんですよね?」
「うんいける。初級100発で上級の括りらしい。この流れで行くと、特級は1000発貯めればいけるんだと思う」
特級なんて使い勝手が悪すぎるから、基本中級でストックしている。
サーシャに特級の話を聞くと、地形が変わるような魔法の威力で、戦争で使う場合、何十人もの魔術師で発動する戦略級魔術らしい。
どれほどの威力化は試していないが、仮に核爆弾級の威力だったとしても、どこで使えば良いのかわからん。
最低限威力を理解している者に、抑止力として見せつけるぐらいしか出番はないだろう。
そして、アイテムボックスさんも無敵ではなかったらしく、合わせた魔法を元に戻す事が出来なかった。
これは多分だが、合わせるのと分離させるのでは、労力が違い過ぎる所為なのではないだろうか。
塩と砂糖を合わせたら、その粒子一つ一つを分ける必要があるし、塩と水を合わせた場合なら、凍らせたり蒸発させたり……完全に分離させるのってどうするんだろう?
まあ、そんなわけで、合わせる労力と分離する労力はイコールではない。
ゲームならではのアイテムスタックシステムの、”ついで”に魔法を合体させてくれたに過ぎないのだろう。
「本当にあの杖は、神崎さんの為にあるような杖ですね」
そう考えると、ゴトフの悲願はある意味もう叶っているな。
「その点についてはゴドフ様様だ」
あの杖一本で、俺の戦力は飛躍的に上がった。
自分一人で行える攻撃手段が、出来た事はものすごく嬉しい。
「にしても、サーシャの位階も上がったね」
そう、サーシャのステータスも軒並み上がった。
あのゴブリン襲撃の際の戦闘で、だいぶ鍛えられたらしく、こんな感じになった。
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名前 サーシャ・クラニット
種族 人族
役割 なし
職種 シスター
位階 28 →36
筋力 786 →802
体力 463 →532
精神 341 →380
知力 230 →262
魔力 396 →423
器用 278 →342
運 73 →79
特技 神聖魔術5 棍術5 鑑定4 風魔法2 水魔法2 言語3 カリスマ4 体術3←NEW
特殊スキル 怪力
称号 ドS 脳筋 あんまり大きくない ゴブリンキラー ** **
元クラニット王国継承権第8位の娘
父親はベオル・クラニット7世
母親はクラニット王国の避暑地にある別荘でたまたま働いていたナターシャ
お手付きになったナターシャは、第一王妃にお腹の子ともども暗殺されそうになる。そのため何とか逃げ延びロムルスの知り合いの家で出産。しかし、追手が来たためサーシャを孤児院において姿をくらませた。
その後サーシャは12歳の時聖女に任命される。
17歳まで各地を転々と周り、聖女としての役割を果たしていたが、教会のいざこざに巻き込まれ、神の審判を受ける。神により助け出され、聖女の任を解かれた。
現在は、アルカディアの主神である神崎徹と旅に出ている。
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そして、新しい欄が出来ていた。
そう、称号である。
神が認めたものに授ける呼び名だそうだ。
もちろんこれのおかげで、一悶着……というか土下座させられた。
思い返すとこんな感じだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
晩御飯を食べて、寛いでいると。
「その者の能力を写し出せ。鑑定!」
「おい、いきなり何だよ」
だから、いきなりの鑑定はマナー違反でしょ!
エッチ!
「いえ……、ジェネラルを倒したわけですし、位階が上がっているかな?と思いまして」
「――上がらないんですよねー」
「何でですか?」
「実際のところはわからん」
「そういえば、サーシャはどうなんだ?」
そう言いながら神の目を発動させると、おおー結構上がってるじゃん!いいな羨ましいぜ!……うん?目がおかしくなったのかな。変な文字が見える……。
冷汗が流れ出すのを止められない……。
「その者の能力を写し出せ。か「おおう!サーシャさん!私が説明するんで鑑定なんか使わなくても大丈夫ですよ!」
「……」
無言のサーシャが、ジト目で俺の顔を凄く見ている。
「いや、あのあれがあれでして、その……ね?」
「その者の能力を写し出せ。鑑定!」
「サーシャさーん!?」
十秒ほど自分の能力が書いた紙を見ていたが、
その辺の男なら、一瞬で恋に落ちるようなものすごくいい笑顔で、
「正座」
「……はい」
「この称号っていうのは何ですか?」
「いや……なんでしょうね?僕もイマイチ良く分からないんですよね……」
「メイスとガントレットどっちがいいですか?」
いや……どっちも結果変わらないから!
豆腐の防御力なんだから死んじゃうよ!
「え、えっとですね、神の目が言うには”神が認めたものに授ける呼び名”だそうです」
頬を引きつらせながら、問に答える。
サーシャは、ふむと首を傾げながら少し考え、
「つまり、どっかの神様が私の事をそう思っているという事ですよね?」
称号よ消えろ!
消えろ消えろ消えろ!
じゃないと俺が消される!物理的に!
頑張って消そうとするが、神の目が無情にも「消せません」という文字を放ちおった!
終わた!
「いや、どうなんですかね?どっかの神様はよく分かりませんが、僕はサーシャさん美人で良い子だなーと思っております」
「は?」
ひー怖い!美人の表情がない睨みって、こんなに恐ろしいんだね。
表情がないのに睨めるサーシャ、恐ろしい子!
消せないのならば、プラスの称号でプラマイゼロを目指せ!
美人美人美人美人美人!
!!
「と、とりあえず、もう一回鑑定してみてください」
「ちゃんと消せたんですよね?」
「……」
「その者の能力を写し出せ。鑑定!」
数秒その紙とにらめっこをし、ふう、とため息を一つ。
「今回は土下座で許しますが、次はメイスですよ?」
「はい。肝に命じておきます」
次はメイスって何だよ!怖すぎだろ!
ちなみに、新しい称号は
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称号 ドS 脳筋 あんまり大きくない ゴブリンキラー 美人 神を養う者
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どっちで許されたのだろう?




