第25話 閑話 午後のティータイム
神崎徹は今日、暇を持て余している。
何故なら隣にサーシャが居ないからである。
ロムルスから出発し、先日アルスメットに着いたので、サーシャは育ての親であるミネルヴァさんに、近況報告をおこなっているのだ。
先程、都市ロムルスに居るミネルヴァさんを、テレポートを使いアルスメットに連れてきた。
そして俺は早々に追い出され、アルスメットの町中に繰り出している。
さて、久しぶりの一人だな……。
さて行くか……!
決意に燃える男が一人!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「追い出してよかったの?」
「大丈夫ですよ。たまには一人の時間も有った方が良いでしょうし」
「それならいいのだれけど。それにしてもテレポートって凄いわね。一瞬だったわ」
と紅茶を飲みながら、サーシャが借りている宿屋の一室で話に花が咲く。
「そういえば、神崎さんって神様なのよね?その……畏まらなくていいの?」
「神崎さん本人が言うには、その、俺は神であって神ではない。普通の人間だよ。って言ってるんですよね」
「え?そうなの?」
はい、と言いながらその時の事を説明する。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「神崎さんは、その、これからどうするんですか?」
「うん?これからって?」
「その、この世界の神様なら、やらなくてはならない使命みたいな事はないんですか?」
ガタゴトと馬車に揺られながら疑問を口にする。
あーと微妙な顔をなされ、そういえばその説明してなったね。
と返された。
「俺、この世界の神……管理者?っていうのかな、確かに、竜王をはじめいろいろな種族を召喚したし、その種族ごとに役割も課した事もある。邪神も討伐したことあるし」
でもね。と一言。
「俺は君と同じ人間なんだよ」
「え?」
一瞬、何を言っているのか理解できませんでした。
確かに、事あるごとの反応は超然とした者というより、人のそれでした。
「でも、貴方様は私たちの創造主であり、この世界を管理なされているのですよね?」
「うーんなんて言えばいいのかな。確かに、この世界のみんなを創ったと言えば創ったし、神様として管理もしていたけど、そんな偉い者じゃないんだよな~」
少し考えられて、
「俺がいた世界にも人はいっぱい居たし、俺もその中の一人だったんだよね」
何という事でしょう。
その世界は、神様がたくさんいらっしゃるのですか。
正直想像が出来ません……!
「いや、なんかすごいキラキラした目で見られてるけど、多分想像とは違うと思うよ?」
いえ想像が出来ません!
「今の俺の状況って、イメージ的には、物語を書くでしょ?んで、その書いた物語の登場人物に、物語の中に呼ばれたっていう感じが一番合ってるのかな?」
ゲームの概念なさそうだしな。
と一言。はて、げーむとは何でしょう?
「まあ理屈は置いといて、基本は君たちと同じ人族だと思うから、畏まる必要はないよ。だから、この世界で何かしなければならないって事は、特にないんだよね」
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「という感じでしたね」
「えーと、つまりこの世界の管理者であって、人族でもあるって事?」
「はい。私たちの思っている神様とは違うそうです」
だから、私が畏敬の念をもって接すると、
人として扱ってっくれ。と気まずそうに言っていました。
「ふーんそう、ちなみに男の人としてはどうなの?」
「ど、どうとは?」
いきなりの質問にどもってしまった。
「そりゃ、……ねえ?」
今までの、心配していた雰囲気ではなく、からかう感じで問うてきます。
頬が赤くなるのを感じながら考えます。
好きとか愛しているとか、そんな感情はないと思う。
でも、別に嫌いというわけではない。
というより、どちらかと言えば好ましいというか……。
だって、死ぬところを助けて頂いた訳ですし。
ただ、今まで思っていた神様に対する想いと、神崎さんに対する想いがごちゃごちゃしていて、自分自身よくわからないんですよね。
とあーだこーだ考えながら、ふと目線をあげるとミネルヴァと目が合った。
ニヤニヤしながら彼女は、
「ふむふむその感じなら、うちの孤児院は一生安泰かな。神様がバックについている孤児院なんか、普通ないだろうしね」
「いえ、神崎さんは自分の世界に帰るって言ってますけど?」
自分を落ち着けるために紅茶に手を伸ばす。
そんな私を見ながら、ミネルヴァはニヤッと口角を上げ、
「その前に、孤児院ご自慢の可愛い可愛いサーシャが、神崎さんに迫ればイチコロだと思うんだけれど、私は」
ぶはっと、紅茶を飲んでいた私は、気管に紅茶が入りむせました。
「ごほっごほっ!シ、シスターミネルヴァは、な、何をおっしゃっているのですか?」
「でも、無くは無いんでしょ?それに神様の子どもを授かるなんて、ウラヌス教の信徒ならそれなりの数の人が夢見るんじゃない?」
いや、そういう問題じゃない!
じゃあどういう問題?
と聞かれても分からないけれど違う!
そんな感じで、二人だろうと姦しく女子会は進むのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
話題の人物は一万ギルを握りしめ、どこのお店が良いのかを調べていた。
いわゆるそういうお店は、夜のイメージが強いがこの世界では昼間の方が普通である。
何故なら、夜の明かり代が馬鹿にならず早々に店を閉めるのだ。
大体酒場もそういう店も、9時ごろになると店仕舞いらしい。
その為、昼間からそういったお店が並んでいる通りを神崎は歩いているのだ。
先程から、外に出ているキャッチのお兄さんや、おねーさんに話しかけながら、どのお店に向かうか吟味中である。
そもそも、お前金持ってたのか?
という疑問は当然である。
しかしこのお金は、以前に図書館に行く時に、ミネルヴァさんから渡されていたお金である。
虎の子の一万ギルである。
だからこそ失敗は許されないのだ……!
お店は二店舗に絞られた……。
後は、エルフにするかモフモフにするかの違いである。
モフモフは外れると、獣が出てくる可能性がある。
流石に神崎といえど、獣はキツイ。
ならばと、エルフが居るという噂の、ーズナブルなお店に向かおうとした瞬間……!
ただならぬ殺気を背後から感じた。
「な、なんだと……?」
この神である俺を、動けなくするほどのプレッシャーを放てる者が存在する……のか……?
すると、よく知った声のはずだが知らない声で、
「神崎さんは、今からどこに行くんですか?」
と、弾むような調子で声がかかった。
俺はとりあえず、彼女に向かって道端で土下座をした。
「あれれ~?どうしたんですか?いきなり最上級の謝罪をするなんて、何かいけない事でもしたんですか?」
恐る恐る顔を上げ、彼女の顔を確認する。
ものすごい笑顔だった。
しかし、目は笑っていなかった。
なんなら、ごみくずを見るような目だった。
「とりあえず、こっちの用事は終わったので、部屋に戻りましょうか」
「――はい。」
近くにミネルヴァさんも居たのだが助けてはくれなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その後宿屋に着いた俺たちは、ミネルヴァさんを都市ロムルスに送って行って、彼女の部屋に二人っきりの状態だ。
よく考えてもらいたい。
すごい美人の元聖女である、日本で言うところの17歳だから女子高生?・・女子高生の部屋に二人っきりでいるんだぞ?
そりゃあ男なら期待するだろ?
ちなみに僕は今すぐ逃げたいです。
「正座」
「はい」
「何か言うことは?」
「大変申し訳なく思っております」
ん。と手を出してくる。
こっちも、ん?と返す。
「養ってもらっているのに、お金を持っていると、馬鹿なことをするらしいので、没収です」
と、虎の子を持ってかれた!
「土下座」
「えっと、道の真ん中でしたと思うのですが……」
「早く」
「はい」
そしていつも通り、土下座中の頭に、ブーツを脱いだ足をあげ、ふにっと後頭部を踏んだ。
その後、土下座プレイが10分ほど行われました。
これで、この章は終わりです。




