第24話 冒険者ギルドの仕事
現在、アルスメットの冒険者ギルドの職員と、ギルドマスター、そしてギルドの依頼を受けた冒険者たちは、ゴブリンジェネラルの捜索に当たっている。
昨日、商業都市アルスメトットに、ゴブリン達が襲撃した。
その襲撃自体は解決したが、その襲撃の中に、ホブゴブリンが居たのが問題である。
ホブゴブリンは、ゴブリンの上位種であるが、簡単に進化するわけでは無い。
突然変異で生まれた”統べる者”が居て初めて進化する。
何故”統べる者”が生まれるのかは解明されていない。
しかし今回の調査ではあまり関係ないだろう。
「凄まじいな……」
元Aランク冒険者の、ギルドマスターが周りを見て呟く。
「ですな。ここらで放たれた魔法は、上級か中級の複合魔法ですよ」
納品カウンターで皆を威圧するクマさんが語る。
ここは神崎が、ゴブリンジェネラルを倒した所である。
「おい!こっち見てみろ!」
と冒険者数人が騒いでいる。
「どうした?」
貫禄たっぷりのギルドマスターが、騒いでいる冒険者たちの下にやって来る。
「穴の中見て下さい。ジェネラルだと思うんですけど……」
言われた通り穴を覗き込むと、そこには頭の無いジェネラルが横たわっていた。
「すでに死んでいるのか!?……ふむ、とりあえず、ジェネラル討伐から、この周辺の調査と、残党の討伐に切り替える!」
今回集まった面々に、指示を飛ばしながら自分も行動に移す。
できる男。
それがギルドマスターである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
一夜明けて、手分けして集めた情報を、冒険者ギルドに持って帰り話合いが始まった。
昨日はあのまま、ニット村まで調査を行った。
村の中の家畜が食べられていたぐらいで、それほど荒らされてもいなかった。
ゴブリンジェネラルが倒されたせいか、周辺のゴブリン達もうそのように静かだった。
ニット村で一夜を過ごし、朝一でアルスメットに向かい出発した。
そして帰ってきたのがお昼過ぎである。
「とりあえず、当面の危機は脱したであろう」
「ジェネラルの討伐は、終わりましたもんね」
お疲れ様ですと、頭を下げるたわわおねーさん。
「いや……、今回俺たちは何もしていない。行った時にはゴブリンジェネラルは討伐されていた」
まあ、ゴブリン達の死体の処理や、ジェネラルの死体を街まで、持って来たのは俺たちだかな。
と、腕を組みながらクマさんが言う。
「えっと、……どういう事なんですか?」
サーシャ大好き新人カウンターの娘が疑問をぶつける。
「誰かが、ジェネラルを討伐していた。しかもAランク以上の超一流魔術師だ」
ギルドマスターが説明する。
現場の状況から、中級複合魔法か上級魔法を使った跡がある事。
さらに、50発から60発ぐらいの、中級魔法が放たれていたと推測出来る事。
そして大問題なのが、火・土・水、雷・風の5属性を扱っている可能性がある事だ。
なっ!っと声があがり室内がざわつく。
それもそのはず、中級の魔法自体は特技レベルが3以上あれば撃てる。
しかし、特技レベル3という事は約50程の魔力消費量だ。
つまり最低でも、魔力量が2500無ければならない。
しかし、人族の魔力量は最高峰で1000程である。
特技レベルが7だと、魔力変換効率から、約20ほどの魔力で中級魔法が放てる。
つまり、特技レベルが3どころか、特技レベルが最低で7以上、そして、最高峰の魔力量があって初めて可能なレベルである。
もしくは、魔力回復を促すアイテムやら、特殊特技があればまた別だろうが。
しかも、それを5属性揃えているなど誰も聞いたことがない。
そんなレベルの人が、そうそう歩いている訳が無いのである。
中級魔法を一度の戦闘で5発打てれば一人前。
20発も打てれば、Aランク冒険者に登録可能だ。
それの約3倍ほど撃てて、さらに複数属性持ちとかどんな化け物だという話になる。
「――この辺だと、隣のメギドのグランツ将軍や雪華のメリッサ様ですかね?」
冒険者ギルドの事務長、近年毛根が寂しくなった男が可能性を挙げていく。
「いや、ここら辺に来るという話しは聞いていない。それに、魔族領から離れることも、簡単には出来ないだろう。というより、あの方たちでも属性的に不可能だ」
冒険者ギルドは、噂や情報が意外に入ってくる。
もちろん、そこのギルドの方針にもよるが、商業都市のギルドは情報の価値を良く分かっている。
「そもそも、本当に一人だったんですか?複数人なら可能ですよね?」
たわわおねーさんが他の可能性を指摘する。
「残念ながら、足跡を辿って見ると、一人分しかなかった。しかも、空中に浮きながら、移動出来るレベルだ」
それどころか、とクマさんが唸りながら、
「ありゃあ剣の腕もそれなりにあるぞ。乱戦で一刀のもとに、切られた死体が何体もあった」
どんな化け物だよ。
という空気の中、一人手を挙げるカウンターののんびり担当さん。
「あのう、いいですかー?」
「何だ?情報があるのか?」
ギルドマスターが目を細めながら問う。
皆さんが討伐に向かった後、私はニット村から逃げていた人の話を聞いていたのですが、と説明を始める。
「逃走の途中で、足止めをすると言って残った人が居たそうです。その人は高さ二メートル程の小さな山みたいなのを作り、その上に立って待ち構えていたそうです」
「なっ!?それだ!あの場には、何箇所か不自然な盛り土があった。その人は、どんな人だったか聞いているか?」
興奮したギルドマスターが、のんびり担当さんに詰め寄る。
パワハラとセクハラである。
「えーと確か、サーシャちゃんさんでしたっけ?あの子の連れの人です」
それを聞いて反応したのは、
「え!?か、神崎さんですか!……た、たしかに彼は、報告で後は残党の処理だね~。とノンビリ言ってましたが……まさか……!?」
とたわわおねーさんが狼狽する。
「――つまり、あれをやった可能性が一番高いのは、サーシャ嬢の連れという事か。足止めついでに、ゴブリンジェネラルを討伐した可能性があると」
ギルドマスターは腕を組み、ふーと一息つく。
「うー、そう言われてみると、サーシャちゃんが彼にかしこまっていたのは、そういう事なのかな?実は超一流魔術師の護衛みたいな感じだったのですかね?」
新人ちゃんが、悔しそうに状況から推察する。
「ありえるな、どこぞの国の要人の可能性はある。宮廷魔術師とかか?それともエルフ族の者か?」
これに対し、待ったをかける奴が一人!
「待って下さい!アイツを鑑定しましたが、ステータスオール100でしたよ!?さらに剣術も2ぐらいで、魔法系は一個も無かったですよ!」
彼は、サーシャと仲良くパーティーを組んでいる神崎に嫉妬していた。
サーシャを鑑定してビックリした後、神崎を鑑定して、俺の方が強いじゃないか!なんでお前みたいのが隣を歩いているんだ!
と激しく怒り何度か小突いた。
「――逆に、信憑性が増したな。鑑定を弾ける程の偽装魔法か、その手の魔道具を着けていたのだろう」
その残念冒険者を見据えながら、ギルドマスターが決定を下した。
「ちなみに、その方は今どこにいるのだ?」
「あ、今日町を立つと言ってました!」
たわわおねーさんが、昨日の昼に聞いた話をする。
「ゲノス!直ぐに城門の兵士に、二人が通ったか聞いてこい!」
初登場のゲノス君は、はい!と元気よく飛び出して行った。
とりあえず、アルスメットの冒険者ギルドでは、神崎徹を戦力はAランク冒険者として扱う事。
実際は、ギルドマスターと神崎の協議によるのだが、それ相応の対応をとることがギルドとして決まった。
彼らの知らない所で、何かの使命を受けたどこぞの要人として、冒険者ネットワークを流れるのであった。
ちなみに、冒険者達のほとんどは顔を青くしていた。
どこぞの国の要人で、超一流の魔術師を小突いたり、文句言ったり好き放題してしまったのだ。
事故に見せかけてコロコロされる可能性もある。
すぐにここから立たねばと、護衛の仕事を受けようと画策する冒険者たち。
彼らは逞しかった。
ちなみに頑張って走って帰ってきた、ゲノス君は、
「その、もうアルスメットを立ったそうです。行き先は、ミッドガルだそうです。門番さんが、サーシャさんに聞いたそうです。歩いて行った先も、そっち方面だったそうです」
と、ですです言っていた。




