第23話 格差社会。
今日の予定の最後、冒険者ギルドに行くことにする。
冒険者ギルドの中は閑散としていた。
この時間は確かに少ないが、少なからず冒険者がたむろしていたのだが、今は冒険者の姿は無い。
不審に思い、そのまま二階のギルドカウンターで話を聞くことにする。
「こんにちはたわわさん。今日はギルド内静かですね」
「あ!?サーシャさんと神崎さん!さっきまで待っていたんですよ?」
うん?とサーシャと二人で首を傾げる。
「えーと、僕らなんかしましたっけ?」
「ゴブリンジェネラルの討伐に、ギルドマスターとクマさん、そしてCランクのパーティーが4つ、Bランクが2人、総勢27名の討伐隊が結成され、先程出発したんですよ」
出来ればサーシャさんに、その中に入ってもらいたかったのですが……。
と、神をついで扱いする。
カレーなら福神漬けである。
「でも私、Eランクなので、Cランク以上のクエスト受けられませんよ?」
「あ、そうでした!お二人は昨日の功績から、ギルドポイントが発行され、ランクに変動がありました」
とそう言いながら、新しいギルドカードを持ってくる。
「どうぞご確認ください」
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Dランク冒険者 神崎 徹 年齢33
所属アルスメット支部
備考
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ランクが上がっている!
ほうほう、良く分かってるじゃねーか!
ちらっと、サーシャのカードを見る。
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Cランク冒険者 サーシャ 年齢17歳
所属アルスメット支部
備考
戦闘能力はBランク認定
Bランクの討伐系クエストも可能である。とギルドマスターとクマ両名による許可が出た。
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……。
一瞬でもドヤった自分が恥ずかしい。
「凄い事なんですよ。私が勤務する中で初めての扱いです。護衛は結構難しいので、Cランクまで上がるのは早くて1年以上かかるのが普通なのですが、一週間ほどで上がるなんて聞いたことがありません!」
先の襲撃事件での活躍により、サーシャのギルドポイントが加算されたのであろう。
普通そういうのって、主人公が上がるもんじゃないの?
「えっと、このBランクの件はどういう事なのでしょう?」
「それも説明しますね。冒険者に登録した時に、Cランク以上はなるかならないか、選択制だと説明したと思います」
たしかにそんなこと言っていたな。
まだまだ先だと思っていたから、適当に流していたけど。
「今サーシャさんはCランクですが、戦闘能力だけで言うと、Bランク以上あると、ギルドマスターやクマさんが太鼓判を押しています」
まじか、俺が行った時には、何匹かが散発的に襲ってくる状態だったから、サーシャの活躍みてないんだよなー。
といっても、サーシャのステータスは相当高いからな。プラス、神の加護かかければゴリラ以上だし。
「なので、もしBランク以上に上がりたい場合は、冒険者ギルドにその旨を伝えてください。普通は戦闘技術で躓くのですが、すでに、そこはクリアされています。後は、どういった知識が必要になるのかお教えします。その後、試験に合格すると、晴れてランクが上がるという仕組みです」
たわわおねーさんはサーシャの方を見据えながら、
「どうなされますか?Bランク以上に上がるのであれば手続きを進めますが……」
「いえ、このままで大丈夫です」
一蹴した。
それはもうズバっと切り伏せた。
「えっと、一応当ギルドとしましては、上に上がって頂く事をお願いしたいのですが」
たわわさんは、それにもめげず果敢に攻め込む!
「今のところ不自由しているわけではないので、このままでお願いします」
しかし、相手はあのサーシャだ!
簡単には懐に入れず、そのまま突き放しにかかる!
「そう、ですか。残念です」
と、たわわおねーさんは、これ以上の交渉の余地がないことを悟りすぐに撤退した。
そんな二人のやり取りを、突っ込みを入れながら寂しく見ている奴が居た。
俺だった。
「あ!サーシャちゃんじゃないですか!」
と、昨日もサーシャの事を語彙力の足りない感じで、大絶賛していたカウンターの女の子が来た。
わーいという感じでサーシャに抱き着く。
あれだな、親戚のおねーさんに抱き着く姪っ子みたいな感じだな。
「こらメル。貴方は今仕事中でしょうが」
業務を捌きなさい。
と、すかさずたわわさんが注意をはさむ。
注意を受けてカウンターに戻る少女。
「はーい!……貴方がサーシャちゃんのお連れさんですか?」
「うん?まあそうなるかな。なんか用でもあったかい?」
「いえ、なんかこう……不釣り合いというか、なんというか」
「ごふっ」
何という娘だ。
躊躇なく心を殺しに来た。
確かに、おっさんと美人女子高生さんとじゃあ釣り合いはとれていない。
しかも、日本人顔と外国人顔じゃあ違和感しかないわな。
「――話は以上ですか?」
とそんなことを考えていたら、サーシャが話の締めにかかるらしい。
ただ、声のトーンが低い気もするが。
「あ、ちょっと待って、サーシャの報奨金みたいのと、一昨日受けたクエストの終了をしたいんですけど」
「え、ええ。少々お待ちください。――まず一昨日のクエストの成功報酬が40000ギルです。神崎さんには、昨日ニット村の方々の護衛料として10000ギルの追加報酬が出ます。サーシャさんには、護衛料と防衛と討伐のトータルで70万ギルが支払われます」
「え、そんなに出るの?」
なんでや!
俺の70倍ってどういうことやねん!
俺だって頑張ったやん!
「はい。護衛料は一緒なのですが、ホブゴブリンの討伐で、約200体倒しています。一体3000ギルの討伐料で60万ギル、防衛成功として9万ギルのトータル70万ギルとなっております」
「ちなみに、僕の防衛成功の報酬は……」
「……出ませんね。他の冒険者の方々の証言により、何もしてないとの証言が出ていますので」
ぐ、ぐうの音も出ない。
確かに、遠くからサーシャを眺めていただけだな。
周りの人から見たら、あいつなんだ?ってなるよね。
なんか急に恥ずかしくなっちゃった。
ショボーンとしていたら。
「神崎さん、ギルドでの用事は以上ですよね?帰りましょうか」
「うん?まあそうだね。帰ろうか……」
「えっ?サーシャちゃんもう帰っちゃうんですか?ジェネラル討伐のクエスト今からでも受けれますよ!」
「いえ私たちは、明日の朝にはアルスメットを発って、ドワーフ領に行く予定ですので。早めに帰って寝ます」
とばさっり切った。
「「えっ?明日街から発つのですか?」」
ギルドカウンターで声が重なった。
「はい、では」
行きますよーと、ずるずる引きずられながら冒険者ギルドを後にした。
カウンターでは、ちょちょっと待って!と言っていたが、カウンターには阻まれ俺らの事を見送ることになった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あれからお風呂に行って、沈んだ気分を立て直し、いつもの宿屋の一階で晩御飯を食べた。
後は寝て明日に備えるだけだが、やっておかなければ成らない事がある。
そう土下座である。
いや別に、土下座したいわけじゃないんだよ?
神の加護をアイテムボックスに入れときたいのである。
サーシャの魔力量だと、連続使用できる神の加護は5回が限度らしい。
なのでとりあえず4回お願いしに来たのである。
「サーシャさん、神の加護をかけてください」
ノックをして、入って良いと言われて入った瞬間に、この男土下座である。
「さすがに早くないですか?土下座するの……」
呆れたようにジト目を向けてくる。
そんなわけで、今日も土下座プレイは絶好調であった。
そして、これのおかげで、少し元気になった神崎徹である。
土下座プレイにハマってきた神崎徹、この世界の神である。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
神崎とサーシャが去った後のギルドカウンター内。
「メル。ダメじゃないあんなこと言っちゃ」
「えーでも、凄くさえない感じだし、鑑定で見ると普通の人なんですよね?」
「仮にそうだったとしても、サーシャさん怒ってたわよ?」
「うーでも、あんな人と一緒にいるより、もっとすごい人と一緒の方がいいに決まってます!」
「それを決めるのは貴方じゃないでしょうに……」
今日のギルドは、昨日のゴブリン達の襲撃により閑散としていた。
商人たちの護衛でなり立っている、アルスメットの冒険者ギルドでは、今回のような事が起きると、安全が確認できるまで商人は街に引き籠ってしまう。
なので、ギルドに依頼が来なくなってしまうのである。
そんな暇なカウンターでは、
「にしてもサーシャちゃん、あの人になんかされたのかな?」
「何かって?」
たわわおねーさんは、いつも出来ない業務をここぞとばかりにやり始める。
「だって、なんか弱みでも握られないと、あんな人に畏まる必要ないじゃないですか!」
「まあ、その可能性もあるけれど……」
「だから私が、サーシャちゃんを助けるんです!」
はあ、とため息をつきながら、たわわおねーさんは、問題だけは起こさないで頂戴と切に願うのであった。




