第21話 光ある所に影あり!
あれから一息ついた俺は、ゴブリンが襲撃しているだろう方向とは違う場所から、アルスメットの町中に入った。
城門の人は年配の方で、親切丁寧に対応してくれた。
これが普通だと思うが、舌打ちされないのもさみしい……訳が無い。
あの野郎。
とりあえず、どんな状況なのか冒険者ギルドに行って確認しようと思う。
門番の人が言うには、ニット村から逃げてきた人の情報により、襲撃してきたゴブリン達を現在迎え撃っているらしい。
無事にサーシャ達が、逃げられたらしく安心した。
駆け足で冒険者ギルドに向かう。
心なしか、町中も緊張に捕らわれているが、それほど混乱は見受けられない。
この世界では割と普通の事なのかもしれないな。
と考えていたら、冒険者ギルドに着いた。
冒険者ギルドのドアを開けると、職員の人達がてんやわんやしていた。
「Cランクの大剣さんは、まだ近くに居なかったっけ!?」
「いや、もう何時間も前に出発しちゃいました!それより、火炎のおじー様は?」
「いや、あの人も、・・・・・・」
「なんたらかんたら!」
「うんたらかんたらだから!」
お、おう。
多分、防衛の人数が足らないのかな?
でも、魔法も撃ちきったし、神の加護もないから近距離戦も出来ないしな。
まあ時間があれば、魔法のストックを作る事は出来るのだが……。
今日は疲れたしな。
とりあえず聞いてみるか。
「すみません。今どういう状況ですか?」
「あ、神崎さん無事だったのですね!聞きましたよ。あなた方のおかげで、迅速に避難が出来たそうじゃないですか」
と、いつものたわわおねーさんが、感謝を述べてくる。
「まあ、それも仕事の内だと思いますが……サーシャはどこです?」
内心では褒められた、よっしゃ!
と思いながら、謙遜しつつ聞いてみる。
「あ、そうでした!サーシャさんは、ホブゴブリン達の襲撃の防衛と、殲滅に協力していただいています!」
まじか。
――ジェネラル倒しといて正解だったな。
サーシャがケガするのとか見たくないし。
そのころのサーシャは、アドレナリンドバドバの状態で、一心不乱にホブ達を屠っていた。
「神崎さんにも手伝ってもらいたいのですが、いかかでしょうか?一応緊急クエスト扱いなので、報酬とギルドポイントが多めに出ます」
緊急クエストって言ってもなあ、もうゴブリンジェネラル倒したし、後は駆除するだけだろうしな……。
「いや、サーシャと違って俺そんなに強くないので。それに、後は残党の処理でしょ?」
たわわおねーさんは、訝し気に、はあ、と言って曖昧に笑っていた。
「ふむ・・まあ確認がてら、無理はしない程度に行ってきますか」
と場所を聞いて、緊急クエストの手続きだけしてもらい、冒険者ギルドを後にする。
残されたたわわおねーさんは、あいつ状況分かってんのか?と思ったとか思わなかったとか。
城門から外に出ると、血の匂いが風に乗って鼻につく。
あれだけ魔法で倒した時は、感じなかったのに今は強烈に匂ってくる。
城門の警備兵は、冒険者だという事を伝えるとすぐに通してくれた。
城壁近くは、ホブゴブリンの死体しかなく、今はもう少し行った所が戦場らしい。
正直、ホブゴブリンが向かってきたら、しっぽを巻いてすぐに逃げる!
使える物はテレポートだけだからキツイ!
まあ歩きながら、雷魔法は溜めているんですけどね。
それでも、本格的な戦闘は避けたい。
にしても、本当にホブゴブリンしかいないな……。
体力が多くて、素早いホブゴブリンを追跡に向かわせ、足止めの排除には、ゴブリンの数で当たらせるとか、やっぱりあいつ強かったな。
流石は、我がライバル。
心の強敵よ!
また来世で、拳を突き合わせようぞ。
お、居た居た。
……?
……。
いや、なんでサーシャだけ戦ってんだよ。
周りの奴らは、キラキラした目でサーシャを見てるな……。
少し離れた所に、戦斧を持った、ツルっとした強面の大男が居た。
「クマ!後の指揮は任せる!俺は街に戻って、市長連中に報告と明日以降の予定を決めてくる」
「わかりました。この感じなら、今日はもう大丈夫でしょう」
「うむ。お前が帰ったら、ギルドの方も頼んだぞ」
「了解です」
あれは、納品カウンターのおっちゃんか……。
クマさんの方がでかいけど、権力的には禿の方が上と。
そんなことを考えていると、街に向かう戦斧の人が近くを通って行った。
もちろん、睨まれました。
心の声聞こえてないよね?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
それから少しして、この周辺に居るホブゴブリンを一掃したサーシャは、息を整えながら周りを見渡す。
「ッ!神崎さん!!」
と、こっちに気付いたサーシャが、弾丸のように突っ込んでくる。
やめて!
あなたの一撃だと、僕一瞬で肉塊に変わるから。
「よっ、お疲れさん。ケガはないか?」
「はい!大丈夫です!」
珍しくテンションが高い。
ストレス発散でも出来たのかな?
「神崎さんは大丈夫ですか?ケガとかあれば、すぐに神聖魔法かけますよ?」
「いや、特にケガとかないな。疲れたけど……。」
「えっと……。結構、無茶したんですか?」
いや、と首を振り少し考える。
別に死にそうになった覚えはない。
まあ、当たったら死んでいたけども。
とそんなことを考えていると、
「お、お疲れ様です!俺、レオナルドって言います!お名前聞かせてもらっていいですか?」
「おい!抜け駆けすんなよ!あ、僕Cランク冒険者のシェークスピアって言います」
「いやあ、すげーなねーちゃん!これから祝勝会でもどうだ?」
「おいふざけんギリッシュ!その子と飲むのはおれ達だよ!」
「ああん?」
「やんのかこら?」
「あのバカたちは放っておいて、私らとご飯でも行こうよ。強くてかわいい女の子なら、大歓迎だよ!」
「好きです!結婚してください!」
喧々囂々のカオスな状態になった。
さらに気が付いたら、サーシャの周りの輪から、奴らに追い出されていた。
サーシャはいきなりの事にアウアウしている。
おかしいな。俺、サーシャの目の前にいたはずなのだが……。
「うるせーぞ!お前ら!嬢ちゃんが迷惑しているだろうが。とりあえず、ギルドに帰ってからにしろ。一応、ここはまだ戦場だ」
この場の指揮を任されたクマさんが吠える。
さすがに、クマさん反抗できる奴は居ないらしく、みんな素直に街に戻って行く。
俺らも素直に従っていると、サーシャがするりとこちらにやった来て、ジェネラルはどうしたんですか?と小さな声で聞いてきた。
多分、襲撃の規模で、何が居たのか理解していたのだろう。
「一応片付けたよ。だからこの襲撃は、あと残党狩りで終了だね」
「――軽く言ってますけど、アレ、結構危ない奴ですからね?少しは自重してください」
まあ確かに、一発攻撃を貰ったら、やられるわけだから、無茶をしたともとれる。
「はい、ごめんなさい」
大人だからね、頭は簡単に下げれるのだよ。
「まあでも、無事だったので良いんですけど」
サーシャがこっちを見ながら、優しい笑みを浮かべた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
また追い出された。
あれ?おかしいな……。
今日、俺も頑張ったんだけどな。
サーシャと同じ卓に座っていたはずである。
気が付いたら、端っこの卓の席まで追いやられた。
俺、神なんだけど、この扱い酷くない?
あの後、討伐隊の面々は、ギルドのお風呂に入れさせてもらった。
さすがにあの格好はツライ。
特にサーシャが血生臭い格好だったし。
そして現在、冒険者ギルドの一階で、今回の祝勝会が行われている。
一応ギルド的には、ジェネラルが居る可能性と、まだまだ襲撃の可能性があるから、解決宣言は出していない。
というより、二階の奥の部屋では、クマさんや事務長、たわわおねーさん等のギルド内の中核人物達が、今後どうするかを話し合っていた。
ただ、今日の襲撃撃退に対して、人的被害がほぼ皆無だったのと、突如現れた英雄に対して、冒険者の面々が大興奮し、今回このような場が開催された。
「へー、サーシャちゃんって言うんだね!あの聖女様といっしょか!」
「おい!それは失礼だろうが!」
「にしても、戦っている時はカッコよかったけど、普通にメチャクチャ美人じゃねーか!」
「何歳なの?」
「冒険者ランクはいくつなの?えっ!Eランク?うそでしょ!?」
などなど、サーシャは大人気だ。
普通に考えて、護衛をこなした後に、獅子奮迅の働きでホブゴブリンを倒しまくった人間が、人気でないわけが無いのだが、さらに若くて美人となると圧倒的な人気が出た。
そこに、トコトコと背の小さい、ギルドカウンターの女の子がサーシャに飲み物を持て来て、
「サーシャちゃんは、すごいのです!」
と、ひたすら絶賛していた。
そしてその対極に居るのが、そう、神である俺だ。
ただ一言いわせてくれ、俺頑張ったよね?
まあ、ただ飯食えるし、いいんだけどね!
それに、俺がやった事は大した事ではないのだろう。
上級魔法や、その上の特級魔法なんかを使っているわけじゃないし、テレポートを使っているとはいえ、一人で倒せるぐらいのものだから、Cランクぐらいのパーティーなら同じ様な事が出来るのだろう。
多分、美人なサーシャだから、ここまで大人気になったのだろう。
あれが俺だったら、ふーん、で終わった事なんでしょ?
おじさんは知ってるんだから!
そのまま独り寂しく、ご飯をつつく男が居たとか居なかったとか……。




