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俺が神!?どうしてこうなった……くそっ人間どもが!  作者: いかと
商業都市アルスメット
20/85

第20話 ゴブリン舞踏会 後編


 一方そのころ、(くだん)の崖フィールドを抜け、草原を走っているサーシャ達は、ホブゴブリン共に追いつかれていた。


 とは言え囲まれているわけではない。

 ギリギリ、ケツに追いつかれた状況だ。


 そして馬車に乗った人たちは、もうアルスメットに着いているはずである。


 つまりアルスメットから、助けが向かって来ているのが見える。


 だからサーシャは、頑張って走っている人たちにひと声かけた。


「あと少しです!後ろを向かず、助けの下に走ってください!」


 それだけを言うと、サーシャは踵を返してもっとも近づいていた、ホブゴブリンの頭をメイスでたたき割る。

 そのまま動きを止めることなく、向かってくるホブゴブリン達を叩き潰していく。


 ホブゴブリン達にとって、やっと追いついた餌である。

 しかもメスである。

 近くまで追いかけていた、ほとんどのホブゴブリン達がサーシャを我先にと襲う。


 メイスを右から左にに振るった後、その遠心力を利用し、左手のガントレットで、他の個体に裏拳を放ち、一撃のもとに屠る。

 クルクルとコマのように回りながら、一撃必殺を絶え間なく放っていく。

 弾丸のように突っ込み、右手で持ったメイスで突きを放ち、右手を引きながら左フックを放つ。


 ここで少し足止めが出来れば村人は守れる。

 そして、さっさと全滅させて、神崎さんのもとに行かなくてはっ!

 サーシャはその一心で、死の舞踏を行う。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 事情を聞いた冒険者ギルドが、直ぐに緊急クエストを出した。

 どれほどの事態かわからないが、ゴブリンとホブゴブリンが群れを成し、襲撃をかけた事は事実とし、アルスメットから最高戦力である、ギルドマスターと納品カウンターのクマさんが出動した。


「おら!EランクとDランクは、村人の保護を優先!その後、街に近づくゴミをやれ!Cランク以上とクマは殲滅に移れ!あの嬢ちゃんを助けるぞ!」


 テンションマックスのギルドマスターが吠える!


 ゴブリン種と言えど、ホブゴブリンは割と厄介な相手だ。

 筋力が一般人と同じという事は小柄な分動きは素早くなる。

 

 そんな奴らが、数百匹程群れて襲って来ているのである。

 低ランクの冒険者は、数人で一匹を囲って仕留めるのが定石だ。


 言われた通りみんなが動く。 


 元Aランク冒険者のギルドマスターは、戦斧を振り回しながら殲滅していく。


「おら!雑魚共が邪魔すんな!」


 そしてギルドマスターと、数人の冒険者がサーシャの下にたどり着く。


「おい!大丈・・夫・・か?・・大丈夫そう、だな」


 ギルドマスターと他の面々は、その光景に絶句する。


 体中にホブゴブリン達の返り血をを付着させ、周りには何十体もの死体を作り上げている、鬼神のごとく、屠り続ける少女が居たら誰でも目が奪われる。


 しかし、出来る男ギルドマスターは一味違う。


「よし、嬢ちゃんを起点に、左右に展開!一匹も通さねぇようにしろ!」


 おう!と声が重なった。



 サーシャは不思議な感覚だった。

 今までこんな長時間、全力で動くことなんてなかった。

 少しでも早く、効率的に、でも相手の攻撃は当たらないように。


 体をどう動かせばいいのか?

 どこに足を下ろせば転ばないで済むのか?

 どうすれば、周りの人たちの邪魔をしないですむのか?


 一瞬一瞬の判断が状況を作り上げる中、サーシャの戦闘技術はメキメキと上達していく。

 今まで、本格的な戦闘をしたことがないサーシャにとって、ある意味初めての命のやり取りである。


 獅子奮迅の戦いは、周りに人が集まって来ても終わることなく続いていく。

 敵が居なくなるまでその舞踏は続いたのだ。


 だからか・・村人たちを助けて、駆除に駆け付けたE~Dクラスの冒険者たちや、ギルドマスターやクマさん、ベテラン冒険者たちの、熱い視線に気が付かなかった。


 そう、それは新たな”英雄”を見る視線だった。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 一方そのころ、サーシャが助けたい本命の男神崎徹である。


 盛土の上に立ち、向かってくるゴブリン達を眺めている。

 場所柄、牽制のボムを2発ほど放ち先頭の奴らのスピードを落とさせ、街道にどんどんゴブリンを集め渋滞させている。


 左右は、崖の方からは来れないだろうし、林の方も、ちらほらと居るのは見えてるが、思惑通りほとんどのゴブリンが街道を通って来ている。


「成功するといいんだけどな~」


 ありったけの風魔法を一つにまとめ、イメージは竜巻である。

 そしてその中に、土魔法で細かい砂を入れボムをぶち込むという。

 火災旋風と粉塵爆発的な物を、作ろうと画策する男、そう神崎徹である。


 火災旋風は、温度が高くないと出来ないんだっけ?

 上昇気流がうんたらかんたらとか……。

 

 粉塵爆発は密室の方がいいんだっけ?

 小麦粉下さい。


 わからん……。


「まあダメなら逃げればいいか」


 自分を納得させ実行に移る!


 砂入り竜巻は上手くできた!

 後はボムだけ。


 火魔法中級も後5発だけしかない。

 そのうち3発を放つ!


 と同時に、盛土の裏に隠れ、さらに神聖魔法中級のバリアを張り巡らせ衝撃に備える!


 すると、ボンというボムが爆発した音のすぐ後に、ボガッッンン!!っと爆発した。


 衝撃波と、爆風で体が持ってかれそうになるのをなんとか耐える。

 恐る恐る盛土から顔を出し確認する。


 濛々と砂埃と煙が立ち込める中、30メートルほど先に火災旋風が居た。

 火災旋風が、街道に居るゴブリン達を焼きながら進んで少し先で消えた。

 

「う、うむ。やり過ぎだな……」


 目の前には、ゴブリン達のグロテスクな死体があった。

 さらに、林の方は木々が爆風によって、同じ方向に倒れていた。


 にしても爆発があったって事は、気流とかは一定方向のみに向かうわけだよね?

 なんで火災旋風は消えてなかったんだろ?

 爆発と同時に爆風で掻き消えるはずだよな。


 ――魔法だからか?

 物理現象より魔法現象の方が、この世界では作用しやすいって事かな?

 そいうやボムもなんで爆発しているんだろう?

 

 わからん、まあ今はいいか……。 


 とりあえず、盛土にテレポートしどういう状況かを考える。


 300から400ぐらいのゴブリンを倒したと思う。

 正直、戦果としては十分であろう。

 時間稼ぎも、多分うまくいったと思う。


 だが不安なのが、ゴブリンジェネラルの存在だ。

 どっかにいるはずなのに、一向に姿を見せない。

 不気味だ。


 俺だったらどうするかな?

 

 とりあえず・・様子見でゴブリン達を仕掛けさせ相手の強さを調べる。

 んで、強敵なら倒せそうな状況まで待つか、その状況にするか諦めるかだな。


 ハッとして林の方を見る。

 

 俺ならテレポートで逃げられ無い状況か、逃げる前に倒す!

 なら、林の中を隠れながら近づく可能性が!

 しかし、 ゴブリンが数匹怯えたように、少し離れた所で伺っているだけだった。


 その時、頭に閃光が走る。


 と、同時に右側の崖の上を見上げる!


 そこには、憤怒に彩られた眼をした、大きなゴブリンらしきモノが居た。

 そいつは、俺と目が合うと、息を吸い込み、


 「グギャアーーーーーー!!」


 と叫び、それと同時に俺と同じような背丈の、棍棒を振り上げながらジャンプして降りてきた!


 一瞬体が硬直するが、とりあえずテレポートで距離を取る。


 ズガン!


 と、俺が居た盛り土が爆発したように消し飛んだ。


 まじかよ……。

 あれはダメだな。

 当たったら死ぬ。


====================

名前  ジェネラルゴブリン

種族  ゴブリン

役割  なし

職種  なし

位階  32

筋力  475

体力  453

精神  128

知力  130

魔力  19

器用  178

不運  5


ゴブリン種の統べる者の一種。

身長は2メートルを超す。

体重は200キロを超す。

元はニット村周辺で育ったゴブリンである。

しかし禁忌魔術により、変異させられた。

現在、ゴブリンジェネラルを頂点たとしたコミュニティーを築いている。

邪魔な存在である、神崎徹に殺意を覚えている。

====================


 うわ!神の加護使っても近距離じゃ勝てないな……。


 俺より知力があるのも解せぬ。

 脳筋なら脳筋らしく、そこは低くしとけよ!


 問題はその知力の偏りだな。

 ステータスの傾向で考えると、知識が多くても知力は上がる。

 が、ゴブリンは、知識面では人に比べて少ないはずだ。


 なら、その分の知力は、何に使われているのか?だよな……。


 そりゃあ戦闘だろうよ。


 先程からの俺の戦いは、見られていたと仮定しよう。


 今まで使った戦い方は、通用しないと思った方がいい。

 例えばテレポートで背後に回って、何かするのは予測されている。

 ゴブリンに対して何度もやったからな。


 まずは、神の加護をかけなおしてと……。


 どうしよう?

 足止めは十分出しな。

 逃げるか。


 でもなあ、コイツがアルスメットまで来たら、多分サーシャが相手をさせられる気がするんだよな。


 ステータス的には余裕だろうけど、戦闘は素人みたいなこと言ってたし……。

 そうすると戦闘特化の、こいつはキツそうだな。


 とりあえず、やれるとこまでやってそれから逃げるか!


 そうと決まれば魔法残高は……と、

 火魔法中級×2・土魔法中級×6・雷魔法中級×2神聖魔法中級バリア×2

 水と風は使い切った感じか。


 ジェネラルは警戒してこちらを見ている。


 とりあえず、不意打ちをすると見せかけたテレポート!


 自分が今いた場所の、斜め後ろの位置にテレポートする。

 すると、ブオォォンッ!と、こん棒自身の後ろに振り抜くジェネラルが居た。


 うわぁ……マジで頭がいいというか、勘が鋭い奴というか……。


 こっちを見たジェネラルと目が合った。

 馬鹿にした様に、にやっと笑いやがった。


 うざい!

 

 何でゴブリン種が強敵感出してんだよ。

 お前は俺のライバルか!

 それとも強敵(とも)か!


 ただ突っ込みをしていても良い策がでないな。


 そうすると……作戦名どこぞの錬金術師アッパー!しかないか……。


 はーと息を吐き、手順を考える。

 あまり時間もないし、最後の神の加護もそろそろ切れるだろうし。

 

 

 ――やるか!


 ジェネラルの真上、高さ20メートルほどの高さにテレポートする。

 そしてすぐさま、雷魔法中級1発分を雷のように落とす!


 ずんっ!という音と共に、ジェネラルの体がガクッと倒れ片膝をつく。

 またテレポート行い、地面に帰ってくる。

 

 そこは、距離にして20メートル程であろうか、たぶんゴブリンジェネラルなら一息で来れる距離である。


 そこから、火魔法中級を両手で一発ずつ放つ。


 すると、それを待ってましたと言わんばかりの感じで、ゴブリンジェネラルが、ラウチングスタートのように突っ込んでくる。


 火魔法中級もといボムが着弾する前、飛んでいる状態をすれ違い、こん棒を振り上げながら雄叫びを上げている。

 

 ヤバい!


 という顔をしながら、某サーシャさんが足の裏で魔法をかけるように、俺も足の裏から土魔法中級を放つ!


 やっぱり、雷魔法でダメージを受けた感を偽装してやがった!

 もともと予想をしていたし、神の目は生きていることも、余裕なのも看破していた。


 2発分を落とし穴に、残りをその落とし穴の淵から、どこぞの錬金術師の地面から生える手のように、直径70センチのドリルのような形で錬成する!


 あっちは手を叩いて地面に触らないと発動しないけど、俺は立ってるだけでいけるもんね。

 某サーシャさんのおかげです。

 はい、馬鹿な事を言いました。


 ゴブリンジェネラルが、丁度体重をかけようとしたところで落とし穴発動。

 自分の体重と今動いていた運動エネルギーが体にかかり、すごい勢いで落とし穴の淵に向かっていく。そこに、強度と速さと重さをイメージしたドリルがカウンターのように顔面にヒットした。


  ジュブルッ!!ドォン!


 という、あまり聞きなれない音の後に、ドスンっと落とし穴の中にジェネラルが落ちた音がした。


 確認の為、まずテレポートで落とし穴の上空に飛び、神の目を使い、ゴブリンジェネラルを見る。

====================

ゴブリンジェネラルの死体。

激闘の末、神崎徹に討ち取られた。 

====================


 あいつは武将か何かか。


 まいいけどさ、と、テレポートを使い地面に戻る。

 そしてゆっくり、落とし穴の淵から覗き込む。


「うわっ、グロイなー。頭どこ行ったんだよ」


 ふーと溜息をつき。

 今日は疲れたなと愚痴をこぼした。


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