第19話 ゴブリン舞踏会 前編
俺は今、風のように走っている。
青い空、澄んだ空気、遠くから鳥の声、近くからゴブリン共の、ゴフゴフとかフゴフゴとかグギャとか、うるせーよ!ちくしょう!
さかのぼる事3時間ほど前、俺とサーシャは、見事にホブゴブリンとかち合い戦闘になった。
まあ、戦闘自体は余裕だった。
というかサーシャ無双だった。
現れた5体のホブゴブリンを、メイスを振るうごとに数を減らし5振りで終わらした。
正直怖かったです。
怒らせないようにしよう。
ダメ、ゼッタイ。
そんなわけで、耳を切り落としすぐに村にもどった。
村長に事情を説明し避難を開始した。
もっと避難の説得に時間がかかると思ったが、この世界では何かあったらすぐに逃げる。
という価値観が骨身に染みついているらしい。
まあ、命あっての物種だよね。
おかげですぐに避難に移れた。
そして運が良かったのが、昨日の馬車のあんちゃんと護衛の冒険者二人がまだいたので、その馬車に子どもとお年寄りを詰め込み出発してもらった。
村人全員で40名ほどの小さな村だ。
俺とサーシャは他の村人たちと、急ぎアルスメットに向かったのだ。
それから2時間、現在山間部を抜け街道沿いの平原を速足で向かっている。
ゴブリン達にとって、人間はご飯兼繁殖用らしい。
そんなところは、ラノベと一緒なのかよ!
案の定、メスのゴブリンは少なく、他の動物でも繁殖できるらしい。
なので、折角の餌とメスが逃げてしまったので、ゴブリン達は追いかけて来てるのだ。
このままだとキツイな。
平均ステータス的には、人族の方が上なんだが追いつかれるな。
追いつかれると、最悪全滅の可能性もあるか・・。
もちろん、テレポートで逃げる手もあるが、その後の厄介ごとを考えると遠慮したい。
ちなみにゴブリン共のステータスはこんな感じだ。
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名前 ゴブリン
種族 ゴブリン
役割 なし
職種 なし
位階 3
筋力 59
体力 57
精神 14
知力 3
魔力 8
器用 21
不運 13
普通のゴブリン。
身長は1メートルほど
ニット村周辺で育ったゴブリン。
現在、ゴブリンジェネラルを頂点たとしたコミュニティーを築いている。
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名前 ホブゴブリン
種族 ゴブリン
役割 なし
職種 なし
位階 10
筋力 106
体力 89
精神 21
知力 31
魔力 8
器用 47
不運 19
ゴブリンが一段階進化した姿。
身長は1メートル30センチほど
ニット村周辺で育ったゴブリンが、ゴブリンジェネラルの影響を受け進化した。
現在、ゴブリンジェネラルを頂点たとしたコミュニティーを築いている。
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ゴブリンジェネラルが、どこにいるのか気になる。
そん事を考えながら、ゴブリンを見ると、
====================
名前 ゴブリン
種族 ゴブリン
役割 なし
職種 なし
位階 3
筋力 59
体力 57
精神 14
知力 3
魔力 8
器用 21
不運 13
普通のゴブリン。
身長は1メートルほど
ニット村周辺で育ったゴブリン。
現在、ゴブリンジェネラルを頂点たとしたコミュニティーを築いている。
ゴブリンジェネラルはニット村の家畜を食べている。←NEW
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と一行足された。
おい神の目よ……。
君はどんなけ優秀なんだい?
おじちゃんは嬉しいよ。
ただホブゴブリン!お前だけは許さん!
何でお前は、俺より筋力があるんだよ!
雑魚種より弱い神ってなんだ?
しかもあいつら、居なくなったことに気づいてから、ずっと走っているのに何で元気なんだよ!
いやまあ、理由はわかるんだけど理不尽だ!
この世界のステータスは、絶対ではない。
同じステータスでも、結果は全然変わってくる。
例えば、サーシャと同じステータスの奴が居たとして、そいつが筋肉隆々の2メートル越えだとしよう。
そうすると、サーシャの方が体重が軽く軽い分だけ早く動ける。
しかし筋肉野郎は、サーシャよりスピードは遅いが、体重が重いため威力のある一撃を放つ事が出来る。
つまり同じステータスだったとしても、いろいろな要因によって、結果は変わってくるのである。
んで現在、人族の方がステータスは高いのに、追い付かれそうなのは、村人達の恐怖によるストレスや、なれない山道の移動などで、体力をガッツリ減らしてしまっているからだろう。
その点、ゴブリン達は何も考えてないから、元気いっぱいである。死ね!
「はあ、まあしょうがないよね」
ちらほらと、ゴブリン達が襲ってきている。
サーシャは、横から近づいてくるゴブリンに、弾丸のように向かっていきメイスを一振りする。
そして帰ってきて一言、
「何がしょうがないんですか?」
「いや、……サーシャはこのまま村人の護衛続行ね。んで、俺はゴブリン達の足止めをするよ」
なっ!っと驚いた顔をした。
その顔はどっちだよ。
馬鹿にしてるのか、心配してるのかわからんな。
「それならば、私も残ります!」
おや?心配の方だったのかな?
「いや、村人の方も護衛が必要だし、正直そっちは俺にはキツイ」
魔法で戦えるとはいえ、テレポートなしの魔法使いは守ってもらわないとキツイ。
それに村人に近づかれると、巻き込むのが怖くて魔法を撃てなくなる。
一方、人の目がなく、近づかれたらテレポートで逃げれるうえに、魔法で多数を相手取れる俺としては、足止めの方が割といける気がする。
逆にサーシャは、足止めはキツイだろう。
サーシャがヤラれることはないだろうが、大半を横から逃がしてしまって、足止めにはならない。
その点護衛の方は、近づいてきたやつを一体一体、倒していけば問題ない。
それに、村人たちがケガをした時、回復できるのも大きい。
ある程度の数と時間を足止め出来れば、護衛の方は余裕だろう。
ここからなら、村人の人達もアルスメットまで走る体力はあるだろう。
サーシャも、それらに気が付いたのか下唇をかんでいる。
「心配は有り難いけど、別に死ぬ気でやるわけじゃないから、問題ないよ。それに神の加護も、後3回分あるし」
大体、神の加護一回で10分ほど持つ。
そして、この逃走劇の最中に一回使っている。
「なんかあったら、すぐに逃げるし、ボックス内の魔法が無くなってもアルスメットの街に戻るよ」
サーシャは小さな声で、わかりました。と呟いた。
とりあえず、何かあったら冒険者ギルドに言伝するから、また後で!と言い。
すぐさま迎撃準備に移る。
「絶対、無事に帰って来て下さいね!」
……そんな心配そうな顔すんなよ。
余裕がある感じで、にやっと笑い手を上げる。
「おうよ!」
さて、やりますか!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
戦いの基本は巨万とある。
例えば、弓矢なんかでは高い所から、低い所を狙った方が有利だし、風向きによっても飛距離が変わてくる。
もちろん、人数も少ないより多い方が有利だ。
基本的に、現時点での俺とゴブリン達との戦力差は結構ある。
もちろん、圧倒的な数の優位でゴブリン側に軍配は上がる。
ただガムシャラに魔法を放っただけでは、その戦力差は覆らず早々に逃げなければならない事になるろう。
こちらとしては、最低限の仕事をしなくてはならい。
つまり、それなりの時間の足止めだ。
また、出来ればそれなりの数を減らしておきたいが……。
まあそれは、出来たらでいいか!
サーシャ達と別れてすぐに、土魔法中級2発を使い、足元の土を2メートルほどの高さで盛土を作りその上に立った。
仮に気付かずに近づかれても、身長1メートルぐらいのゴブリンの攻撃なら、この高さがあればそう簡単に攻撃を受けることはない。
不意さえ突かれなければ、テレポートで距離を空けることが可能である。
距離を詰められても、囲まれても逃げられるってなかなか強いよね。
「にしても、――まじかよ。数多過ぎじゃない?一体何百匹居る事やら……」
たかが2メートルの高さである。
しかし、見晴らしの良い草原では、この高さでも周辺を一望できる。
ただし、現実を知るのも心にクルものがある。
「さて、汚物は消毒しないとね」
手をかざし、一番威力のありそうな火魔法中級をぶっ放す!
弾数は無限ではない。
だから、最小の力で最大の効果を発揮したい。
火炎放射器系は、射程と威力的に多分ダメ。
だから、相手が密集している所に爆発系の火魔法中級をぶつけたい!
ていうかぶつけたる!
一発目は30メートルほど離れているが、密集している良い場所に行った。
しかし3~4体を爆発で巻き込んだだけっだった。
これは……キツそうだな。
焼け石に水状態じゃねーか!
くそ!と思っていると、10メートルぐらいの近さまで迫られてしまった。
ヤバい!と思いつつ若干慌てながら、先程と同じような火魔法を放つ!
すると、一発目に比べて爆発が大きく、自分の顔を爆風が舐めていった。
ケガをしたり火傷をするわけではないが顔が熱かった。
そして10体ほどのゴブリンが倒れていた。
中心付近のゴブリンは、一目で死んでいるのがわかる。
周りの奴は何匹か呻いているが、戦闘は続行は無理だろう。
なるほど、ボム(火魔法中級爆発系を神崎徹が心の中で命名)を放った後、飛んでいる時も魔力を消費しているのかな?
つまり、飛距離があればあるほど威力はどんどん衰退ていくと……。
でもボムの場合、近すぎると巻き込まれるから考えないとな。
と、そんなことを考えながらボムをポンポン放っていく。
押し寄せるゴブリンの波に、8発ボムを放ったところで、回り込まれて後ろからも迫られている事に気付く。
「流石にこの近さと、量は限界だな」
と、300メートルほど後ろの、ゴブリンがあまり居ない所にテレポートする。
そしてすぐに盛土をもりもり作る。
ゴブリン達は、俺が居なくなったことに、ぎゃあぎゃあ騒ぎながら混乱している感じだ。
その間に、次の狩場を仕掛けていく。
「と、その前に神の加護かけなおさないとな」
いつの間にか切れていた、神の加護をかけなおす。
先程の狩場を無視しして進んでいた、ゴブリン達がこっちに気付き襲ってくる。
それをショートソードとテレポートで薙ぎ払いながら、水魔法中級で地面をビチャビチャにしていく。
ゴブリン達が向かってくる方向を、ある程度濡らしたところで混乱していたゴブリン達が、俺に気付いたのか波のように襲ってきた。
すぐにテレポートで第二拠点に戻る。
最初に見た時より少し減ったかな?
実際100匹ぐらいは、消毒したと思うんだけど。
まあ横からも、逃げられてるしね。
全てのゴブリン達の足止めは不可能だしな。
とりあえず、今やれることを全力でやるしかないか。
――――。
ゴブリン達が近づいて来るのを待つ。
さっきとは違い、今回はギリギリで発動する予定だ。
……よし今だ!
片手を前に出し、雷魔法中級を3発分を一撃で放つ!
バアンッッ!!っと、地面に当たって、その周辺のゴブリン達もバタバタ倒れていく。
ざっと30体ぐらいだろうか、感電で死んでるやつと気絶で倒れた奴が居る。
感電から逃れたゴブリン達が、ふごー、ぐぎゃー、ぐふぐふ、と興奮しながら警戒している。
その間に、水中級魔法でまた地面を濡らしていく。
それを攻撃だと勘違いしたゴブリン達が、ダメージが無かったことに警戒を解きまた突っ込んで来た。
うむ。馬鹿なのは良いことだ。
それを2回繰り返し、アイテムボックスに雷魔法中級が、残り1発になったところで神の加護をかけなおす。
そして、テレポートとショートソードを使いながら、足止めをしつつ場所を移動する。
そこは街道が低くなっていて、アルスメットの方を背にし、右側に高さ10メートルほどの壁、もとい崖が30メートルほどある所である。
左側は、高さ2メートル程の崖で、その先は林になっていた。
街道の幅は、8メートルぐらい、二車線道路の幅ぐらいであろうか。
その街道の崖と崖の間から、ゴブリン達が入って来れるように、崖の最後尾辺りの高い方の崖に寄りながら盛土を生成する。
「ここで、足止めは最後かな。これ以上はアルスメットに近すぎるからな~」
この先の林を抜け、草原を少し行った先が、アルスメットである。
そして最終局面である。
つづく。




