第15話 ゴリラの握力は500キロです
昨日はあの後、普通にギルドの酒場で晩御飯を食べた。
期待していた?新人いびりのラノベ的事件は特に起きなかった。
その後、アルスメットには公衆浴場があったらしく、二人でお風呂に入って宿屋に帰って寝た。
まあもちろん男女別々なのだけれど。
そんなわけで、今日は割と朝早く起き出し、冒険者ギルドに足を向けた。
どんな依頼があるのかな?という調査と、ギルドカードを発行してもらうためだ。
そういえば、昨日寝る前に受付のおねーさんに貰った用紙を見ていたんだけれど、Eクラスの冒険者は、2週間依頼を受けないとギルドカードが使えなくなるらしい。
そして停止したギルドカードを、解除するには5000ギルも手数料がとられる。
今泊まっている宿屋の一泊の料金より高いよ。
「今日から、借金返済のために馬車馬のように働くんですね。どんな依頼を受ける予定ですか?」
おい……朝からいいパンチ打ってくるな!
それでも、宿代とご飯代は奢ってもらっているというか、養ってもらっているというか。
……はい、私が女子高生のひもです。
「そうだなー、とりあえず安全で簡単な依頼で、出来れば討伐系かな?自分がどれぐらい動けるのか確かめたいし」
「神崎さんのステータスで、そんな依頼はありません」
「なんと身もふたもない。ま、まあほら神聖魔術の神の加護でオール300になるし、それ込みで考えればそこそこあるでしょ?」
顎に手をやりながら少し考えるサーシャ。
そうですね~と言いながら、にやっと笑ってゴブリンの討伐ならいけるかもしれませんね!
と馬鹿にしやがった!
ゴブリンぐらい俺でも行けるし、神の加護さえあれば。
とそんな話をしていたらギルドに着いた。
冒険者ギルド内は、ガヤガヤとした喧噪に包まれていたが、昨日来た時の雰囲気とは違っていた。
一階にあったテーブルや椅子は片付けられていて、納品カウンターの横には大きなボードがあり、その前で冒険者たちが集まっていた。
「あそこにクエスト張られているのかな?」
「みたいですね。……とりあえず私たちは、二階に行ってギルドカードを貰わないと」
だな、と頷き二階の冒険者カウンターに向かった。
昨日と違って、カウンターには受付のおねーさん方が何人か居て冒険者たちを捌いていた。
昨日のたわわおねーさんが居たので、その列に並び待つこと5分、自分たちの番になった。
「おはようございます。今日は早いですね」
おはようございますと挨拶をすると、ギルドカードですよね?と言って奥に行った。
そして戻って来て、
「お待たせいたしました。これがギルドカードです」
ほうほう、名前と年齢とランクのEと書かれたカードを手渡された。
「記入されている事柄が間違っていないかご確認ください。それと紛失された場合は再発行に5000ギルかかりますのでお気を付けください」
パーティーはどうなさいますか?と聞かれたのだが、
「二人で組むので、その手続きをお願いします」
と速攻でサーシャが返していた。
いやまあ、そのつもりだから別にいいんだけどね。
わかりました。ではとギルドカードを。
と言われたので、ギルドカードを返したら、何やら打ち込んでいた。
何しているんだろ?と思っていたらサーシャが、
「クエストはパーティー単位で受けるので、登録しとかないと、一緒にクエストを受けれないんですよ。もっと言うとギルドの貢献ポイントがもらえないという事なんですが」
「あー、そういう仕組みか、なるほどね」
と納得していると。終わりましたよ。
と再度ギルドカードを手渡される。
「今日はどうなされますか?何かクエスト受ける予定ですか?」
「そうですね、Eクラスでも簡単にできる討伐系ってありますか?」
「Eクラスですと、常時依頼のゴブリンの討伐しかありませんね」
ふむ、それしかないならしょうがない。
「……じゃあそれをお願いします」
「わかりました。常時依頼ですので、このカウンターでの受付はしなくて大丈夫です。下の納品カウンターに討伐証明の左耳を持ってきてもらえれば、その数に応じて、報酬と貢献ポイントが出ますので。あ、ついでに常時依頼として、薬草の採取もありますので、見つけたら持ってくるといいと思いますよ」
「何から何までありがとうございます。ではいってきます」
「はい。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ゴブリン達が正面でごふごふ言っている。
そして一体が錆び付いたショートソードを右手で振り下ろしてくる。
それを反復横跳びの要領で右方向にサイドステップし、すれ違いざまに自分で持っているショートソードを、左バッターのように思いっきり振り抜く!
ズジャッという音と共にゴブリンの体と頭部が離れ、頭部が体より遠くに飛んでいきダムダムと転がった。
そしてもう一匹のゴブリンが警戒して立ち止まった。
ふごーふごーと警戒心を露わにしていたので、それならと、ゴブリンの後ろにテレポートし、後ろ首をショートソードで横薙ぎに振るった。
今度は切り落とす事は出来なかったが、一撃で絶命には持ち込めたらしい。
ふー、と一息つく。近くにゴブリンがいる様子はない。
これで7匹目だがあまり罪悪感とか忌避感はないらしい。
多分だが、完全没入型の仮想現実内で、ゲームで遊んでいたからだろう。
正直ゲームのモンスターを倒すのとあまり変わらない感じがする。
モンスター系の討伐に関しては耐性が出来ているのだろう。
R18のゲームとかだと、人間が普通に血しぶきあげるし、人間を殺せるようなゲームもある。
さすがに人間を殺すようなゲームはやったことはないが、モンスターがリアルな奴は割と多く出回っていた。
そういったものも何度か触ったことはある。
ゾンビのやつなんかは、ほぼ人型のくせにモンスター扱いで、割と人気あったな~。
特にアメリカ人はゾンビ好きだよね。
「お疲れ様です。ゴブリン程度なら危なげなくいけますね」
「そう?そう言われると嬉しいけど、神聖魔術の神の加護のおかげだよね」
よく考えてもらいたい。
握力計算で、日本人の男性平均握力が46キログラムだったか48キログラムだったかだけど、これを3倍にしてるんだよ?
確か俺の握力もそんなもんだった気がするし。
約140キログラムとかどこの変態だよって話だよね。
ちなみに日本で言うと、世界的な格闘家やスポーツマンでも130キログラムぐらいが限界なんだよ?俺それ以上だよ?
そりゃあ筋肉隆々のプロレスラーが刃物を振り切ったら、力技で豚の胴体ぐらいいけるよね・・。
刀だと当時の日本人が、人間の胴体三体とかが資料にあるらしいが。
……そういえば、あの脳筋は神の加護が1.8倍とか言ってたな。
てことは……筋力1400超えるの!?100で握力46キロだから、14かけて、えーと650ぐらい?
……ぶっは!マジゴリラやん!ていうか、ゴリラ以上の握力って……やべぇ笑いが、はっ!?
どご!
「ごふっ」
「――ヒール。」
……はっ!
いったい何があった!何も思い出せない――とういうか思い出したらいけない……。
閑話休題
「まあそんなわけで、神聖魔術のバフがあれば俺でも戦えるんだね。考えてみたら、騎士団クラスのステータスになるんだから、そりゃ当たり前か」
「そうですね。もっと神聖魔術を使える私を崇めた方がいいですよ?」
なんでやねん!おれ神だぞ!
ちゃんとこの世界の主神って書いてあったんだけどな~。
「ちなみにばふって何ですか?」
「いやーバフってあれだよ。ステータス上昇効果をかける作用っていうのかな?魔法とかアイテムとかで……」
え?バフがわからない?何で?
ゲームの時のキャラクターはわかっていたぞ。
パーティー組んで仲間に指示を出すとき、バフかけろ!って仲間に声かけて通じるようになっていた。
何故なら、ゲームの中でNPCが何を知らないかをこっちが知らないからだ。
逆にこちら、ていうか世間で流れている知識はゲーム内でも通じていた。
確かにVRMMORPGなどは、それを利用して、わざと知らない体で異世界風を演出したりしていたが、アルカディアでは基本一人プレイだから、それをされると非常にめんどくさいことになるし、そういったロールプレイを求めたゲームではない。
なので、初めて組んだ仲間でもバフくれっ!と叫んだもんだ。
ふむ。するとアレだな数パーセント現実の可能性が上がったな……。
まあだからと言って、何もないんだけど。
ちなみにこの後、私の生命線である、通称【俺の加護】が無くなったため、二回ほど土下座を敢行致しました。
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本日、神崎徹の収穫出来たもの
神聖魔術上級「神の加護」×2使用したものは除く
土下座時に頭を踏まれるご褒美×2プライスレス
腹パン×1
神聖魔術中級ヒール×1




