第12話 借金は計画的に
今俺たちは、商業都市アルスメットの商業ギルドに向かっている。
何故なら路銀が底をついてきたので、商業ギルドに預けてあるお金を引き出すためだ。
ちなみに神は文無しである。
なんなら女子高生のひもである。
聖女時代のサーシャの給金は、教会に預けずに商業ギルドに預けていたらしい。
まあ自分を害するところを信用なんかできないから、当たり前と言えば当たり前か。
そして、使う機会もあまりなかったため結構な額があるとの事。
本当は孤児院に全額寄付しようとしていたんだが、ミネルヴァさんに止められていたとか。
まあ結果オーライか。
そんなわけで、顔見知りが多かったロムルスの商業ギルドではなく、わざわざここまで下ろさずにいたわけだ。
「しょうがないから貸してあげますけど、トイチですからね」
「貸してくれるのは有り難いが、10日に1割もとられちゃうの?」
「はい」
はいじゃねーよ。
いやまあ、俺の年齢の半分しか生きてない女の子に、お金を借りようとする俺が悪いんですけどね。
「ま、まあ、すぐ冒険者登録してウハウハな人生予定だし?」
「典型的なダメ人間ですね」
ジト目が辛いよ。
と、視線から顔を逸らすと、逸らした先にガラガラと檻を引っ張る馬車があった。
その中には数人の男の獣人が入れられていた。
「……多分ですけど、あれは奴隷商の奴隷ですね」
「そういえば、この世界だと奴隷は一般的なんだっけ?」
初めて見かけたもふもふが男の獣人か~。
なんか獣っ!て感じだな。現実で見ると普通に恐怖を感じる。
アルカディアでの俺のゲームデータでは、獣人は、耳としっぽ、爪、目だけが獣よりの人間型獣人から、二息歩行の獣っ!て感じの獣人まで幅広い。
同じ両親からでも獣によったり、人型によったりと個性が出る。
というかそう設定した。
何故なら両方愛でたかったからだ。
いや性的な意味じゃないよ?
「そうですね。あの方たちは多分、ここから西にあるメギト王国に連れられて行き、魔王領との防衛ライン上で、魔物とか魔獣を倒す仕事を与えれられると思います」
まあ、奴隷に関しては、一般的っていうか人族が勝手に一般的にしちゃったんだけどね。
「あ、見えてきましね。あれがアルスメットの商業ギルドです」
そう言われて目を向けると、大きめの馬車が二台すれ違えるような、大きな門を構えた建物があった。
その門をくぐると、左手には先程からひっきりなしに人が出入りしている扉があって、右手には運送会社のような倉庫らしきものがあった。
「とりあえず中に入りましょうか」
「そうだね」
そう言って中に入る。
中は、市役所のような窓口のあるカウンターと、奥には商談用なのか机といすが並んでいて、そのさらに奥にはドアが何個か並んでいた。
「うわ、人多いな」
「まあ、まだ午前中ですからね。ここで商談して、午後には各地に出発する人たちもいますから」
午後を過ぎると落ち着いてきますよ。
と説明したお後、カウンターの一つに並んでいった。
それから、10分ぐらいプラプラとしていたら、
「神崎さんお待たせいたしました」
「おーどうだった?」
「問題ないですね。ちゃんと預けていた分は引き出せそうです。とりあえずは必要な分だけにしておきました」
サーシャ曰く問題ないと言っていたが、聖女時代につくった口座だから、死んだと公表されて凍結していたり、教会に手を回されていて警備の人に取り押さえられるかな?
って思っていたけど、商業ギルドは、何よりお客さんの信頼を大切にするらしく、教会関係者だろうとどこぞの王族だろうと個人情報は渡さないし、協力もしないらしい。
「そうかそりゃ一安心。じゃあ、当初の予定通り準備して行きますか!」
「そうですね」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
てなわけで、アルスメット周辺の草原にやってきました。
この周辺の土地は痩せていて、畑にするには向かないらしく、割とほったらかしだそうだ。
まあ、人目に付きたくない俺としては嬉しい限りだね。
ついでに、お金の表記について説明しよう!
基本ゲーム時にお金は見たことがありません。
いや、数字として持ってはいたんだけど、買い物するにも数字が変動するだけで、硬貨やお札を持っていたわけではない。
しかし、現実的な状況の今、そんな訳の分からないシステムはないらしく、お金が存在します。
通貨単位はギル。
これはゲーム共通。
基本的には人族の中で流通している。
1ギル 小銅貨
10ギル 銅貨
100ギル 小銀貨
1000ギル 銀貨
10000ギル 金貨
100万ギル 大金貨 となっているらしい。
円とギルの価値の差はよくわからない。
というより、需要と供給のバランスによって値段は変わるわけで……。
そのため食事の値段は結構高く感じる。
一般人の一日の賃金が6000ギルから15000ギルらしく、これは円換算でもそんなに変わらないと思う。
しかし、この世界の食事は固いパンと薄いスープのセットで1000ギルとか、ボリュームのあるサンドイッチに2000ギルとか平気でする。
まあそれは、食材等も安定して採れるわけじゃないし、モンスター被害や天災などもあるし、現代日本のような流通システムがあるわけでもないので安い食事はありえないのだ。
逆に人の命の値段は安いのか、奴隷が安くて金貨数枚から平均で大金貨数枚あれば普通に買える。
まあ高いのは滅茶苦茶高いらしいけど。
後は歓楽街の娼婦代は割安なイメージだ。
決して行ったわけではないよ!
行こうとして調べていたら、見つかって正座なんかしていないんだから!
そして、先程下ろしたお金で、装備一式を調達した神パーティーである。
サーシャは、予備のメイスと左手にはガントレット、右手は薄手の手袋をチョイスし、ナイフとそれを携帯する用のベルト、また歩きやすいブーツとある程度の防刃・防突のあるローブ等を購入していた。
そして俺は、ショートソードといわゆる初心者冒険者セットの中古の皮装備を身に付けている。
サーシャはそれを見て、お金はあるので他のにして下さい。
と言っていたが、正直なところ俺は気に入っている。
なんというか忘れかけていた中二病が疼くというか……。
まあ、若干匂うのが気になるがこれはこれで有りだろう。
決して借金が怖くてこれにしたんじゃないよ!
ただ今の借金は13万ギルとなっております。
そして武器に関してだがこれは俺のステータスを見てもらうとわかる。
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名前 神崎徹
種族 人族
役割 なし
職種 商人
位階 10
筋力 100
体力 100
精神 100
知力 100
魔力 100
器用 100
幸運 100
特技 剣術2 交渉3 算術5 言語5
特殊スキル 神の権能(役割変更能力・アイテムボックス・テレポート・神の目)
この世界、アルカディアの主神である神崎徹が、アバーターであった器を依り代に現界した状態。
アバターと本人のステータスの差はあまりなく統合は簡単にいった。
現在は、サーシャ・クラニットと共に旅をしている。
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人生履歴テキストには、それほど不穏なことは書かれていないが、俺はアバターと統合されてしまったらしい。
これがどういった状態なのかわからないが、まあなんとかなるだろ。
……なるよね?
ちなみに、なんかうっすらとした記憶だけど、アルカディアの人々と交流を図る時に、あまりにも強すぎると、人々がかしこまって接してきちゃうから、アバターのステータス能力は平均的な一般人になっていた。
そして、RPG的な要素で邪神などと戦うときは、ドワーフの作った神専用装備を使うというわけだ。
そしてこの神専用装備のスペックがマジでやばかった。
装備時、装備者のステータス一万アップみたいな・・。
算術5と言語5は、多分だけれど地球での教育、つまり大学を出たぐらいの知識が、この世界での特技レベル5なのであろう。
交渉も仕事で営業を行っていたから、そこからきたのであろう。
少し低い気もするが……。
で、一般的な護身用レベルの剣術2という特技があったので、一応ショートソードという装備になったわけである。
これはゲーム時のアバターにもついていた特技だ。
リアルでは、剣道とかやったことないから、それが適用されたという事だろう。
というわけで、どれくらい自分が戦えるのかそれの検証に来たわけである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
青い空、うまい空気、遠くで聞こえる鳥の声……。
このまま寝れたら気持ちいいんだろうな~。
何度目かわからない地面との熱い再会に、現実逃避をしはじめる今日この頃である。
強すぎだろ!サーシャのやつ。
あれで、手加減していますからね?
って言ってたけどマジかよ!
しかもサーシャは、ステータス的な強さはあるけど、数値では表せない駆け引きや技術、経験などはほとんどない。
旅の経験は結構あるけど戦いの経験はあまりないらしい。
戦いの世界に身を置いたらマジで英雄になる器なんだな。
「ハァハァ、とりあえず俺の肉体的な面はこれで終わりにしよう」
「そうですね、私もあまり弱い者いじめは……」
やかましいは!その突込みは声に出せずに息を整えるのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
水筒から水を飲み、アイテムボックスにしまう。
サーシャの荷物も大半は俺が持っている。
怪しまれない程度に宿屋にも置いてあるが。
「さてと、本命の検証を始めますか!」
「いいですけど、結構危ないっていうか、失敗すると痛そうですね
「言うな。その場合はすぐ回復してくれよ」
「まあ本職ですからそこは綺麗に回復してあげます。一回一万ギルで」
「え?お金取るの?」
「もちろん。格安ですよ?聖女に神聖魔術使ってもらえるなんて」
ある意味ご褒美です。
といい笑顔で言いやがった。
お前の聖女は元だろ!
これから、現実的な状況になってアイテムボックスとテレポート、神の目が何が出来て出来ないかをちゃんと把握するための実験である。




