4 路地裏調査
そこからのノアとエマの動きは速かった。次の学校の休みの時には、二人は再び例の薄暗い路地にいた。方向音痴のエマが先導したにもかかわらず、無事にたどり着けたことをノアはとても不思議がっていた。エマはそれに気づいたのか少し苦笑いしつつ
「一度通った道は覚えているのよ。そうしないと私、一生迷子だもの」といった。
「確かに。それもそうだな」ノアは心の底から納得した様子であった。
しかし2人が辺りを見渡してみても、あの借金取りの男はいない。
「情報がどこにもないね。通行人とか目撃者も期待できなさそう…」としょぼくれた様子でエマが言った。しかしすぐに何かいいことを思いついた、というような顔をすると路地に並ぶ扉のうちの一つをノックした。
「すみませーん!」
ノアが「おい、やめておけよ。絶対変なのが出てくるぞ」と止めたが間に合わなかった。
「誰かいますかーー??」
ガチャ、と音がして中から出てきたのはかなり不愛想なおじいさんだった。無精ひげを生やしていて顔の下半分がおおわれている上に、なんだか赤ら顔でお酒の匂いがしていた。
おじいさんはエマとノアの顔を見るなり
「なんだよお、ガキどもが昼間に。おれさまはこれから酒を飲むんだよ!じゃますんじゃねえ!!」と怒鳴り散らした。
そしてその後すぐにバタン!!と勢いよくドアを閉めてしまった。
「「…」」
(だから言っただろ、変な奴が出てくるって…!エマのやつ、さすがにこれくらいでメソメソするタイプではなさそうだが…)とノアがちらりとエマの様子をうかがうと
「ふふふ、今のヒト、ちょっと怖かったねぇー!と」ケラケラ笑っていた。
「この調子でいろんなドアをノックすればあの借金取りのおじさんに会えるんじゃない?」
とエマが次のドアをノックしようとしたとき、二人を呼び止める声があった。
「ちょっと待ちな、そこの2人」
2人が後ろを振り返ると、そこには小太りで気が強そうなおばさんが立っていた。
「あんたたち、この辺の人間じゃないだろう、冷やかしなら帰った、帰った。…それとも何だい?金に困っているっていうのかい?だったらあたしがいい金貸しを紹介してやるけどねぇ、うひひひ」
貴重な通行人で、しかも向こうから話しかけてきた。このチャンスを逃すまいと、すかさずノアがおばさんに言った。
「やだなぁ、違いますよお姉さん。僕たちはね、お金を取り立てに来たんです。あの何だったかな背が低くて下町口調の」
「そんな奴いっぱいいるさ」
「変な輩みたいな服を着ている割にはどこか純情そうなところがありそうな男ですよ。つい最近、その男がこの辺りで借金の取り立てをしていたのを見かけまして、いい頃合いだと思ったから金を返してもらいに来たんですよ」
「はあ、今の話だとあてはまるのはゼノぐらいかねぇ。でもゼノがこーんな胡散臭いお坊ちゃんから金を借りるようには見えないんだがねえ。あんたたち、やっぱり何か隠しているね??」 鋭い眼光でエマとノアに詰め寄った。
「「…!!」」
(あーあ、やっぱりノアのお粗末な演技じゃすぐにバレちゃうのよ)
(一軒ずつノックするよりずっとマシだろ。ばーかばーか)
焦る2人を見ておばさんがニヤッと笑みを浮かべた。
「…まあ別にそんなことどうだっていいんだけどね??」
厳しく追い詰められると思っていた2人は拍子抜けしてしまった。
「仮に何か隠していて、ゼノを殺そうとしてもゼノはあんたたちみたいな腕っぷしの子にやられるタマじゃないし。でももしこれで私の見込み違いでゼノが死んでもそれは油断したゼノのせいさ。あたしがわかるのはあんたらとゼノを引き合わせたら何か面白そうなことが起こるってことだけ、うひひひひ」
このおばさんは面倒なことが起こると、いの一番に面白がるエマとノアに似たタイプであることがわかった。
「ゼノのとこまで案内してやるから、あたしの気が変わらないうちにさっさとついてきな」
「(まあ、僕たちが探している借金取りの男がゼノであると確信できたわけではないが…とにかく行ってみよう)」
エマとノアは顔を見合わせて、頷いた。
2人はおばさんの後をついていくことにした。




