3 新たな恋の始まり
次の日の学園は午後から新たなうわさでもちきりだった。
なんとあの婚約破棄されたフローラ嬢に新しい相手が見つかったというのだ。ロマンチックな求婚がお昼休みに中庭で行われたらしい。相手は隣国からの留学生、シルス・ハミルトンという名であった。シルスは太陽の輝きを閉じ込めたような金髪に、澄み渡る空の色の瞳を持つ美青年だった。寄り添うシルスとフローラはまるで物語の登場人物のような美しさがあったという。
「ああ美しい人。どうかあなたの傷ついた心に付け入る卑怯な真似をお許しください。僕はあなたに出会って真実の愛を見つけてしまったのです。僕と結婚してください、フローラ・メイフィールド嬢」
どこから聞きつけたのか学園の新聞部たちが、プロポーズの全文を掲載した号外を配り始めるものだから話題により火がついたのである。新聞記事の見出しは、愛に敗れた令嬢が見つけた真実の愛、であった。
エマとノアがこの噂を聞き、シルスの顔を拝みに行くと二人の顔はみるみるうちにこわばった。なぜなら、この前見かけた輩に追われていた若い男がシルス・ハミルトンその人だったからである。
「えー!あの人、この前借金取りに追われていた人じゃん!!」
「しかもお金の返済を迫られて結婚がどうとか言ってなかったか?」
「真実の愛ってプロポーズしておきながら本当は、お金目当てに結婚したってこと?」
「ということはつまりあの男は」
「「結婚詐欺師」」二人は声をそろえていった。
確かにフローラの実家は名門の伯爵家であり、領地に関しても安定して食物が生産できる広大な畑を有している。下手をすれば、末席の侯爵家よりも力と財力があるくらいだった。結婚という形でフローラの家と関係を結べば確かに借金の一つや二つ簡単に返せそうなものである。
「せっかく幸せをつかんだフローラ嬢をまた傷つけるのはどうかと思うけど、あのまま騙されている方がもっと気の毒だと思うから正直に伝えた方がいいんじゃないかしら」とエマがそっとノアに言った。
「甘いね。見かけたからといって証言しても証拠がなければ、嘘つきは僕らの方になるぞ。僕は人様の幸せより自分の命が惜しいたちだ。」ノアが首を振りながら答えた。
「なら証拠を持ってくればいいじゃない」とエマが真顔で言ってのけた。
「え??」
「だから証拠を持ってくるのよ。あの男が金目当ての結婚をしようとしている詐欺師って証拠をね。もしかしたら万に一つ私たちの勘違いかもしれないし、本当はそれが一番いいんだけど。とにかく調べてみましょうよ、あの人の事!」
こういうことをつい面白がってしまうのがノアの性分である。そしてエマはそんなノアの性格をよーく知っていた。




