6 生徒会に入るには
ハートフル学園の生徒会役員には品格、知性、人々を導く力が必要とされている。
品格や導く力というのは明確な基準が存在しないのに対し、知性はその評価基準がすこぶる分かりやすい。一か月後に迫る、期末テストの順位である。
「生徒会に入りたくば、一年の期末テストで上位3名に入れ」
という言説が囁かれるくらいテストの成績と生徒会は密接な関係があった。実際に、現生徒会役員のアルベールとイザベラは1年の期末テストでそれぞれ1位と2位を獲得していた。
「あいつは次の期末テストを死ぬ気で仕上げてくる。でも、もし3位以内に入れなかったら?生徒会入りから遠ざかるのは確定だ」ノアはうきうきで言った。
「なるほど、リリアーナさんを三位以内に入らせなければいいのね!
…………それなら私に良い方法があるわ!名付けて、平均点爆上がりで埋もれさ戦法よ!」
「名付けのセンスが壊滅的だな、
それに随分と回りくどいやり方だ」
「でもノア。いくらリリアーナさんを三位以内にいれたくないからって、あの子の勉強の邪魔をするのはよくないじゃない。憎い相手だけど勉強した分だけ報われるべきよ。私たちがもっと頑張って追い抜かせばいいの、簡単な話」
「確かに言いたいことは分かる、卑怯な手を使えば向こうに付け入る隙を与えることになるな」
「…………うーん、まあ、そういうこと!」
ということで、二人は周囲の平均点を上げることによってリリアーナの生徒会入りを阻止しようと目論むのであった。
「そうと決まれば、平均点を上げるにはどうすればいいのか考える必要があるな。……ちょっと待て。エマは特待生だろ、学年で上位をとるのは容易いんじゃないのか?」
「うーん、まあ確かにできないことはないけれど。
他の2つの要素がないから、多分生徒会入りは無理なんじゃないかな。
だから、私が上位になっても実質あまり意味がないと思うのよ」
「ああ、確かに品格の部分が……。なるほど納得だ。」
「ちょっと!!聞こえているわよ!」
「なら、過去問を配るのはどうだ?僕の兄さんは学園では勉強なんか一切しなかったが、過去問のおかげで落第は免れたと話していたよ」
「なるほど!それはいい案ね!もしかしたらイザベラ様に譲ってもらえるかも!」
その日の放課後、2人はイザベラの下へ向かった。イザベラは2年の教室棟でエマとノアを見かけると自ら声をかけてきた。
しかし、2人が
「過去問を譲ってもらえないでしょうか」
と頼むと困ったように眉を下げた。
「可愛い後輩の頼みですもの、わたくしもなんとかして差し上げたいのはやまやまなのですが………。
実は去年からテストが終わると問題用紙を回収することになってしまったの」
「「え!」」
「どうやら過去の先輩に、過去問だけで三年間の勉強を乗り切った方がいらっしゃったみたいなのよ。
その方は普段、一切勉強しないのにテストの成績は良かったんですって。ギルベルト先生がおっしゃっていたわ」
「……。」
ついさっき聞いたことのある話だと思い、エマはノアをちらっと横目で見た。
ノアは心当たりしかないというような顔をしていた。
イザベラに礼を言い、2人は二年の教室棟を後にした。
廊下を歩きながらノアが言った。
「過去問のあても外れてしまったな、どうするエマ?」
エマは少し考え込んで
「そうね……。過去問がないなら、作ればいいのよ!」
「それはつまり、僕たちでテスト問題を予想するってことか?」
「そういうこと!」
「ふーん、なんだかおもしろそうじゃないか」
エマとノアはテストの予想問題を作成することに決めた。
「しかし、一週間前に配布することを考えると、作成に充てられる期間は二週間くらいしかないぞ」
「ふふん、ノア、一体私を誰だと思っているの?もう既に、テストに出てきそうな部分をまとめたものがここにあるんだから!」エマは得意げな顔をして五冊のノートを取り出した。
ノートをパラパラしながらエマは続けた。
「例えば、リンドベル史のアーリア先生は毎回小テストを行うでしょう。その時に問題に出されたものをまとめると何となく傾向が読めてくるの。数学のギルベルト先生は、授業の練習問題で簡単な問題と難しい問題を混ぜて生徒を試しているように見える。おそらく、次のテストは生徒が解けるぎりぎりの難易度の問題で攻めてくるはず。他にも、言語学のヒーコック先生は授業中に左手を…………」
「エマ、お前本当に特待生だったんだな」
「そうよ、私特待生よ」




