第四話 ハム公と勇者
かつてない強敵を相手に二人と一匹は追い込まれていた。
「ハム公っ!下がれーっ!!」
勇者の言葉も届かず、捨身の一撃を放つハム公。
ハム公の身体が真っ二つになりかける代償に、敵が怯む。
「、、、ーっ!」
刹那、勇者が敵の首を切り飛ばす。
同時に、賢者が決死の表情で遡行魔法を放つ。
「ハム公っ!、、、お願いっ!」
その瞬間、ハム公の時間は巻き戻り、傷は塞がった。
「ハム公に昨日の記憶はない」
昨晩の戦いで疲れた様子の勇者が呟く。
「そうね」
「ハム公なんて危うくスライスハムになるところだった」
勇者が冗談を混えて続ける。
昨日の相手は強敵だった。
実際のところ、かなりの劣勢でハム公が捨て身の一撃を仕掛けなければ全滅もあり得た。
その代償に、ハム公は危うくスライスハムになりかけたのだが。
賢者の遡行魔法が僅かでも遅れていたら、今頃はパック詰めされて、朝市に並んでいたことだろう。
「あんなことがあったのに、今日の方が動きも良かったくらいだしな、、、」
「、、、そう、ね」
当のハム公は昨日のことを覚えていない。
その事実に勇者は身震いする。
まだ旅は続く。
きっとハム公は明日も変わらず勇敢に戦う。
ハム公が恐れることは決してない。
「、、、ハム公とはここで別れよう」
勇者の声色が変わる。
「、、、今はそれしかない、、、よね」
このままでは近いうちに命を落とすかもしれない。
2人は目線を合わせず頷き合う。
勇者は安堵した。
自分の本心を賢者に悟られなかったことに。




