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第十九話 ハム公と宿屋
その晩、二人は近くの村で宿をとることにした。
受付の呼び鈴を鳴らしても、誰も出てこない。
奥で物音はしているから留守ではなさそうだ。
しばらくすると、
「お待たせしてしまい、申し訳ございません」
と、疲れた様子で女性が出てきた。
「二人、一泊でお願いします」
受付を済ませる。
部屋に荷物を置いて、食堂に向かう途中、二人はずっと無言だった。
食堂では、そこまでお客さんがいるわけではないのに女性がせわしなく動き回っている。
「忙しそうですね」
勇者が女性に気を遣って声をかけると、
「お待たせして申し訳ございません」と、再び謝られてしまった。
そのやりとりを見ていた後ろの席の男が、勇者に話しかける。
「実は先日、宿屋の主人が亡くなっちまってな」
勇者と賢者の表情が凍りつく。
「近くの洞窟に魔物が棲みついたかもしれないって、昔腕利きの冒険者だった宿屋の主人が様子を見に行ったのさ」
やめろ。
「しばらく帰ってこなかったから、俺が様子を見に行ったんだよ」
やめてくれ。
「そしたら変わり果てた主人の姿があって」
お願いだ。
「運良く魔物は留守だったから、旦那さんの遺体は回収できたんだけどな」
ああ。
勇者は拳を強く握りしめた。
これだけは賢者に聞かせたくなかった言葉だった。




