第4話 前編
その後、シークとミラは森を出て街道を歩く。
容赦なく照り付ける陽光に対し、シークは仮面と外套で対抗する。
しかしそれでも体調は万全ではなく、気だるそうに歩いている。
一方で活力を取り戻したミラは、これまでの経緯を饒舌に話していた。
「監視任務を与えられた私は、ハイドーン家の動向を探っていた。不審な動きがあれば即座に本家に連絡し、吸血鬼による被害を防ぐためだ」
「へえ、それで?」
「ハイドーンの敷地内で戦闘が勃発し、私はすぐに様子を確かめようとした。しかし周辺は血の結界で覆われており、突破に手こずってしまった」
「なるほど。そこから夜明け頃に結界が解けて俺と遭遇したってわけだな」
「その通りだ」
ミラは苦い顔になって頷く。
己の敗北にはあまり触れられたくなかったらしい。
ところがシークの関心は他の部分にあった。
「本家に連絡って言ってたが、どうやって伝えるつもりだったんだ。念話の魔術が使えるのか?」
「念話ではなく通信の魔道具を使う。これなら魔術適性がなくとも手軽に連絡できる。無駄遣いすれば内部の魔力が切れるが、普通に運用するぶんには問題ない」
ミラはペンダント型の魔道具を見せて説明する。
シークはまじまじと見つめながら感心した。
「すげぇな……魔道具がここまで発展しているとは」
「吸血鬼は魔道具に頼らないそうだな?」
「ああ、魔力の相性が悪いのもあるが、道具に依存するのは弱者だって思想だ。馬鹿げてるよな」
シークは皮肉っぽく笑ってみせる。
するとミラは、少し言いづらそうに切り出した。
「身内を殺した件もそうだが、貴様は吸血鬼を心底から嫌っているのだな」
「貴様じゃねえ。シークだ」
「……シーク。君が同族を憎む理由はあるのか?」
「話してやる義理はねえよ」
「何ッ!?」
「誰だって秘密の一つや二つはあるだろう。吸血鬼にだって隠したいことはあるもんさ」
「そう、か……」
平然と応じるシークに、ミラは真剣な表情で考え込む。




