第3話 後編
シークの発言を聞いたミラは固まる。
彼女は後ずさりながら愕然としていた。
「聖気を使う吸血鬼なんて聞いたことがない……それに、偉大なる聖騎士の名を口にするとは」
「隙ありだ」
距離を詰めたシークが掌底を放つ。
魔力を乗せた一撃がミラの腹部に炸裂した。
ミラは目を見開いて身体を折る。
「がっ!?」
さらに追撃が彼女の側頭部に直撃した。
脳を揺らされたミラは、白目を剥いて気絶する。
優れた再生力を持つ吸血鬼を瞬時に無力化するための妙技であり、シークが前世で使っていたものだった。
倒れたミラを前に、シークは頭を掻いて呟く。
「さて、どうしたもんか……」
◆
数時間後、意識を取り戻したミラは森の中にいた。
彼女は縄で拘束されて横たわっている。
そばではシークが焚き火を作って肉を齧っていた。
我に返ったミラは身をよじって焦り出す。
「き、貴様! 私の血を飲むつもりかっ!?」
「違う。会話したいだけだ」
「会話……?」
ミラは首を傾げて戸惑う。
肉を飲み込んだ後、シークは堂々と言葉を続けた。
「俺は聖騎士ダエル・ハートンの知り合いだ」
「嘘だ! お前は若い吸血鬼だ! ダエル様の時代には生きていない!」
「吸血鬼は不老不死に近い体質を持つ。外見だけじゃ実年齢を推測できない。たとえ子供の姿でも、実際は数百年を生きる怪物の可能性がある……聖騎士として最初に習わなかったか?」
「くっ……」
シークからの指摘に、ミラは悔しそうに呻く。
動転するあまり、基礎的な知識を失念していたことに気付いたのである。
一方、シークは肉を置いて立ち上がる。
「他にも知り合いの証拠はある。ダエルから教わった技を見せてやろう」
シークが両手を合わせて意識を集中させる。
すると、手の間で青と白の光が混ざり合って炎のように噴き上がった。
焼け焦げた手を振りつつ、シークは冷静に解説する。
「聖気と魔力を練り合わせてみた。現在の聖騎士も習っているか?」
「い、今のはまさか……ハートン家の失われた奥義!?」
「は? 奥義? ただの小技だが……」
シークが困惑していると、ミラが突如として己を縛る縄を引き千切った。
彼女はシークに詰め寄って両肩を掴んで告げる。
「吸血鬼、ついてきてくれ。ハートン家の皆に貴様を紹介しなくてはならない」




