第2話 後編
シークが成人の儀の広間に到着すると、待機していた吸血鬼達が殺気を向けてくる。
しかし、彼が両手で引きずるものを目にした瞬間、戸惑いや驚きへと変わった。
シークは双子の兄弟アルンとケルンを掴んでいた。
二人は満身創痍で血を垂れ流している。
四肢は複雑骨折し、顔面は原形がわからないほど腫れ上がっていた。
吸血鬼の再生力を発揮できないほど双子は衰弱していた。
周囲の視線を浴びるシークは平然と弁明する。
「こいつらが因縁をつけてきたせいで遅れた。ハイドーン家において、弱者こそ悪であり淘汰されるべき存在と習った。文句ならこの二人に言ってくれ」
シークの主張に誰も言い返せない。
ところが一人だけ笑う者がいた。
ハイドーン家の現当主グラン・ハイドーンである。
マントを翻したグランは、シークの前まで歩いていく。
「シーク……落ちこぼれを演じてきた曲者め。豪胆な言動を裏付けする実力に、同族への憎悪。血の魔術を使えないにも関わらず、純粋な力で吸血鬼を叩きのめす。まるで人間の聖騎士のようだ」
「…………」
「まあよい。貴様の主張は間違っていない。弱者こそ悪だ」
グランの手には真っ赤な血の杯があった。
それをシークの前に差し出して尋ねる。
「シーク、貴様の望みは?」
「吸血鬼狩りだ」
シークが血の杯を手で払い落した。
杯は床に衝突して砕け散る。
彼の暴挙に吸血鬼達はどよめき、今にも襲いかかりそうな怒気を発した。
一方でグランは動じない。
むしろ嬉しそうに笑みを深めてみせた。
「噂通り、まさしくハイドーン家の恥さらしだ……そのような戯れ言を、堂々と言ってのけるとは。蛮勇にもほどがある」
「どうして喜んでるんだ」
「貴様の思想は狂っているが、その強さは本物である。ハイドーンは強者を重んじる。シーク、貴様を認めよう。外の世界で存分に力を振るうがいい。ハイドーン家の名を知らしめるのだ!」
「命令すんな」
聖気を込めた手刀がグランの首を断ち切る。
驚愕に歪んだまま宙を舞う頭部。
その頭部を追撃の手刀が八分割して完全に蒸発させた。
電光石火の早業でグランを殺害したシークは、己の聖気で崩れる右手を一瞥してぼやく。
「あーあ……ここは穏便に済ませて、後から策を打つつもりだったが仕方ねえな。偉そうな吸血鬼のせいで我慢の限界だったんだ。皆殺しにしてやるよ」
真紅の瞳を輝かせてシークは宣言した。




