第8話 前編
突き刺された吸血鬼は、体内に聖気を流し込まれて崩壊していく。
絶大な苦痛に断末魔の叫びを上げながら、間もなく完全に消滅した。
愛剣の威力の高さに、シークは感心しつつも首を傾げる。
(相変わらず強力だが……妙な力が混ざってやがる。刺した瞬間、相手の血を吸っていた。こんな機能はなかったはずだ)
シークは剣をじっと観察する。
そうして注視していると、彼はかつての宿敵の気配を感じ取った。
「吸血鬼の王ザック……あいつの血が沁み込んだから吸血能力を得たのか」
シークは前世でザックと相討ちとなった。
その際、ザックを殺害したのは現在の剣だった。
刃にはザックの魔力が浸透しており、禍々しい力を仄めかせている。
(相手の力を奪いながら聖気を打ち込む……昔より強い武器になったな。ザックに感謝するのは癪だが、まあいいか)
剣を鞘に戻したシークはミラを呼んだ。
駆け付けたミラにシークは説明する。
「作戦変更だ。この剣の力を使えば、結界を一気に剥がせそうだ」
「そんなことが可能なのか!?」
「たぶんな。少し離れていろ」
シークは剣に大量の魔力を流し込む。
そして、刃を結界に突き刺した。
魔力から変換された聖気が炎のように噴出し、結界をぼろぼろと崩していく。
結界はじわじわと修復し始めるが、圧倒的な破壊を前に間に合っていなかった。
「ぐあわああああああああっ!」
「結界が崩れているぞ!?」
「逃げろ! すぐさま結界を再構築するんだァっ!」
渓谷に隠れていたファジオンの吸血鬼達が日光に焼かれて悶絶している。
まだ生きている者は、急いで物陰に隠れようと必死だった。
その中でも手練れの吸血鬼は襲撃を察知し、渓谷を高速で這い上がってシークとミラに攻撃を仕掛ける。
「吸血鬼と聖騎士っ!?」
「動揺を見せるな! とにかく殺せ!」
襲いかかってきた吸血鬼に対し、シークは剣を振るって対処する。
斬撃を受けた者は、傷から侵入した聖気に侵されて崩れる。
そこにミラが追撃を与えて始末していった。
シークほどの洗練されていないものの、彼女のすべての攻撃には聖気が込められている。
いずれも吸血鬼を葬るには十分だった。
(ファジオンも大したことがないな。結界と血の糸だけが取り柄か……)
返り血を浴びるシークがそう考えた時、彼に向かって何かが飛んでくる。
咄嗟に斬ろうとしたシークだが、咄嗟に手を止めた。
飛んできたのはまだ幼い人間の子供だった。
「!?」
シークは驚きながらも子供を受け止める。
刹那、背後から叩き込まれた血の刃がシークの背中を切り裂いた。




