第7話 後編
「な、に……ッ!?」
驚愕するミラが首のない馬から転落する。
間を置かずにシークの馬も同様に首が斬り落とされた。
剣を抜いたシークは嘆息する。
「さっそく襲撃だ」
「どこからだ!? 攻撃が見えなかったぞ!」
「視覚に頼るな。相手の魔力を感じ取れ。そうすれば――対処できる」
助言をしつつシークは剣を一閃する。
甲高い金属音が鳴り響き、赤い糸が地面に落ちる。
それに気付いたミラが目を見開いた。
「血の糸!?」
「極細の糸を飛ばして馬の首を落としたんだ。消費が少なく使い勝手が良いし、殺傷力もそれなりに高い。ただし、取得難度が高いから扱える吸血鬼は珍しい」
「私も噂で聞いたことがある程度で、使い手に出会ったのは初めてだ……」
「別に恐れる必要はない。速い上に切れ味も良いが、細い分だけ脆い。しっかり防げば大した脅威じゃない。聖気があれば尚更だろう」
語る間も次々と赤い糸が飛来していた。
それらをシークは片っ端から剣で弾いてみせる。
片手間に防御しているが、ミラはその高い技量に気付いていた。
説明を終えたシークは「お前もやってみろ」と言って、ミラに飛んできた糸をわざと見逃す。
ミラは慌てて剣を構えた。
「くっ!?」
咄嗟に放たれた斬撃が赤い糸を受け流す。
糸はミラの頬を掠めながら通過した。
そこからも彼女は同じ要領で剣を振るう。
シークほど完璧ではないものの、いずれも軽傷で済ませていた。
ミラは全神経を集中させて糸を弾き続けている。
奮闘する姿を観察し、シークは密かに感心した。
(早くも順応しつつあるな。勘が良いのか……実戦経験を積むほど強くなっていきそうだ)
絶えず剣を振るうミラは、汗だくになって抗議する。
「恐れる必要は、ない、だとっ!? 簡単に、言ってくれるが、これは、なかなか難しいぞっ!」
「そこで防御していろ。俺が術者を始末する」
一方的に告げたシークが駆け出す。
四方八方から襲ってくる血の糸を斬り伏せて突き進み、前方の木陰を覗き込む。
そこには一人の吸血鬼が息を殺して屈み込んでいた。
剣を振り上げたシークが嘲笑う。
「殺気と魔力がダダ漏れだ。それで隠蔽しているつもりか?」
「き、貴様! どこの一族だ!?」
「お前には関係ない」
シークが踏み込もうとした瞬間、吸血鬼が指先から血の糸を飛ばす。
不意打ちを難なく躱したシークは剣を突き出す。
聖剣の切っ先は、吸血鬼の心臓をまっすぐに貫いた。




