第6話 前編
その後、シークは屋敷内の武器庫へと案内された。
先導するバリーが重苦しい口調で述べる。
「役に立つものがあれば、自由に持っていくがいい」
「太っ腹だな」
「シーク殿に協力することで吸血鬼が減るなら、これほど望ましいことはあるまい。ハートン家は聖騎士の名門だが、近頃は人手不足もあるのでな。貴殿のような強者を支えるのも役目と言えよう」
「それがたとえ吸血鬼でもか?」
「……手段は選んでいられん。慣習や常識に囚われていては、いずれ吸血鬼に負けてしまう。改革の時が来たのだと、解釈している」
バリーは噛み締めるように語る。
眉間に刻まれた皺は深い。
未だ感情的に納得できない部分がありつつも、理性は状況の変化を受け入れようとしていた。
その姿にシークは感心する。
(融通の利かない男だと思ったが、案外そうでもない。こだわりや伝統より、大局を見て判断できるらしい)
武器庫に到着したところで、バリーは二人を置いて立ち去る。
内部には大量の武具や魔道具が所狭しと並んでいた。
シークはそれらを見て回りながら笑う。
「さすが聖騎士の名家……逸品揃いだ」
「しかし、遠慮なく持ち出していいのだろうか……どれも家宝のはずなのだが」
「当主様が許可したんだ。遠慮することはないだろ」
心配そうなミラをよそに、シークは手当たり次第に漁っていく。
その中で、彼は古い外套を発見した。
シークが外套を羽織ると、生地の表面から黒い靄のような物体が滲み出す。
靄に触れたシークは何かを感じ取って頷く。
「魔力を吸って闇を生み出し、日光を遮る……最高だな」
「それは鋼の吸血鬼モルディを討伐した際の戦利品らしい。私が幼い頃、父上が武勇伝を何度も聞かせてくれたんだ」
「へえ。じゃあ貰っていくか」
「シーク、君は躊躇いがないんだな。親子の思い出の品だというのに……」
「思い出より吸血鬼狩りが重要だ」
外套を気に入ったシークは、それを脱がずに物色を再開する。
魔術効果を込められた斧や槍を手に取りつつ、シークはふとミラに尋ねた。
「ところで、聖騎士のハートン家と吸血鬼のハイドーン家は、妙に発音が似ているよな。何か因縁でもあるのか?」
「……君は知らないのか。ハートン家とハイドーン家は親戚関係だ」
ミラが言いづらそうに告白する。
シークは口を開けたまま武器を取り落とした。




