第5話 後編
ハートン家の城内。
広々とした一室に置かれた円卓にて、シークとバリーは対話していた。
事情を聞き終えたバリーは頭を抱えて確認する。
「つまり……貴様は本当に吸血鬼狩りが目的なのだな? 聖騎士に害を為すつもりはない、と」
「ずっとそう言ってるだろうが。やっと理解したのか」
「しかし常識では考えられぬことだ。我々を騙そうとしているのだと解釈するのが自然だろう」
「まあ確かにそうだがな。俺だって自分が吸血鬼の中で異端だと分かっている。その上で受け入れてくれ。他の連中もだからな?」
シークはじろりと周囲の聖騎士にを見回す。
彼らは一様に固まって下を向いていた。
先ほど正面切っての戦闘で負けたばかりだったので、反論できる者はいなかった。
咳払いをしたバリーが話を進める。
「貴様は我らに何を求める?」
「聖なる武器と情報。あとは自分で何とかする」
「自信家だな」
「お前らの誰よりも強いからな。ハイドーン家も潰した。謙虚に振る舞う方が難しいだろ」
シークは皮肉っぽく述べるも、それは純然たる事実だった。
彼は吸血鬼らしい能力を使えないが、代わりに様々な技能を高い水準で習得している。
同族だろうと宿敵の聖騎士だろうと敵ではない。
バリーは腕を組んで思案する。
やがて彼は指を立てて述べた。
「一つ条件がある」
「何だ」
「娘のミラを同行させてほしい」
「父上!?」
静観していたミラが驚愕する。
バリーは彼女を無視してシークに頼み込む。
「ミラは高い潜在能力を持っているが未熟者でな。貴様……いや、シーク殿に指導してもらいたいのだ」
「過酷な旅になる。命の保証はできねえぞ」
「構わん。あっさりと死ぬような鍛え方はしていない。きっと役に立つだろう」
バリーはまっすぐな瞳で断言する。
意志の強さを感じ取ったシークは、次にミラに視線を向けて尋ねた。
「お前自身はどうしたいんだ」
「私は……最強の聖騎士になりたい。シークを殺せるほどの力がほしい!」
「本人の前とは思えない目標だな……だが気に入った」
立ち上がったシークは薄く笑う。
彼はミラに手を差し出した。
「よろしく頼むぞ、ミラ」
ミラは嬉しそうに彼の手を握った。




