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社交界デビューを果たしたホームレス少女の心を解すのはやっぱり悪役令嬢、キレイにストーリーを描けていたら嬉しいです(`・ω・´)ゞ
「マリー、笑って笑って」
「あうあうあうあうあうあああああああ……」
ジャンヌ様と出会って以来一番情けない声をあげてしまった。
だって周りにたくさん人がいるから、これまで経験した事がないくらいの大勢の人たちの視線に晒されて私はフランツ様とダンスを踊る。
今日はフランツ様が言っていた社交界の日。
ここはお城の大広間、今日の日のためにたくさんの偉い人たちがここに集まっている。レオポルト様は全員が結婚相手を探すために居ると言う。
緊張しすぎてカチコチになる私をフランツ様が笑顔でリードしてくれる。一応はジャンヌ様にダンスのレッスンをして貰ったけど緊張で全く体が動かない。そんな自分が本当に情けなくて更に力む。
今の私はフランツ様に支えられてギリギリ立っていられるだけ。
この後にレオポルト様とも踊る約束をしてるのに、これでは先が思いやられてしまう。ううう、自分でどうにかしないとジャンヌ様に申し訳ない。
だって私は影武者としてジャンヌ様と入れ替わっただけなんだから。
私の情けない姿を周りの人たちにはジャンヌ様だと思ってるのだから、絶対に失敗なんて出来ない。そう思うともっと緊張しちゃう……。
ああ、もう顔の筋肉まで硬直しちゃった。
「あうあうあう……、ジャンヌ様あああああ……」
「妬けちゃうな、目の前の僕よりも変装して何処にいるかも分からないジャンヌの方がマリーには頼もしく感じるんだね」
「そ、そんな事ありません。でもお……」
「うーん、それにしてもこう近くで改めて見るとマリーは本当にジャンヌとソックリだねえ」
フランツ様は私の手を握りしめてマジマジとそう呟く。
だけどやっぱり信じられない。例えジャンヌ様に何度言われてもそれだけは納得出来な事だった、最近は少しだけ体重が重くなってガリガリだった頃とは比べ物にならないくらい肌も艶々してる。
でもいつも笑顔でキラキラと輝くジャンヌ様が私なんかと似てるなんて口が裂けても首を縦に振れなかった。
逆にそう言われると罪悪感すら感じてしまう。
「……自分では良く分かりません。だってジャンヌ様と一緒に鏡の前に立っても私なんかがジャンヌ様と似てるとはとても思えなくて……」
「周りのオーディエンスたちは完全に騙されてるよ? 誰一人として君が影武者だって疑う事もない。寧ろ事実を知ってる僕やレオポルトさえも遠目からだと判断が付かないくらいだ」
「……」
フランツ様は少しだけ視線を上に向けて思い出す様に言葉を紡いでいく。
「ジャンヌは煌びやかで可憐だ、花で例えるならバラかな? マリーは……そうだなあ控えめで冬の寒さにも健気に耐え抜くフリージアとでも言おうか」
「……」
私は花なんかで例えられる様な子じゃない。
「何よりも君は頑張り屋じゃないか。今日のために必死になってダンスの練習をこなしたんだろ? ジャンヌからも聞いたよ。それは……おっと、失礼」
「きゃあ! こちらこそ……で、殿下!? それに婚約者のローレヌ侯爵家のご令嬢も!? も、申し訳ありませんでした!!」
動きが止まっちゃった。
リードしてくれていた筈のフランツ様が誰かとぶつかったみたいで突然止まったから私もそれにつられてしまう。ぶつかった人は女の子だ、多分私と同い年くらいの女の子。
彼女はぶつかった相手がフランツ様だと分かって慌てた様子で頭を下げる。
何度も謝るからフランツ様の方も逆に気を遣っているくらいだ。だけど相手の女の子はすごく可愛いなあ。儚げな雰囲気を纏って綺麗な黒髪がすごく印象的だ、目もパッチリと開いてて仕草も可愛い。
ジャンヌ様はこの女の子をヒロインと呼んでいた。また難しい言葉だったから私には良く分からなかった。
でもきっとこの子の方が私よりも花に例えられるのが似合っていると思う。
あ、私にも頭を下げてきた。
フランツ様は「あまりお気になさらない様に」と声をかけてその場を収めた。ダンスの最中で他の人たちも踊ってるからフランツ様も周囲に気を遣ったみたいだ。
再び私たちは曲に合わせて踊り出す。
「……やっぱりジャンヌの言っていた事は起こったね」
少しだけ口調を変えて言葉を漏らすフランツ様は表情もやっぱり少しいつもと違う気がする。そう言えばジャンヌ様がダンスを踊っていると女の子とぶつかると言っていた。
オトメゲームではこれが未来のトラブルに繋がるって言っていた様な。
だけどこれでジャンヌ様はトラブルに遭う事も無くなったのかな? ジャンヌ様が安心出来るなら私も嬉しいなあ。それなら私もこの場で注目を浴びながらダンスを踊った甲斐があると思える。
「これでジャンヌ様は国外追放されずに済みますか?」
「まあ元から僕にその気は微塵も無いけどね。それと今は君がジャンヌだよ?」
「そ、そうでした……頑張らなきゃ」
「おっと、もう一曲終わったのか。残念だけどマリーとは一旦お別れかな」
いつの間にかずっと流れていた曲が止まっていた。曲が終わると男女は一度別れて別の相手を探す必要があるらしい。
フランツ様は「後でまた会おうね」と小さく手を振って笑顔を私に向けて去っていく。ううう、フランツ様と離れると一時的に私は一人ぼっちになっちゃう。
この後はレオポルト様と踊る約束をしてるから彼を探さなくちゃ。
だけど色んな人が私を見てる気がする。多分これは気のせいじゃない、だって今の私はジャンヌ様の影武者だから、皆んな私をジャンヌ様だと思って見てるんだ。
きっと私に話しかけようと様子を伺ってるんだと思う。
誰かに話しかけられたら誤魔化せる自信なんて無いから早くレオポルト様を探さないと、だけどそうやって焦ってキョロキョロと周囲を見渡しても一向にレオポルト様が見当たらない。
「あうあうあう……、レオポルト様あ。何処お?」
「お嬢さん、私と一曲ご一緒して下さいませんか?」
「え……あ……」
焦る私の背後から誰かが声をかけてきた。
ゆっくりと声のする方を振り向くとそこのはタキシードを着込んだ人が立っていた。だけどその人は男の人じゃなかった、周りの人は気付いていないみたいだけど私には分かる。
この人は男装したジャンヌ様だ。
ジャンヌ様は変装して何処かにいるとは言っていたけど、まさか男装していると思わなくて驚いてしまった。私はジャンヌ様の存在に気付いてその場からピクリとも動けなくなってしまった。
だけどジャンヌ様はいつもの笑顔でそんな私に話しかけてくれる。
「ふふふ、私もマリーと踊りたくて。だから思い切って男装しちゃった」
「……ズルイです」
「レオには横入りみたいで悪いけど先に私と踊ってね?」
「はい、喜んで」
「キャー、公衆の面前で堂々とマリーと手を繋げるわー」
「ジャンヌ様?」
「やーねー、ジャンヌ様はそっちじゃないの」
そうだった、危うく今日の私の役目を忘れるところだった。
悪戯っ子みたいにジャンヌ様はペロッと小さく舌を出す仕草を見せて私に手を差し伸べてくれる。私は縋る様な想いでその手を取ると、まるで示し合わせてみたいに曲が流れ出す。
思わずパアッと笑顔になってしまう。
ジャンヌ様は出会った時もそうだった。この人は私が心細かったりピンチになると颯爽を姿を現してくれる。やっぱりジャンヌ様は私にとって神様だ。
思わず俯きながら自分の本音を漏らしてしまう。
「ジャンヌ様が本当のお姉ちゃんだったらなあ……」
「……そうね。私もマリーを……」
ジャンヌ様の声は周囲に流れる曲によってかき消されてしまった。
少しだけ眉を顰めるジャンヌ様を俯いて見逃す事となった。




