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女の子同士の絡みに悶々とする男の子を描きたかったのです。
こんな感じなら許されるでしょうか?
「うーん、やっぱりマリーに抱きつくと落ち着くわあ」
「ジャンヌ様に抱きつくと凄く収まりがいいですう……」
私とジャンヌ様は互いをベッドの上で抱きしめ合っていた。
今日もフランツ様が屋敷に訪問してるのに、目の前にフランツ様だけでなくレオポルト様もいるけど私たちは人目も気にしなで抱き合っていた。
先日フランツ様と顔を合わせて以来、私とジャンヌ様は抱き合う事に慣れて、寧ろ抱きついていないと落ち着かなくなっていた。それどころか真の抱き心地を求めて暇を見ては抱きしめ合ってました。
男の子二人はそんな私たちを見て顔を引き攣らせる。
あれ? だってフランツ様もこの前はすごく嬉しそうに私を抱きしめ返してくれたのに、どうして眉を顰めるんだろう?
レオポルト様はもしかして誰かに抱きしめて欲しいのかな?
「……フランツ様とレオポルト様も二人でギュッて抱き合わないんですか?」
「マリー? お前、もしかしなくても天然か? 俺と殿下が抱き合うって……」
「うーん、別にレオポルトが嫌いって訳じゃないけどねえ……、もしかして議論する時点で僕はマリーの術中にハマってるのかな?」
「その話はもう止めませんか? 殿下には不敬だけど気持ち悪いですし」
「うん、それがいい。だけど君の姉君はちょっとマリーを独占しすぎじゃないかな?」
「殿下の婚約者ですよ? あの人」
フランツ様とレオポルト様は仲良しさんなのかな?
ずっと二人で小声で喋ってる。
ジャンヌ様と出会ってから私はすっかり人肌の心地よさを覚えてしまい、今では自分からジャンヌ様に擦り寄るくらいだ。
人はやっぱり一人だと孤独を感じるものらしい。
それを私はジャンヌ様から教わりました。
「クンカクンカ……。はあ、今日一日分のマリー成分を補充出来たー」
「ふえ? ジャンヌ様、今何かやりました?」
「うーん、ちょっと鼻がムズムズしただけよー」
「? そうなんですか?」
うーん、たまにジャンヌ様の行動がおかしい時があると思う。だけどやっぱり良く分からないし、ジャンヌ様もなんでも無いと言うから何も無かったのかな?
もしかして私って自意識過剰だったりして。
だけどフランツ様はジャンヌ様に呆れた様子を見せる。フランツ様だけは何かに気付いてるのかな?
「うーん、ジャンヌ、そろそろ僕は本題に入りたいんだけどね」
「このままで構いませんでしょう?」
「いや、姉さんも普通に失礼だから。人と話す時は目を見て話さないと」
「あら、レオに説教されちゃった」
最近のジャンヌ様はレオポルト様を愛称で呼ぶ。
仲直りして以降、二人とも何の蟠りも無くなって一気に距離が縮まった気がする。ジャンヌ様も怒られているのに何処か嬉しそうな表情を浮かばせる、これまでずっと避けられていたからどんな些細な事でも嬉しいんだと思う。
レオポルト様はと言えば相変わらずで、恥ずかしいと顔を真っ赤にしてそっぽを向く。
でも二人が前よりもずっと仲良くなってくれて私は凄く嬉しい。だけどレオポルト様はどうして私の事は怒らないんだろう?
私もジャンヌ様と同じだからフランツ様に失礼な筈なのに。
「レオポルト様、私もこの姿勢を止めた方がですか?」
「……お前はそのままでいい」
「え? どうしてですか? だって私が止めないとジャンヌ様もずっとこのままですよ?」
「レオはねマリーが可愛くて仕方がないのよ。だから私に八つ当たりしてるだけなの。昨日の夜、私たちが同じベッドで寝た事を根に持ってるのよ」
「そ、そんな訳ないでしょうが!!」
「昨日って……私とジャンヌ様が裸で寝た日ですよね?」
「そう、マリーって抱き心地が抜群だからアレは正解だったわー」
「……殿下、鼻血出てますよ? くっそ、義理とは言え姉で鼻血を出すなんて屈辱だ……」
「レオも失礼なんだから」
「はいはい、そろそろ本当に僕の話を聞いて欲しいなあ」
フランツ様が呆れた様子で鼻血を垂らしながらポンポンと手を叩くと皆んなの視線がそっちに集まっていく。ジャンヌ様は名残惜しそうに私から離れてベッドと降りる。
「まあ、その件は私からお願いした事ですし」とジャンヌ様は呟く。
するとフランツ様はそんなジャンヌ様を見ながらやっぱり呆れた様に苦笑しながら小さく首を振った。なんだかんだ言って二人も仲良しさんみたい。
ジャンヌ様はお茶を淹れるために部屋に設置されたテーブルに真っ直ぐ向かっていった。
「殿下、お茶をどうぞ」
「ありがとう。やっぱり君は凄いね、僕よりもマリーを選ぶんだから」
「また話が逸れますよ?」
「僕は純粋に嬉しいのさ、あんな父を持つと初対面の女性から誘われたりする事もしょっちゅうだからね」
「殿下も失礼な方。それって私に女性としての魅力を感じていらっしゃらないって事ではありませんか」
ジャンヌ様は凄く綺麗で優しくて私にとっては特別な存在だ。
最初の頃は少しだけ過激だと思っていたスキンシップも最近は影武者の筈の私が隣にいないとソワソワして落ち着かないくらいだ。私はジャンヌ様を守る側だけど、ずっと守られている様な感覚さえ覚える。
私に兄弟はいないけど、双子のお姉ちゃんくらい特別な存在に思えてならない。
そのお姉ちゃんはとにかく凄い人で、どれくらい凄いかと言うと王子様と冗談を言い合えるくらいだ。私と同じ赤髪を令嬢らしく然りげ無く掻き上げるジャンヌ様の姿は憧れちゃうくらい綺麗だった。
「人間としての魅力の方が優っていると言う事だよ」
「……殿下、今晩如何ですか?」
「とても魅力的な誘いではあるがお断りしよう」
「あら、私フられちゃいました」
「ジャンヌ、冗談もいいけどやっぱりそろそろ本題に入ろうじゃないか」
「今後の社交界にマリーを参加させて頂くお話ですね」
そう言えばそんな話を前にしていた事を思い出す。
確かジャンヌ様が私を雇った時もそんな事を言っていた気がするけど、私なんかが本当にフランツ様とダンスを踊るの?
踊るならジャンヌ様がいいなあ。
「マリーは社交界にデビューするのか? 影武者なのに?」
「レオポルト様は行った事あるんですか?」
「この家に来てから何度かな。だけどあそこは貴族社会の男女の出会いの場みたいなモンだから影武者のお前がデビューする必要なんてないと思うけどな」
「出会いの場なんですか?」
「そう、将来の結婚相手を物色するんだよ」
「け、結婚!?」
驚きすぎて口が塞がらなくなってしまった。
結婚なんて言葉は私にはまだ早いと思う、だって私はまだ十二歳だから。そもそも私みたいなスラムでホームレスと同然の生活を送っていた人間が結婚なんて花やかなものには一生縁がないと思っていた。
それよりも私には明日食べるパンの方が大事だったから。
ジャンヌ様と出会うまでの私には未来なんてものを考える余裕は無かった。それがいきなり結婚相手を物色すると言われても……。
「レオはもっと素直になりなさい。ただマリーを独占したいだけだって。可愛くて仕方がないから他人の目に触れさせたく無いだけだって」
「ふえ? レオポルト様?」
「姉さん!? お、俺はそんな事……コレぽっちも考えてないから!! て言うかマリーまで不思議そうな顔をするなよ!!」
「うーん、僕は出来ればマリーを独占したいなあ。レオポルトが要らないって言うなら僕が貰ってしまおうかな?」
「殿下も嫌味な方。今さっき私をフったばかりなのに」
「マリーは女性的な魅力と人間性のバランスが凄くいいんだよ」
「ダメダメ!! ダメですよ!! マリーは俺が……」
「「俺が……何?」」
「ううううう……、この似たもの婚約者どもがあ……」
今度はジャンヌ様とフランツ様が言葉をハモらせる。
やっぱり二人は似たもの同士だったらしい、良く分からないけどレオポルト様が凄く悔しそうな顔で二人を恨めしそうに睨み付ける。
どう言う訳か三人の話題の中心は私みたいだけど、一体何の話だろう?
「ジャンヌ様、私、何かやっちゃいました?」
「何だろうねえ? 男たちなんて無視して私たちは踊りましょうか?」
「え? え? え?」
「社交界の練習でもしましょう」
「うわあああああああ……」
またしても情けない声をあげてしまった。
ジャンヌ様が私の手を取るなり腰にも手を回して部屋の中で踊り出す。こんな時でもジャンヌ様はニコニコ笑顔で楽しそうにダンスのステップを踏み。
ジャンヌ様はダンスもすごく上手だった。
いきなりで驚いたけどやっぱりジャンヌ様は私にとって憧れの人だった。この人と出会ってからの私は色々な経験をさせて貰っている。
好きと言う感情だけではなく世の中には色んなものがあると教えて貰えた。
ジャンヌ様がいる世界は綺麗に色褪せていて、一緒にいると私まで同じ世界にいる気分になれる。最初は驚くけど目の前でジャンヌ様が笑うから私までつられて笑う。
そして周囲はそれに呆れたりポンポンと手拍子でダンスのリズムを送ってくれる。
もう昔いた世界には戻りたく無い、真剣にそう思えてしまう。だからこそスラムに残してきたお父さんの事も時折思い出す。ううん、時折なんかじゃ無い。
いつも心の何処かで心配しちゃう。
だけどお父さんにとって私は要らない子だったから、心配なんてしても無駄かもしれない。でも、それでも私にとってはたった一人の家族だった。
お父さん、元気にやってるかな?
きっと今更ノコノコと戻っても凄く怒られるだけなんだろうなあ。それどころか「何で帰ってきた、邪魔だからどっかいけ」と追い返されるかな?
私はジャンヌ様につられて笑顔だったけど涙を堪えるのに必死だった。
それでもジャンヌ様が別の方を向いてくれていたからバレずに済んだ。ジャンヌ様は私と踊りながらフランツ様と話し込んでいた。
「それでは殿下、来月の社交界ではマリーと踊って下さるのですね?」
「寧ろ僕の方からお願いしたいくらいだよ」
「うーん、じゃあマリーにもダンスのレッスンをした方がいいわね」
「……俺も行くから」
「レオポルトは元から参加する様にって父上に言われてたじゃない」
「俺もマリーと踊る。マリー、予約したからな?」
「ジャンヌ様、私の参加は決定事項なんですかあ?」
「そんな泣きそうな顔しないの。大丈夫よお、私も変装して一緒に着いていくから」
私の知らないところでポンポンと話が進んでいく。
自分が一人だけ知らない世界に放り込まれた気持ちになって不安な気持ちでいると、まるでそれを察してくれた様にジャンヌ様は満面の笑みで私に微笑みかけてくれた。
私は元から弱かった。
自信なんてある筈も無くてビクビクオドオドと泣くしか能がなかった私、それは今でも変わらない。だけど今の私はジャンヌ様がいないと泣きそうになる。
だから逆にこの人が笑ってくれると自然と勇気が湧いてくる。
私は自分でも知らずのうちに私を引っ張ってくれるジャンヌ様の手の温もりすらも失いたくない大大切なものだと思う様になっていた。
お読み頂いてありがとうございますm(_ _)m
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