エルとフェリーと崙崙とフユハとウエスキン
「ちくしょう……回転床と転移床を組み合わせるとか久々に悪質なヤツを食らって迷いまくったぜ……」
「だからオイラ、素直に変な場所踏むの止めようって言ったのに……」
プリプリと頬を膨らませながら、フェリーが腕を組みエルの頭に座った。
──ドンッ
「おっと……」
広間へと出る間際、突如現れた人影とエルがぶつかった。それはメイデアを抱えたフェルールであり、エルは驚きそしてメイデアの具合を見て顔をしかめた。
「おい、どうした? そいつはマニエルの──」
「来てはダメだ! 全てアイツに殺される!! まだ一人生きてはいるがすぐに殺されるだろう!」
フェルールが顔を強張らせて叫んだが、後ろに控えていたフユハと目が合い、少しだけ表情が緩んだ。
「フェルールさん……どうしてココに?」
「説明は後だ。恐らく君達を追って君の仲間とココへ来たが、我々が先にアイツにやられてしまった。闘わずして分かる。アイツと関わってはいけない……!」
「な、何だと!?」
フェルールの言葉を聞き、エルが走り出した! フェリーがエルの頭から滑り落ちたが、直ぐさまに飛び、そしてエルを追い越して全てに備える構えを見せた。
「リゼリア!! マニエル!!」
エルが叫ぶ。激しく動かした視線の先、そこにはベコベコに凹んだフライパンが転がっており、その先にはへたり込み絶望の表情で涙を流すマニエルと、無表情で拳を握るウエスキンが居た。
「うん? やはりココで正解だったな。次から次へと楽しみが転がってくる」
「止めろぉぉぉぉ!!!!」
「させないよ!!」
先に飛んでいたフェリーがウエスキンの眼前に姿を現した。本来奇襲を得意とするフェリーが、ウエスキンの気を引くために身を挺して危険へと飛び込んだのだ!
「小さき者だが、分かるぞ? お前は楽しませてくれそうだな……」
ウエスキンの拳が開け、振った腕から強烈な風が巻き上がる程の平手打ち!! フェリーの羽が煽りを受け、少し抵抗を受けたが、避けられない速度では無かった。平手打ちの躱し際、フェリーの小刀がウエスキンの二の腕に切れ目を入れた。
「義手かい? 随分と硬いね……」
「核爆!!」
エルの最強呪文でウエスキンの顔が爆ぜた。強大な黒煙と轟音が広間へと広がり、僅かに地面が揺れた。
「崙崙! マニエルを連れて引け!!」
「御意」
「リゼリアどうした!?」
エルがマニエルへ問いかけると、マニエルは震えた指先で岩壁の隅っこを指差した。そこにはオズワルドとアイシアが倒れており、その側にはリゼリアが血の海に沈むように伏していた。
「マジかよ…………」
黒煙が晴れ、焦げ臭そうに顔を振るウエスキン。その顔は首から皮が半分以上めくれており、その下には無機質な重厚感のある漆黒の素材が顔を覗かせていた。
「……エル! アイツ人間じゃないよ!!」
フェリーがエルの方を向いた。しかしエルはリゼリアの方を向いたまま固まっており、そしてフェリーもエルの視線の先の惨劇を見、全てを悟った……。
「そんな……」
「フユハァァ!!!!」
「は、はぃ!!」
それまで静かに事を見守っていたフユハは、突如叫ぶように呼ばれ驚き、そして倒れるリゼリアを見付け、思考が停止した。
「固まってる暇ねぇぞ!! 今ならまだ間に合う!! 治せ!!!!」
「えっ! あ、あ、あ……」
フユハの脳裏にフランシスの一件が過った。
「やれ!!!!」
エルの強い一声に、フユハは躊躇うのを止め、直ぐさまにリゼリアへと駆け寄った!
「おい、そろそろ良いか?」
ウエスキンが退屈そうに声をかける。今の彼には、虚を突いてはつまらないと、相手が落ち着くのを待つ余裕すら持ち合わせていた。
「……来るよ!!」
「絶対に許さねぇ!! ……何が何だか知らねぇが、アイツの最後の頼みだ、コイツは絶対に守り抜く!!!!」
小刀を構えるフェリー。詠唱に入るエル。退却を諦めたフェルールは弓を構え、その後ろにはマニエルを守る崙崙が居た。




