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8-8

「わたしよ?」


 フユハの後ろから不意に現れたリーゼットは、和やかに手を振りながら、隣のテーブルへと緩く腰を掛けた。


「……この前の奇抜なチャイナ姉ちゃん?」


「局長と一緒に店に来た人だね」


 チャイナドレスのスリットから一冊の黒い表紙の本を取り出すリーゼット。その本を見た二人の表情が瞬く間に険しくなる。


「それはリースの絶本!! お前っ! それを何処で──!?」


 エルが手を伸ばし、本を奪い取ろうとしたが、僅かにリーゼットの手が素早く、本はスリットの中へとしまい込まれ消え去った。


「妹が随分と世話になったみたいだね。姉として礼を言うよ」


「あ、姉だと!?」


 エルとフェリーが酷く取り乱した。姉の存在は認知していたが、その若さを残した容姿からは、目の前の女性が享年80超えのリースの姉だとは信じがたかったのだ。


「リーゼットって呼んで?」


「姉でも弟でも何でも良い!! そいつを何処で手に入れた!! 誰も知らぬ場所に隠してた筈だ!!」


「チッ、チッ」


 人差し指を立て、全てお見通しかの様に振る舞う姿に、エルの堪忍袋の緒が切れた。素早い詠唱、先手必勝の真空波を放つ!


「フフ、慌てない慌てない」


 指先一つを払い真空波を掻き消すリーゼット。僅かに指先から血が滲むが、それを口に含み不適な笑みを漏らした。


「四日後、変動期が訪れる。そこで全てを終わらせよう」


 カフェテリアにリーゼットの高笑いが響き、そして静かに、まるで蜃気楼の様に、リーゼットはその姿を消した。



「おいおい、ふざけるなよ……アレには洒落にならねぇような禁呪が書いてあるんだぞ……!!」


「……オイラ初耳なんだけど、いつの間に書いたの? そんな物……」


「ああ、俺とリースと一部の術者しか知らねぇブツだ。俺は書き残すことに反対したんだが、いつの世も少なからず禁呪に溺れる者が居る。その戒めとしてリースが見聞きした物を書き残したんだ!」


「あ、あの……」


 これまで口をつぐんでいたフユハが、怖ず怖ずと手を上げ、声を掛けた。


「やはり……消失(ロスト)した人を蘇らせる呪文が──」


「あるが絶対に使わせねぇ。使えば俺はお前を殺すしかねぇ……!」


「──!!」


 声を押し殺すように答えたエルの気迫迫る表情は、実に真剣な面持ちであり、それが冗談で無いことは二人の目から見ても明らかであった。


 そしてフユハは、とんでもない人達と関わってしまったのだと、痛感した。

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― 新着の感想 ―
[一言] >そしてフユハは、とんでもない人達と関わってしまったのだと、痛感した。 今更痛感してももう遅い(流行りに乗ってみた)。
[一言] ロストを蘇らせる? どちらにしてもとんでもない副作用がありそう。
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